フェンシングの国際大会のうち、唯一日本開催である高円宮杯W杯が行われた。種目は男子フルーレ。世界各国から集まった強敵達が、3日間に渡って、ハイレベルな戦いを繰り広げた。早大から出場したのは、早大エースであり、ナショナルチームのキャプテンを…

 フェンシングの国際大会のうち、唯一日本開催である高円宮杯W杯が行われた。種目は男子フルーレ。世界各国から集まった強敵達が、3日間に渡って、ハイレベルな戦いを繰り広げた。早大から出場したのは、早大エースであり、ナショナルチームのキャプテンを務める松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)。個人戦は、トーナメント戦に進んだものの、1回戦で敗北し、悔しい結果となった。また、団体戦では準々決勝で、韓国に敗れメダルを逃すことに。しかし、その後の5〜8位決定戦では、2試合を見事制し、5位の成績を収めた。

 個人戦は、大会の初日と2日目に行われた。初日のプール戦を全勝し、19位通過した松山。幸先の良いスタートで、2日目のトーナメント戦を迎えた。しかし、初戦で相手が「かなりアグレッシブに来たので、予想外でした」(松山)と、相手の攻撃に序盤から苦しめられる。松山は、反撃を試みたが、無効面となり得点につながらない苦しい状態が続いた。そして、3−7の4点ビハインドで、一旦剣を替え試合を中断。悪い流れを断ち切り、巻き返しを図りたいところ。だが、その後も松山は、自分のペースに試合を持ち込むことができず、相手に追加点を与えてしまう。最終的に、7−15で無念にも敗北を喫し、37位で個人戦を終えた。


試合終了後、悔しさをにじませた松山

 続いて、大会最終日に行われた団体戦。日本は、松山、西藤俊哉(法大)、敷根崇裕(法大)、鈴村健太(法大)の大学生4人で試合に挑んだ。初戦を15点の大差を付けて突破し、準々決勝に進出。メダル獲得圏内に入るためには、勝たなければならない準々決勝での日韓戦。敷根が第1セットを5−4で終え、松山の1巡目が回って来た。相手の堅いディフェンスを崩し、松山は得点を奪取。気迫のこもった攻めを見せ、会場を沸かせた。10点目を決めると、客席に向けて、大きくガッツポーズ。しかし、第3セットで日本が逆転を許すと、徐々に主導権は韓国側に。セットを重ねるごとに、点差はみるみる開いていった。そして、12点のビハインドで迎えた最終セット。松山は、8点を返す快進撃を見せるものの、大差をひっくり返すことはできなかった。準々決勝で敗れ、5〜8位決定戦に回ることになった日本。だが、「今日は折れそうになったときなんとか、踏ん張った」(松山)と日本選手達は粘りを見せ、残りの2試合を見事白星で飾った。


準々決勝で快進撃を見せた松山

 2日目の個人戦では、結果が振るわなかった松山。しかし、団体戦では、松山が試合前日の記者会見で言っていた、「ファイターの姿勢」が見られた試合内容だった。また、団体戦5位という結果についても、「決して悪くないと思いますし、何よりこれからオリンピックシーズンに向けて、収穫のある大会だった」(松山)と振り返った。ここから約1年半練習を積み重ね、さらなる成長を遂げて、彼らは2020年のオリンピックを迎える。松山を含め日本のフェンサー達が、東京五輪の大舞台で躍動し、多くの観客を魅了する日がとても待ち遠しい。

(記事 本野日向子、写真 柴田侑佳)

 ※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

 ※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

結果

▽男子フルーレ個人

松山恭助(スポ4=東京・東亜学園) 37位

1回戦:●7-15 DOSA Daniel(ハンガリー)

▽男子フルーレ団体
日本[松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)、西藤俊哉(法大)、敷根崇裕(法大)、鈴村健太(法大)] 5位
 2回戦:○45−30 イギリス
 準々決勝:●36−45韓国
 5〜8位決定戦:◯45−39ポーランド
 5位決定戦:◯45−37フランス


コメント

松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)※大会前、記者会見より一部抜粋

――自己紹介をお願いします

現在早稲田大学に所属しております、ナショナルチームのキャプテンも努めさせていだだいております松山恭助です。今回の高円宮杯では、ホームでの開催ということで、そしてポスターにも僕達が起用されるということで、本当にものすごくプレッシャーを感じる大会になると思っています。しかし、私たちは、世界選手権でメダル、世界ユニバーシアードでのメダルを始め、最近では団体戦のW杯でのメダル獲得など、様々な大会でメダルを獲得することができています。やはりそれは自分たちに力が付いてきたということでもあると思うので、しっかり自信を持って、プレッシャーに臆することなく、全力で戦う姿勢を見せられたらいいなと思っています。また、最近では下からの底上げということもありまして、団体戦に出場するメンバーはまだ確定しておりません。しかし、自分は今まで残した成績や経験というものは必ず、団体戦に生きてくると思っています。団体戦の椅子というものを下の世代の選手、同世代の選手に譲るつもりはないので、明日からの個人戦、団体戦に備えて、3日間を全力で戦う準備をしっかりしていきたいと思います。

