この日開幕した天皇杯全日本選手権(天皇杯)。初日は13階級が実施され、早大からは男子グレコローマン(グレコ)に72キロ級で齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)と野本州汰が、97キロ級に松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)がエントリー。加えて…

 この日開幕した天皇杯全日本選手権(天皇杯)。初日は13階級が実施され、早大からは男子グレコローマン(グレコ)に72キロ級で齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)と野本州汰が、97キロ級に松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)がエントリー。加えて女子62キロ級に小玉彩天奈(社1=高知東)が出場した。

★男子グレコローマン勢は強敵に屈し、全員が初戦敗退


早大最後の試合となった齋藤

 男子グレコは全員が初戦敗退と満足のいく結果は残せなかった。97キロ級で出場した松本は初戦に志喜屋正明(自衛隊)と対戦。第1ピリオド中盤にパッシブによる不利な体制から3度ローリングを回されてしまい、0−7と大きくリードを許す。その後も松本は「スタンドで押し込まれてしまった」と攻撃の糸口を見出せず、第2Pに場外押し出しによりテクニカルフォールで敗戦となった。志喜屋が決勝に進出したことにより、あすの敗者復活戦へと回る松本。一つでも上の順位を目指し、今季最後の戦いへ挑む。

 天皇杯初出場となった野本は男子グレコ72キロ級で出場。初戦の相手は高校時代にテクニカルフォールで敗戦を喫し、苦手意識もあったという北條良真(神奈川大)だった。序盤にビッグポイントを奪われ大幅なリードを許した野本だが、その後立て続けにバックポイントを奪い追い上げを見せる。しかし、第2Pに入ると思うように攻撃を決められず、逆に場外とパッシブによる2点を加えられ5−8で敗戦。初戦敗退となった野本だが「(天皇杯で)6分間戦えたというのは大きかった。通用する部分もあったので、自信になりました」と初めて挑戦した全日本の舞台で確実に手応えを感じていた。

 レスリング人生最後の大会に挑んだ男子グレコ72キロ級の齋藤は初戦、試合開始直後にバックポイントと投げ技を決められ、0−6と苦しい展開に。齋藤も意地を見せ、4ポイントのテークダウンを奪い追い上げを見せる。しかしその後は防戦一方の試合展開となり、最終的に4−12のテクニカルフォール負けでの幕切れとなった。それでも齋藤は「天皇杯のような舞台は絶対に出ることができないと思っていた時期もあったので、締めの試合でこういう大きい大会に出ることができて、振り返ってみたら後悔のない4年間だったと思います」と早大での4年間を振り返った。

★小玉、死闘の果てに伊藤に惜敗。「今までで一番悔しい試合」


格上の伊藤相手に熱戦を繰り広げた小玉

 五輪階級ということもあり、並みいる強敵がひしめく女子62キロ級にエントリーした小玉。坂野結衣(警視庁)との対戦となった初戦は先制に成功するもその後6点を奪われ、ビハインドで第1Pを折り返す。苦しい展開が予想されたが「なんとしても勝つ」と徐々に追い上げを見せた小玉は、試合終了残り32秒についに逆転に成功。相手の猛攻も振り切り、8−6で接戦となった初戦を突破した。

 続く準々決勝の相手は第2シードの伊藤友莉香(自衛隊)。過去2回の対戦では手も足も出なかったという相手だが、試合は拮抗した展開となり両者1ポイントずつを分け合い第1Pを終えた。その後2点のリードを許し迎えた試合終了間際に小玉は渾身のタックルを決めたが、ほぼ同時に伊藤のカウンターを受け、2ポイントを分け合うかたちに。両者互角の死闘の果てに、5−7とあと一歩及ばず、「本当に今までで一番悔しい試合でした」と小玉。一方でこれまで太刀打ちできなかった伊藤に対し互角に戦えたこと、劣勢の中でも攻めの姿勢を貫けたこと、そして、五輪階級となった今大会で天皇杯初勝利を収めたことなど、小玉自身その成長を強く感じる今大会ともなった。

(記事 林大貴、写真 涌井統矢)

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結果

男子グレコローマン

▽72キロ級
齋藤 1回戦敗退
●1回戦 4−12 日下尚(高松北高)

野本 1回戦敗退 
●1回戦 5−8 北條

▽97キロ級
松本 初戦敗退
●予備戦 0−8 志喜屋

女子
▽62キロ級
小玉 準々決勝敗退
◯予備選 8−6 坂野
●準々決勝 5−7 伊藤

コメント

齋藤隼佑(スポ4=群馬・館林)

――この大会を振り返っていただいていかがですか

最後だから頑張ろうっていう気持ちはあったんですけど、気持ちに体が追いつかず、普通に負けてしまいましたね。

――敗因としては何が挙げられますでしょうか

相手に合わせ過ぎたっていうのもありますし、練習不足っていうのもあるんでしょうけど、一番は相手が強かったというところですかね。

――最後はテクニカルフォールでの敗戦となりましたが、悔しさは残りますか

(テクニカルフォール負けを喫した場面は)自分の得意なかたちになったので、最後ですし、たらればなんですけど、思いっきり技をかければよかったかなという後悔はあります。

――早大レスリング部での4年間を振り返っていただいていかがですか

勝てない時期もあって、こういう天皇杯のような舞台は絶対に出ることができないなと思っていた時期もあったので、締めの試合でこういう大きい大会に出ることができて、結果的に負けてしまいましたけど、振り返ってみたら後悔のない4年間だったと思います。

――小学1年生から続けてきたレスリングで、得られたものはありますか

チームの仲間であったり、先生だったり、人とのつながりっていうのが一番だと思いますね。今後にも生きてくるものだと思います。

――後輩たちに期待したいことはありますか

自分が見本になれるような先輩になれなかったので、今いる後輩たちには見本になれるような先輩になってほしいなという思いはありますね。そういうふうに続いていけば早大はもっといいチームになると思います。

