残り7秒で1点差をひっくり返さなければ日本一を懸けた戦いが終わる。絶体絶命の局面でG森定隼吾(商4=岡山・倉敷青陵)からパスを受けたF濱田健太主将(社4=福岡第一)はスリーポイントラインからためらうことなくボールを放った。シューター濱田が…

 残り7秒で1点差をひっくり返さなければ日本一を懸けた戦いが終わる。絶体絶命の局面でG森定隼吾(商4=岡山・倉敷青陵)からパスを受けたF濱田健太主将(社4=福岡第一)はスリーポイントラインからためらうことなくボールを放った。シューター濱田がこの日ここまで打ったスリーポイントは7本、そして入ったのは0本。会場中が固唾を飲んで、ボールの行方を見守る中、この最後の1本だけがリングに吸い込まれていく。土壇場で逆転に成功した早大が、58-56で前回王者の大東大との熱戦を制する。下馬評を覆す番狂わせを起こし、準々決勝への切符をつかみとった。

  第1クオーター(Q)から全てを出し切る覚悟で臨んだ早大は、スリーポイントが面白いように決まっていく。C富田頼(スポ4=京都・洛南)、F桑田裕平(商3=京都・洛南)、C小室悠太郎(社2=石川・北陸学院)が3連続でスリーポイントを沈め、強豪相手に一歩も譲らない戦いを見せる。大型留学生モッチに対しても、小室が体を張ったディフェンスで、このQはわずかワンゴールに抑える。チームで6本ものスリーポイントを沈めた早大が25-17とリードする意外な展開で第1Qを終える。しかし第2Qは、早大が苦手とするゾーンディフェンスを敷かれ、苦しい時間帯が続く。じりじりと点差を縮められ、ついには同点に追いつかれる。それでも、「リバウンドをしっかり取り切って離されなかった」と小室が語ったように、第2Qの我慢がこの日の勝利につながった。相手の守りに苦しみながらも、5点ビハインドで前半を終えた。


小室は体を張ったディフェンスで留学生センターを抑えた

  続く第3Qは、1回戦でチームを劇的勝利に導いたG長谷川暢副将(スポ4=秋田・能代工)がこの日も覚醒した。得意とするカットインでバスケットカウントをもらうプレーで再び逆転に成功する。49-45とわずかに早大がリードし、最終Qへ。気迫のディフェンスで、大東大のシュート確率を下げるが、互いにシュートが決まり切らず点差は開かない。ここまでインサイドで留学生を抑え込んできた富田、小室が4ファウルとなり、選手たちには焦りも見え始める。ワンゴール差のリードのまま試合終了の時間は近づいてくるが、残り30秒で大東大がスリーポイントでネットを揺らす。スコアは55-55。この局面で濱田がまさかのファウル。相手にフリースローが献上され、逆転される。万事休したかと思われたが、残り2秒でこの日無得点の濱田が放ったスリーポイントが決まり、早大ベンチは歓喜に沸いた。


濱田はスリーポイントで試合を決めた

  「自分たちのやりたいバスケを40分間徹底してこれた」(富田)というこの日の一戦。優勝候補の一角であった大東大を撃破し、早大のバスケットを徹底することができれば勝てない相手はいない、ということが証明された。また、「きょうはディフェンスの勝ち」と小室が試合後に語ったように、全員が最後まで体を張り続けたことも勝利につながった。ヤマ場であった2回戦を突破し、「日本一」という目標に一歩近づいた早大。しかし次戦、勝ち進んでくると予想される日大は、リーグ戦での順位は1つしか変わらないものの2戦2敗と良いイメージはない。厳しい戦いが予想されるが、強敵を倒した今の早大に怖いものはない。16年ぶりのベスト4はもうすぐそこだ。