――大会まで、残りわずかという中で、今の調子はいかがですか

先週パリの大会から帰国したばかりで、正直、僕を含めここにいる日本選手、海外の選手も疲れが出てきている状態だと思っています。しかし、前回のパリでは個人戦は結果が振るわなかったのですが、団体戦では自分の良くない部分である精神的な部分の切り替えができて、良いパフォーマンスができたと思うので、状態は悪くないと思っています。

――注目度が高く、今大会の入場料は無料で会場に多くの観客が来られることが予想されますが、ご自身のどんなプレーを見て欲しいですか

多くの人が観戦に来てくれるとは思うのですが、良いパフォーマンス、そして戦う姿勢というのがすごく大事だと思います。また、僕は個人的なパフォーマンスということよりも、チームとして、本当に勝ちに行く、死に物狂いで戦いに行く姿勢、ファイターの姿勢を見せたいなと思っています。あまり周りを見すぎずに、自分のプレーに全員が集中できるようにやっていきたいです。

――意識している選手、ライバル視している選手などはいますか

僕はポスターにも載っている3人(法大の西藤俊哉、敷根崇裕、鈴村健太)が、意識している選手です。強いというのももちろんあるのですが、同じチームメートとして、すごく信頼もしています。やはり、個人戦においても彼らが勝っていると、悔しい思いと同時に、もっと頑張らなくてはという思いにもなるので、本当に僕にとってはいい存在だと思っています。

――今大会の意気込み、目標をお願いします

個人戦においては、まだベスト8に入ったことがないんですけど、自分の実力を精一杯出せば、メダル、そしてその先の優勝が見えてくると思います。まずは、そこを目指したいんですけど、やはり全力を出すということが、意外にも難しいので、練習通りのパフォーマンスを出せるように、目の前の試合に集中することです。戦う姿勢、ファイターの姿勢でやれば、個人戦、団体戦も結果はついてくると思うので、あまり、周りを意識しすぎずに、自分のプレーに集中したいなと思っています。

――全日本選手権個人戦の際に、松山選手は高円宮杯に照準を合わせていると言っていましたが、試合を直前にして今緊張はありますか

意外としています。ホーム開催でポスターにもなったりして、とても注目を浴びていて、一応キャプテンという立場でもあるので、プレッシャーはすごくあります。

――東京オリンピックを見据えて今大会の位置付けは

オリンピックのポイントに直接関係のある大会ではないんですけど、それに向けて残り少ない大会のうちの1つで、調整やチャレンジができる最後の試合、国際試合になってくるので、そう言った意味ではすごく大事な試合で、ここで勝てば、一気にブレイクできると思っているので、大事な位置付けはしています。

――種目は異なりますが、この前に行われたW杯ドイツ大会で、加納虹輝(スポ3=山口・岩国工)選手がエペ個人3位となり、良い成績を残しましたが、早稲田の後輩の活躍は刺激になりますか

そうですね。本当に加納に関しては、一緒に絶対オリンピックに出たいと思っています。僕は彼と一緒にオリンピックに出たくて、早稲田を代表して、メダルを取りたくて、そういう後輩がW杯という大きい舞台でメダルを取っているので、めちゃくちゃ刺激になります。負けてられないなという思いと、悔しさはないんですけど、加納すごいなというのと同時に、俺も負けてられない、メダルを取るしかないという思いが両方あります。

――今年の目標は

今年は、大学の試合も終わって、休学していた関係で大学生ではあるんですけど、ナショナルチームがメインになってくるので、本当に大事な1年になってくると思っています。あまり、気負わず、自分の良いプレー、自信を持ってやるだけだと思っています。結果は後から付いてくると思うので、何位になりたいとか、世界で何番になりたいとかはあまり言わずに、自分のやることにだけ集中して、やればいいかなと思っています。

松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)※個人戦終了後、囲み取材より抜粋

――個人戦での最大の敗因は

自分自身です。試合の中でできることは試そうと思ったのですが、それがメンタルなのか、何なのかは分からないのですが、トライしようとしてもうまくいかなかったというのがありました。