松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清陵総合)

――ベスト8が目標ということでしたが、大会を振り返っていかがでしたか

いきなり強い選手と当たってしまったので、自分の力を試せればと思って挑みました。自分のミスで負けてしまったんですけど、思いのほか通用したなという印象でした。

――シード権を持つ相手にテクニカルフォールで敗れましたが、敗因はどこにありましたか

スタンドで押し込まれてしまったというのと、グラウンドで返されてしまったというところですね。スタンドでもっとガツガツいくべきでした。自分はグラウンドが得意なので、もっとそこを生かせればなというところでした。

――トップレベルの選手との差であったり、そこへ勝つために必要なことは感じられましたか

身体作りも必要だと思いましたし、相手の方が試合の流れでポイントを突いて攻めてきていたような感じがしたので、そこらへんも練習や試合を積んでいく中で培っていければなと思います。

――今季を振り返っていかがでしたか

今年の前半は結果も残せて良い感じだったんですけど、後半なかなか勝てなくなってしまいました。周りの実力が上がってきているなと感じているので、来年は4年生として、大学ラストの年になるので最後にいい思いができるように頑張りたいなと思います。

――来年は最上級生となりますが、そこへ向けた目標はありますか

これは1年生の頃からずっと決めてたことなんですけど、最終目標としては『インカレ優勝』というのがあるので、それに向けて頑張りたいなと思っています。

野本州汰(スポ2=群馬・館林)

――天皇杯は初出場ということですが、率直な感想はいかがですか

いつもと同じ駒沢体育館なんですけど、空気感が全然違くて別の会場のように感じました。アップの時でもちょっと緊張してしまいました(笑)。

――学生トップレベルの北條良真選手(神奈川大)が相手でしたが、意識された部分はありましたか

北條選手とは高校生の時に全国高校生グレコローマン選手権という大会で、予選の決勝で対戦したことがあったんですけど、その時はテクニカルフォールで負けてしまいました。体格もがっしりとした選手で、苦手意識もありましたね。今回はどうやって攻めようかという中で、先に投げ技を見せてしまったので、投げはあまり使えないなと思っていました。そうなった時に攻めきれなかったといいますか、相手の守りが固いなというのは感じました。

――どのような対策を立てて挑まれましたか

へたに迷った状態で組み合うと反り投げされたりするなと思ったので、手先をどうやったら優勢に取れるかと考えて、とにかく自分から先に組もうというところは意識していました。

――攻撃のセオリーという部分の課題は今大会いかがでしたか

セオリーがないなというのは監督にも言われましたね。やっぱりセオリーがないと攻めきれる部分が攻めきれないなっていうのは今回もやっていて感じましたね。

――今大会が今後に生きる部分というのは感じられましたか

そうですね。初めてこういう緊迫した空気感の中で試合できたっていうのは、1試合ではあったんですけど6分間しっかりと戦えたというのは自分の中では大きかったですね。このレベルの相手でも通用する部分があって、何が通じて何が通じてないかというのも分かったので、そこは良かったです。試合が始まる前は実力差を勝手に感じていていたんですけど、実際に試合をして通用する部分とかもあったので、そこは自信になりましたね。

――来年からは上級生となりますが、目標や意気込みをお願い致します

今年もでしたが、来年もまた強い後輩が入ってくるので、その後輩たちに示しがつくようなレスリングをしたいなと思っています。目標としては明治杯の予選に勝って、またこの全日本に上がって次は勝利を収めたいと思います。

小玉彩天奈(社1=高知東)

――初戦は逆転で接戦を制しましたが、振り返っていかがでしたか

最初始まる前はちょっと自信がない部分もあったんですけど、マットに上がってからは自分の目標としていた『なんとしても勝つ』という強い気持ちを持って戦えました。最後はギリギリで、危なかったんですけどなんとか守り抜くことができて良かったです。

―準々決勝では強敵・伊藤友莉香選手(自衛隊体育)との対戦で、惜しくも敗れてしまいました

投げに頼りすぎたなというのがありますね。投げ自体は得意なんですけど、逃げ腰で投げるのはよくないですし、その状況に持っていってしまったのは本当にもったいなかったなと思います。伊藤選手とは今回で3回目の対戦だったんですけど、半年前はボコボコにされて、その前も大差でやられていたので今回に関しては差を縮めることができていたのかなと思います。残り1秒までは勝っていたので、ちょっと…ほんとに今までで一番悔しい試合でしたね。

――以前課題に挙げられていました、攻めのレスリングが垣間見えました

負けている時でも攻める気持ちを忘れずに戦えたのは本当に良かったんじゃないかなと思います。

――準々決勝は本当に惜しい試合でした

いやー、本当に悔しいです。自分がポイント取った後に返されるなんて全く考えてなくて、とにかく相手からポイントを取ることだけを考えていたので。もったいなかったですね。でも、あの場面でタックルを返された以前に、投げに頼りすぎたなというのが自分の中では一番後悔していますね。反省です。自分が攻めている場面での失点が多かったので、やっぱり本当に悔しいですね。

――大学生として出場する天皇杯でしたが、高校時代との心境の変化などはありましたか

高校の時は天皇杯で一回も勝てたことがなくて、全部初戦で負けてたんですけど、今回は周りもオリンピックの予選も兼ねている中での試合で、自分の成長を感じることができて自信にはなりましたね。でも、結果が追いつかなかったという悔しさはすごくあります。明治杯では準決勝までいけていたので、結果がついてこなかったのは悔しいですけど、内容自体は成長を感じられるものだったと思います。