Tリーグ開幕から約3カ月が経過した。シーズン途中に、株式会社ノジマがタイトルパートナーとなり、芸人のたむらけんじが応援団長に就任するなどの動きはあったが、リーグ戦に目を向けると概ね「予想どおり」な結果に落ち着いている。Tリーグ前半戦で…

 Tリーグ開幕から約3カ月が経過した。シーズン途中に、株式会社ノジマがタイトルパートナーとなり、芸人のたむらけんじが応援団長に就任するなどの動きはあったが、リーグ戦に目を向けると概ね「予想どおり」な結果に落ち着いている。



Tリーグ前半戦で圧倒的な存在感を放った木下の張本

 男子は13試合終了時点で、勝ち点30を積み上げた木下マイスター東京が2位以下を大きく離し、首位を独走中。2位に勝ち点9差でT.T彩たま、同勝ち点で岡山リベッツが続き、12差の4位に琉球アスティーダが位置している。

 木下の首位独走の原動力は、なんといっても張本智和だろう。昨年12月のワールドツアー・グランドファイナルで史上最年少優勝を果たすと、世界ランキングは自己最高の3位まで上昇。張本本人は、「Tリーグの感覚のまま大会に臨みたい」と話していたが、まさにリーグの好調ぶりが結果として現れた形となった。

 Tリーグでも13勝を挙げ、ともに8勝の2位丹羽孝希(琉球アスティーダ)、3位水谷隼(木下マイスター)から頭ひとつ抜けた印象だ(得失ゲーム差で丹羽が2位)。また、張本の得失ゲームは25で丹羽に17差をつけるなど、圧倒的なスタッツを残している。

 前半戦でとくに圧巻だったのは、12月23日のT.T彩たま戦だ。2マッチを先制された木下の3番手として登場した張本は、世界ランク8位の黄鎮廷(ウォン・チュンティン)に第1、第3ゲームを奪われながら逆転勝利。1-3で敗れたチームのなかで、ひとり意地を見せたこの一戦は、前半戦のベストゲームといってもいいだろう。

 また、共に岡山の李尚洙(イ・サンス)や林鐘勲(イム・ジョンフン)、琉球の陳建安(チェン・ジエン・アン)らの外国人勢相手にも、ほとんど相手の卓球をさせないゲーム運びで抑え込んでいる試合内容にも大きな価値がある。

 さらに”張本効果”は観客動員数にも現れている。地方開催での動員数が開幕前から懸念されていたが、木下マイスターの試合では、都内以外で行なわれた春日部、岡山、宜野湾での試合でも1700人超えを記録。東京・青山学院で行なわれた11月の琉球戦には2100人以上の観客が訪れた。

 これは、張本、水谷という新旧の日本エースを揃える、スター軍団の木下だからこその数字ともとれるが、やはり卓球界の新たな顔となった張本をひと目見ようと、卓球ファン以外の観客が集まったことも大きな要因と言えるだろう。比較対象として、2017-2018シーズンのBリーグの平均動員数が約2900人なのに対し、Tリーグ前半戦は男女合わせて平均約1300人。競技人口や知名度などを考慮すれば、十分に健闘といえる数字だ。

 後半戦は、水谷や丹羽ら代表常連組の巻き返し、外国人勢が意地を見せることが予測されるが、それでも中心となるのは、完全に覚醒した15歳の”怪物”になるだろう。

 一方の女子に目を向けると、木下アビエル神奈川、日本生命レッドエルフの2チームが熾烈な首位争いを繰り広げている。

 木下は、個人ランキングでも1位を走る石川佳純を筆頭に、浜本由惟、中国の袁雪嬌(エン・シュエジャオ)らが存在感を発揮。その木下を勝ち点6差で追う日本生命も木下に引けを取らないメンバーが揃う。平野美宇、早田ひなの代表コンビに加え、台湾の陳思羽(チェン・ズーユ)に、成長著しい森さくら、前田美優ら強力な陣営だ。

 2位の日本生命と、3位の日本ペイントマレッツとは勝ち点20差、4位のトップおとめピンポンズ名古屋とは23差があることから、初年度の優勝争いは実質的にこの2強に絞られたと見ていい。

 個人成績でも、石川佳純が貫禄の勝利数11で単独1位。2位の早田ひなは、10勝無敗で得失ゲーム23と驚異的な成績を残すなど絶好調で、両チームの主役が存在感を放っている。

 とくに早田は、リーグの経験を経て飛躍の時を迎えていると言える。開幕戦の名古屋との試合では、昨年の女子ワールドカップ3位で、台湾代表のエースでもある鄭怡静(チェン・イーチン)に勝利。その勢いは衰えず、男女合わせて唯一となる無敗をキープしている(10戦以上を対象)。167cmと長身でリーチが長く、パワーボールはもちろん、サーブの切れ味もいい。貴重なサウスポーの急成長は、東京五輪で金メダルを狙う女子代表にとって明るい材料だ。

 また、4試合と少ない出場ながら全勝の平野美宇への期待も大きい。今年の全日本卓球選手権の女子シングルでは5回戦で敗退するなど、現在は決して本調子と言えないかもしれないが、リーグ全体で見ても平野への注目度は抜群。開幕戦での、韓国のカットマンである徐孝元(ソ・ヒョウォン)との手に汗握る熱戦は観衆を大いに盛り上げただけに、平野の男子顔負けの”スピード卓球”を楽しみにしているファンは多いはずだ。

 そんな平野は、Tリーグの醍醐味についてこんなことを話していた。

「海外の試合では味わったことのない応援や、観客の方の熱を感じました。これまでになかった応援のスタイルも含めて、今後そういった文化をみなさんと作り上げていけたら面白いですね」

 Tリーグへの参戦を見送った伊藤美誠とは異なる道から東京五輪を目指す、天才少女の後半戦の動向から目が離せない。平野や早田の成績次第では、日本生命が逆転でのチャンピオンになる可能性は十分に残されているだろう。

 男女共により一層”木下包囲網”が敷かれそうだが、木下がそれを上回って初代チャンピオンに輝くのか。注目の後半戦は、1月30日に大阪で幕が開く。