前回に引き続きドラフト会議を“株式会社NPB(日本プロ野球)という会社の選手配属先を決定する会議”、と置き換えて「どのチーム(部署)がどういう特色があるのか?」「その特色を今回のドラフト会議でどう反映してあるのか?」「その部署(球団)っぽ…

 前回に引き続きドラフト会議を“株式会社NPB(日本プロ野球)という会社の選手配属先を決定する会議”、と置き換えて
「どのチーム(部署)がどういう特色があるのか?」
「その特色を今回のドラフト会議でどう反映してあるのか?」
「その部署(球団)っぽい雰囲気に合致しているのか?」
という独自の切り口で勝手にお送りしているこの企画。

最終回の今回は、野球界において“派手ではないが仕事きっちり”的な“野球界の必殺仕事人集団・株式会社NPBの経営企画室”こと中日ドラゴンズと東北楽天ゴールデンイーグルスを見ていこう。
※ちなみに今回もこの先の各球団の特徴、役割付けなどは筆者の超主観的な妄想であることも添えさせていただく。

【第1回 球界の人事部:東京ヤクルトスワローズ、埼玉西武ライオンズ】編はこちら
【第2回 球界の人気部署営業本部:読売ジャイアンツ 、阪神タイガース】編はこちら
【第3回 “野球人気再考戦略のマーケティング部”:北海道日本ハムファイターズ、横浜DeNAベイスターズ】編はこちら
【第4回 次世代の“野球選手”の登竜門・広告宣伝部:福岡ソフトバンクホークス、広島東洋カープ】
【第5回 球界の名脇役“人材育成・R&D研究開発部”:オリックスバファローズ、千葉ロッテマリーンズ】

 みなさんの周りにもこんな存在はいないだろうか?
「ちょっと変わってるヤツ、なんだけどいないとそれはそれで物足りない・・・」
それは野球界とて同じ話。いくら人気球団や強豪球団があっても、それだけだと全体的な盛り上がりに欠けるのが世の中の常。そして、エンターテイメントとして成立させる場合、そこには “我が道を行くタイプ”がスパイスとして加わることで、化学反応を起こせる。ちょっと言い方は極端だが “ヒール的な存在”が必要なのだ。

このヒール的な要素が感じ取れる部署が、冷静沈着で規律を重んじる【中日ドラゴンズ】とある種振り切った“自由さ”を打ち出す【東北楽天ゴールデンイーグルス】なのだ。


【写真提供=共同通信社】


まず、中日ドラゴンズから紐解いてみよう。

 中日ドラゴンズは、昨今は6年連続Bクラスと苦しいシーズンが続いているが、球界がより盛り上がるためには欠かせないピースだ。昔からセ・リーグの人気球団である球界の盟主・巨人や関西の雄・阪神タイガースに対する対抗馬として、両球団のような圧倒的な派手さはないものの、冷静沈着、堅実な野球を基盤とした規律を重視したトータルバランスで勝負するチームだ。それはやはり先代の部署長・落合監督の影響か。しっかりとした人材を配置し、適材適所、将来を見据えてポジションをあてがい戦ってゆく・・・地道な計画性をを感じさせるチーム設計や計画がこの部署の伝統として定着しつつある。

その中日の今年のドラフトは“未来に描くドラゴンズの理想像”を実現する為にはこれ以上ないくらいの好人材が集結する結果となった。

一巡目では、ブレずに【公言通り】に今年の目玉・根尾昴(大阪桐蔭)を指名し、見事成就。これだけでも低迷するチームの“希望の星”として、そして待望のスター候補の誕生に大いなる刺激となるだろう。さて、あとはどこを守らせるのか?遊撃手一本を公言しているものの、地味めでありながらも新人から実績を積んでいる京田陽太との兼ね合いをどうするか。与田監督の大きな仕事の一つだ。

そして二巡目には、東洋大学投手3羽ガラスの一角・梅津晃大の指名に成功。大学時代は不完全燃焼だったが、その潜在能力は三人の中でも一番という声もあるほど将来性は豊か。

さらに、三巡目は勝野昌慶(三菱重工名古屋)を指名。土岐商業時代からそのスケール感ある投球は迫力もあり即戦力の大型右腕。社会人経由ながらも21歳と若いのも中日投手陣には楽しみな存在。一瞬、顔ぶれが派手すぎて(失礼。。)中日っぽさがなくなると思いきや、四巡目以降はさすが“手堅いチーム設計の経営企画室さながらの将来設計”ある指名がずらり。

