現地時間12月21日、TDガーデンで行なわれたミルウォーキー・バックス戦後、ボストン・セルティックスのロッカールームはなかなか開かなかった。ブラッド・スティーブンスHC(ヘッドコーチ)の会見はすでに終了し、行き場を失った記者たちは通路で立ち尽くすのみ。本来なら15分程度の取材までの待ち時間は、結局35分以上になった。

 この日はバックスが120-107で圧勝し、セルティックスは3連敗。地元ボストンで喫した惨敗直後、ロッカールームでは選手、コーチ陣の両方が出席するチームミーティングが行なわれていたという。ようやくロッカーの扉が開かれると、そこには尋常ではない緊張感が漂っていた。

「あなたたちには関係ないことだ」

 そこで何が話し合われていたのかを聞かれ、エースのカイリー・アービングは静かに言い放った。その後に26歳の大黒柱が残した言葉は、なかなか思いどおりにならない今季のフラストレーションを吐き出すような内容だった。




セルティックスのエースとしてチームをけん引するアービング

「僕たちのプレーが不安定なのは明らかだったから、話し合う必要があった。大事なのはチームが一丸となり、信頼し合い、自分たちのやっていることを信じること。今日は才能のある選手たちの間でセルフィッシュなプレーがあった。僕もその中に含まれる。僕たちはボールをシェアしたほうがいいチームになるんだ」

「セルフィッシュ」だったのが誰かを名指しはしなかったが、おそらく20歳のジェイソン・テイタム、22歳のジェイレン・ブラウン、24歳のテリー・ロジアーといった若い選手たちへのメッセージだったのだろう。

 実際にバックス戦のセルティックスは、ショットクロックを残しての安易なジャンパー、アイソレーションからのフェイダウェイといった成功率の低いシュートが多かった。結果として、試合開始直後は10-1 とリードしながら、以降の16分強で22-57というランを許しての大敗。イースタン・カンファレンスの強豪対決で、地元ファンからも盛大なブーイングを浴びるという無残な顛末になった。

 今季開幕前、セルティックスの前評判は高かった。昨季はアービング、ゴードン・ヘイワードが不在でもカンファレンス・ファイナルまで進み、今シーズンはケガの癒えた2大スターが復帰。アービング、テイタム、ブラウン、ヘイワード、アル・ホーフォードというスタメンの強力さはリーグ最高級に思えた。

 時を同じくして、クリーブランド・キャバリアーズでプレーしていたレブロン・ジェームズがロサンゼルス・レイカーズに移籍。宿敵がウェスタン・カンファレンスを去ったことで、セルティックスがイースタンの大本命に据えられたのは当然だった。 

 しかし――。高まる一方だった前評判に反して、セルティックスは最初の20戦で10勝10敗と開幕ダッシュに失敗。アービング、ヘイワードの復帰で選手層は厚くなったが、この2人が加わったことで一時的にプレーのリズムが崩れた感があった。

 選手がひとり入れ替わっただけで、まるでカクテルの味が変わるようにチームカラーが変わるバスケットボール。メンバーが変更されれば、アジャストメントの時間も当然必要になる。多くの役者が揃ったからといって、スター軍団がいきなりエンジン全開で突っ走れると考えたのは早計だったのだろう。

 12月14日までに8連勝を飾ってついに噛み合い始めたかと思いきや、その後にデトロイト・ピストンズ、フェニックス・サンズ、バックスに3連敗を喫した。サンズ戦ではチーム全体で合計16ターンオーバーを献上する乱調ぶり。このようにセルティックスの”ケミストリー欠如”が懸念される一方で、トロント・ラプターズ、バックスといった東の強豪はハイペースで勝ち続けている。そんな状況では、危機論が出てくるのも仕方がない。

「僕たちはもっとハードにプレーしなければいけない。過去3戦では、8連勝していた頃のようにハードにプレーできていない。ハードにプレーすることは勝利につながる。それをやらなければいけないんだ」

 昨季、新人王候補に挙がったテイタムのコメントは、セルティックスの問題が個々の才能にあるわけではないと主張しているようだった。
 
 しかしそんな状況下でも、まだ焦る必要はない。シーズンは折り返し地点にも達しておらず、先は長いからだ。とくにバックス戦では、ホーフォード、アーロン・ベインズ、マーカス・モリスといったビッグマンが故障離脱していたため、勢いに乗る相手に歯が立たなかったのもうなずける。

「8連勝中も対戦相手に恵まれた部分が大きく、リズムがよかったとは言えなかった。優れたプレーができていないのは明らかだ。ただ、セルティックスが数多くの好選手と優秀なコーチを擁していることに変わりはない。今後もアップダウンはあるだろうが、2、3月ごろにはペースを上げてくるんじゃないか」

 ボストン地元紙の番記者はそんな楽観論も述べていた。たしかに、これだけ誤算が続きながら、20勝13敗でのイースタン5位(12月26日時点)は悪い成績ではない。来春に向けて徐々にペースを上げていけば、セルティックスは現在上位にいるチームにとって怖い存在になる。

 今後チームが向上していくためのポイントはどこにあるのか。カギを握っているのは、やはり大黒柱であるアービングのコート内外の働きだろう。

「みんなが快適にプレーできるように留意したい。彼らの成功が自分の成功と同様に大事だから、辛抱強くやっていきたい」

 バックス戦直後のミーティング時、アービングは自身のリーダーシップの向上を誓った。リーグ屈指の得点力を誇るアービングだが、実際にリーダーとしての統率力はまだ証明されていない。

 一昨年オフ、アービングがそれまで3年連続でファイナル進出していたキャバリアーズからトレード志願したのは、レブロン・ジェームズのいない環境でもチームを頂点に導けることを示すためだった。そのためには、エースとして得点を稼ぐ以外にも多くのものが必要になる。

「よりバランスのいいプレーをすることが僕にとってのチャレンジになる。僕はコート上でやろうと思えば何でもできるけど、チームメイトの成功のために何ができるかも大事。その点も意識しておかなければいけない」

 アービングのそんな言葉からは、正直、多少の傲慢さも感じられた。メディアの前で厳しい言葉を残すのはいいが、同時に自身の姿勢、態度でも示さねば逆効果になりかねない。21日の緊急ミーティング以降、セルティックスはシャーロット・ホーネッツ、フィラデルフィア・76ersに2連勝と、いい方向に向かっているように見える。今後も継続してチームを勝利に導けるかどうか、これから先の戦いで26歳の司令塔の真価が問われてくるのだろう。
 
 アービングはレブロン抜きでも勝てるのか。チームリーダーとしての力量を証明できるのか。バックス戦後の緊急ミーティングはセルティックスにポジティブに働くのか。東の本命は前評判どおりの強さをこれから発揮できるのか。

 それらの問いの答えは現状ではわからない。しかし不確定要素が多い分、セルティックスの今後には興味がそそられる。これから先の約半年間は、ボストンのファンにとって実にスリリングな時間になりそうだ。