(記事 小林理沙子、写真 吉田寛人、阿部かれん)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません

第70回全日本大学選手権 12月12日(vs大東大)
  1Q2Q3Q4Q合計
早大251858
大東大17191156
◇早大スターティングメンバー◇
F#27 濱田健太(社4=福岡第一)
G#13 長谷川暢(スポ4=秋田・能代工)
C#26 富田頼(スポ4=京都・洛南)
C#41 小室悠太郎(社2=石川・北陸学院)
F#39 桑田裕平(商3=京都・洛南)
◇主なスコアリーダー◇
得点  長谷川暢:14得点
リバウンド  長谷川暢:7リバウンド
アシスト  長谷川暢:3アシスト
コメント

C富田頼(スポ4=京都・洛南)

――接戦を制しましたが今の率直なお気持ちをお聞かせください

自分たちのやりたいバスケを40分間徹底してこれたことで、いい結果が付いてきてひとまず安心しています。

――どのような対策がありましたか

大東大と関学大の試合で4番とか3番のポジションを空けて留学生に点を取らせないということを徹底しようということで、それがしっかりできたのかなと思います。

――ご自身のプレーはいかがでしたか

そこまで何かしたというわけではないんですけど、ディフェンスのところで多少は貢献できたのではないかなと思います。

――ここまでの試合の4年生の頑張りについてはいかがですか

4年生が頑張るのは最後なので当たり前で、下級生たちが僕たちにしっかりついてきてくれているおかげで、チームが一体となっていい結果となっているので、みんなが頑張っているからだと思います。

――日大戦への意気込みをお願いします

きょう大東大に勝って、大東大の分まで背負ってしっかりと優勝目指して、これからまた気の抜けない戦いが続くと思いますが、自分たちのバスケを展開して勝ちきれるように頑張っていきたいと思います。

C小室悠太郎(社2=石川・北陸学院)

――素晴らしい試合でした。今の率直な気持ちをお聞かせください

うれしいというのと、今年で一番疲れました(笑)。

――インサイドではどのような対策を立てていましたか

モッチ選手を15点以下に抑えるという目標で、12点に抑えられて。全員でしっかり守れて、自分も体張れて対談で書いた「張」を体現できてよかったです。

――ご自身のプレーを振り返っていかがですか

ディフェンスに関しては普段通りできたのでよかったです。オフェンスはスリーがまだ、欲しいところで来ないというのがありました。きょうは僕がモッチ選手についていて、富田選手(スポ4=京都・洛南)と宮本(一樹、スポ1=神奈川・桐光学園)が中で4ポジにつかれてゴリゴリやられていて、僕がスリー決めきらなきゃいけないというのはありましたね。

――第1Qはリードして終えました

正直、あまりその展開を予想していなくて、ただ全てを出し切るということだったので、全員が全てを出し切った結果があれにつながって、あの貯金があったからこそロースコアのゲームに持ち込めて、最後に勝てたんだと思います。

――第2Qにはゾーンを敷かれて苦戦している様子も見えました

ゾーンはワセダが得意としていなくて、試合見てもらったら分かると思うんですけど。第2Qはスリーもあまり入らずに苦しかったんですけど、そこでディフェンスですね。リバウンドをしっかり取り切って離されなかったというのが本当に良かったことでした。そこで我慢できたから、大崩れしなかったんだと思います。大東はデータ的にも、オフェンスリバウンドと得点の相関があると学生コーチが調べてくれて。そこでオフェンスリバウンドを取らせなかったのが、この結果につながったと思います。

――最後、焦りはありましたか

もちろんです。もう焦りしかなかったと思います。ただ焦りながらも、ターンオーバーも多かったですけど、みんながみんな声を出し続けてディフェンスができたので。何度も言いますけど、きょうはディフェンスの勝ちなので(笑)。焦りをディフェンスでカバーできてよかったと思います。

――明後日の3回戦への意気込みをお願いします

近大も留学生の選手がいて、非常に勢いのあるチームですし、日大はリーグ戦で2連敗しているので、きょうはきょうで切り替えて明日しっかり対策の練習をして、切り替えて優勝目指して頑張っていきたいと思います。