――初戦を迎えるにあたり、具体的なプランや、作戦はありましたか

昨日(初日のプール戦)が良かったので、昨日みたいに気持ちを前に出して、ゲームを支配しようと思ったんですけど、でも、始まってみたら相手にゲームを支配されてしまって、自分のやりたいことを相手にされました。

――相手が何か予想外のことをしてきたとかはありましたか

オフェンシブな選手なので、アタックは来るだろうと思っていたのですが、かなりアグレッシブにきたので、それは予想外でした。相手は自分のアタックをすごく警戒していて、もう失敗してもいいやぐらいの勢いで前にどんどん出て来て、色々なコースを打ち分けてきたので、それは予想外だったんですけど、試合の中でそういったことは多々あるので、それに対応できなかった自分がよくなかったです。

――明日の団体戦に向けて一言お願いします

今まだ気持ちを入れ替えることができていないのですが、自分はチームのキャプテンとして、チームをまとめなくてはいけない存在であるので、自分が下を向いていたら、チームメートも下を向いてしまうので、きついんですけど、歯を食いしばって明日は前を向いて戦いたいです。

松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)※団体戦終了後、囲み取材より抜粋

――団体戦を振り返っていかがですか

メダルを獲得するということを狙っていたんですけど、5位という結果は決して悪くないと思いますし、何よりこれからオリンピックシーズンに向けて、収穫のある大会だったと思います。

――団体戦を迎えるにあたって、チームとしての作戦などは話しましたか

この4人というのは、世代別の代表から団体戦を組んでいたので、あうんの呼吸ができるというのも1つあったので、お互い分かっていても言葉にしないことが多々あります。ですが、今日に関しては、韓国選手の1人1人に対して、チームとして、こういうことをやっていこうとかそういう方針は決めたので、成功したことも失敗したこともあったのですが、プラスに捉えていいかなと思います。

――韓国戦では、第3セットあたりから点差を広げられてしまいました。最終セットで松山選手が得点を重ねたが、もう少し早い段階で得点を取れればという気持ちはありましたか

すごくその辺も難しくて、点差が離れているぶん、点数を取りにいかないといけないけれど、失点もできなくて。そこで無理に取りに行くと返り討ちにあい、より点差が広がり苦しい場面になってしまう時もあります。そこは難しいんですけど、その中で、失点をしないフェンシング、ディフェンシブというわけではなく、前に行っているけど、無駄なミスをなくすようにチームでやっていけば、徐々に点数が縮まって最後の最後に1点差になるときもあるので、そういったフェンシングが今後大切かなと思います。

――キャプテンとして負けているときに何か声を掛けたりはしましたか

客観的に見て感じる部分や、チームを鼓舞する声掛けをしました。やはり乗っているときは自然と声を出すと思うのですが、しんどい時とか、心が折れそうになったときこそ、自分が歯を食いしばって、声出しや、プレーで見せないといけないと思ったので、今日はそういうところを意識してやりました。

――個人戦からは切り替えることができましたか

昨日の個人戦での負けは精神的にもこたえていました。ですが、個人戦と団体戦は別のものだと思いますし、勢いなど、そういうのがすごく大事になってくるので、今日はホームの歓声を力に変えることができたと思います。なので、昨日の負けを忘れるくらい自分の中ではすっきりした大会だったと思います。

――それは、前回のW杯パリ大会の5位決定戦で負けたフランスに勝ったという部分が大きいですか

今まで自分達は5位になったことがなくて、ベスト8で負けるとそこから2試合あるんですけど、そこの精神状態はすごく難しくて、どのチームも1回は心が折れるというか、そういう風になってしまいます。ですが、今日は折れそうになったときなんとか、踏ん張ったというのがすごく大きかったなと思います。

――表彰台を逃し5〜8位決定戦に臨むに当たって、精神的な部分はいかがでしたか

ベスト4のカベはすごく高くて、今日は負けてしまったが、やはりこれから当たるということをみんなで再認識しました。これからまた当たるから、ここ(5〜8位決定戦の試合)はしっかり勝って、次につなげていこうという気持ちで臨みました。それとホームの歓声というのが力になったので良かったかなと思います。

――2020に向けた、目標や意気込みをお願いします

僕はこのメンバーで2020年の東京オリンピックを迎えたいと強く思っています。個人戦が良くない中でも、団体戦は個人的には全く別のものだと思っていて、今日は、個人戦が良くなかったぶん、しっかり良いところを見せられたと思うので、そこが日本の伝統であり、強さだと思います。それは2020年に向けて大きなことだと思っています。とにかく、キャプテンとしても、個人戦より団体戦を最重要視していて、もちろん個人で勝つことも大事なことなのですが、やはり団体戦のチームワークをもっともっと、良くできると思っているので、そういうところを今後より熟成したチームになれるようにしていきたいと思っています。