四巡目は石橋康太(関東第一)の人材不足の若手捕手を、五巡目の垣越建伸(山梨学院高)は中学時代(飛騨高山ボーイズ)の根尾のチームメートで、貴重な大型左腕で大化け候補、六巡目は滝野要(大阪商業大)と走攻守にバランスのとれた大型外野手を揃えてきた。指名6選手のうち東海エリア出身者を4人揃えて“地元巻き込み型ドミナント指名”はお見事という印象。

一方、パ・リーグの“経営企画室”こと東北楽天ゴールデンイーグルス。
プロ野球界の再編成を経て生まれた新興“部署”という歴史もあり、新しい試みや選手の積極起用、生え抜き初の監督就任となった平石監督に代表される思い切った首脳陣への登用も目立つ自由闊達な雰囲気漂う独創的な部署である。

ただ、自由でありながらも自然と“まとまった”一体感を感じられるのもこの部署の不思議なところ。その自由で先進的で“リベラル”な部署カラーがストライキの時に若きリーダー嶋を生み、田中将大を大きく育んだ土壌だ。中日とはまた一味違った“独創性”を重視するリベラル系経営企画室の雰囲気を漂わせる部署であり、来シーズンは石井一久GMも加入し、その勢いがさらに加速してゆくだろう。

そして、今年の楽天のドラフトはその自由闊達な波に誘われて?かはわからないが、強烈な個性・独創性を持った選手が“リベラル系経営企画室楽天課“に集うこととなった。

一巡目には辰己涼介(立命館大)の指名に成功。指名会見で「まずは、楽天カードを作りたいと思います」というリップサービスや大学時代の強気な言動や自らを鼓舞するような発言をする強烈な個性は、石井GM就任に伴う“類は友を呼ぶ”指名となった。

二巡目の太田光(大阪商業大)は有名人と同姓同名?という話題性もありながらもプレーにおいては、強烈なリーダーシップという個性を、三巡目・引地秀一郎(倉敷商)は188センチの上背から150km/h超の豪速球、六巡目・渡辺佳明(明治大)は六大学最後の秋で首位打者獲得の巧打者、七巡目・小郷裕哉(立正大)は明治神宮大会制覇の立役者の一人で走攻守に高いレベルが揃う大学屈指の外野手。

そこに、四巡目・クロスファイアーが美しい弓削隼人(SUBARU)、五巡目・成長曲線を描く佐藤智輝(山形中央)、八巡目の野球に対してストイックな鈴木翔天(富士大)のサウスポートリオが集結。

スター候補にリーダー候補、左腕トリオに若手有望投手にタイプの違う好打者を内野外野と人材豊富なまさに“楽天市場”。ここに強打の大型セカンド・浅村が西武から加入してくることも考えるとワクワクが止まらない。

今日紹介した2チームも地域密着というキーワードのもと、様々な取り組みがされてきている。そして中でも東北楽天ゴールデンイーグルスのファンは、そその球団の姿勢に答えようと12球団の中でも随一の“一体感”を感じる球団の一つだ。その声援で田中将大を凌ぐ生え抜きスターを育んでもらいたい。

中日ドラゴンズも自分たちの地の利である“東海地方”に盤石の人気基盤を改めて構築しようとしているこのタイミングで将来のスーパースター候補・根尾昴の獲得に成功。数年後振り返るともしかしたらこの出来事が、中日ドラゴンズファンの間では “ビフォー根尾・アフター根尾”と呼ばれるくらいの歴史的な分岐点となるかもしれない。

 これまで各球団を“一つの会社の部署”という万人の人が咀嚼しやすいように分解を試みてみた。その材料として、新人“採用”であるドラフト会議を紐解いてきたが、そこには選択をする側のチームの“らしさ”や“温度感”もさることながら、選択される側の選手にも “そのチームっぽさ”や“納得感”が湧いてくるのが、不思議なところだ。

これから冬を越え、春になれば野球シーズンが始まる。
今度は球場で本職のプレーを、選手の勇姿を是非球場で見届けてもらいたい。

文・キヅカキラ氏(@KZSK