日本一のフェンサーを決める全日本選手権(全日本)個人戦が、今年もスタートした。初日に行われたのは、男子サーブルと女子エペ。早大は、男子サーブルで武山達(創理4=東京・早大学院)が16位、女子エペで才藤歩夢(スポ4=埼玉栄)が15位と、男女…

 日本一のフェンサーを決める全日本選手権(全日本)個人戦が、今年もスタートした。初日に行われたのは、男子サーブルと女子エペ。早大は、男子サーブルで武山達(創理4=東京・早大学院)が16位、女子エペで才藤歩夢(スポ4=埼玉栄)が15位と、男女共に最高位はベスト16となった。

★武山、大学ラスト試合で格上選手から勝利をもぎ取る!(男子サーブル個人)

 男子サーブルには早大から3人が出場。このうち武山と青木貴雅(スポ1=静岡・沼津西)が初戦を突破した。青木は、2回戦で清水紀宏(日大)と対戦。「相手がやってくることを前半と後半で変えてきて、それに対して対応できなかった」(青木)と、後半に大きく点差を離されてしまい、9−15で試合を終えた。

 武山の2回戦の相手は、昨年まで中大男子サーブルをけん引してきた実力者・後藤駿弥(大垣共立銀行)。武山にとって格上の相手だったが、武山の得意技が後藤にうまく決まり、互角の戦いを繰り広げた。そして勝負は14−14までもつれ込み、迎えた一本勝負。ここまで勢いに乗った武山が、見事最後まで攻め切った。憧れの選手だったという後藤から勝ち星を挙げた武山は、大きくガッツポーズをし、喜びを爆発させた。その後3回戦では日本ランキング2位の島村智博(警視庁)と対戦するが、「すごく自然に点数を取られてしまった」(武山)と、連続で強敵を倒すことはできなかった。


2回戦で勝利を決めた武山

 現在4年生の武山は、この試合が早大フェンシング部の部員として挑む最後の公式戦となった。次戦の全日本団体戦は、後輩たちに命運を託す。この一年酸いも甘いも経験した早大男子サーブル陣が、今季ラストの団体戦で笑顔の花を咲かせられることを期待したい。

(記事 藤岡小雪、写真 内野楓)

★才藤、大学最後の全日本個人はベスト16に(女子エペ個人)

 女子エペでは、トーナメントに進出した才藤と駒場みなみ(スポ2=富山西)が初戦からぶつかる展開となった。才藤と駒場は関東学生選手権(関カレ)でも同士討ちをしており、その際は後輩である駒場が勝利を収めていた。今回も第1セットは駒場が同時突きを含む5連取を獲得し、駒場に流れが傾いているかのように思われた。だがここから、才藤が先輩としての意地を見せた。同時突きを含む8連取で、一気に逆転に成功。そこからは接戦を繰り広げ、一度は隙を見せた駒場も負けじと食らい付いていく。才藤14点、駒場13点という状態で、駒場は果敢に前方へと攻めていくが、1点及ばずタイムアップとなった。

 同士討ちに勝利した才藤は、続く2回戦で3年前の全日本決勝にて1点差で敗北した佐藤希美(大垣共立銀行)と対戦。「1回戦で序盤に無理して自分から攻めて点を取られる展開が多かったので、じっくり時間を使った」(才藤)と、ロースコアで試合を進めていく。序盤に開いたリードを、時間を使って縮めていくと、残り7秒で同点に追い付いた。そしてくしくも、3年前と同じく一本勝負で勝敗が委ねられることとなった。ここで今度は才藤が一本を取り、3年前のリベンジに成功。3回戦へと駒を進めた。だが3回戦の相手は、日本ランキング2位の吉村美穂(同大)。全勝が見込まれていた予選プールで3敗してしまうなど、あまり本調子ではなかった才藤は、7−15と力及ばずベスト16で姿を消した。


3回戦での才藤

 個人戦では、ベスト16が最高位となった早大女子エペ陣。2週間後に控える団体戦は、連覇が懸かる大会となる。4年生である才藤にとって、早大生として出場する最後の団体戦。全日本学生選手権(インカレ)を制覇した勢いそのままに、全日本でも最高の結果を残したい。

(記事 藤岡小雪、写真 本野日向子)

 ※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

 ※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

▽女子エペ

才藤歩夢(スポ4=埼玉栄)15位

1回戦:◯14-13 駒場みなみ(早大)

2回戦:◯11-10 佐藤希望(大垣共立銀行)

3回戦:●7-15 吉村美穂(同大)

駒場みなみ(スポ2=富山西)40位

1回戦:●13-14 才藤歩夢(早大)

澤浦美玖(スポ3=群馬・沼田女)プール戦敗退

溝口礼菜(スポ2=千葉・柏陵)プール戦敗退

▽男子サーブル

武山達(創理4=東京・早大学院)16位

1回戦:◯15−11 森皓己(愛工大)

2回戦:◯15−14 後藤駿弥(大垣共立銀行)

3回戦:●5−15 島村智博(警視庁)

青木貴雅(スポ1=静岡・沼津西) 24位

1回戦:◯15−13 佐々木聖(島根クラブ)

2回戦:●9−15 清水紀宏(日大)

高木良輔(スポ3=埼玉・立教新座) 38位

1回戦:●8—15 村岡聡丞(日体大)

記者会見コメント

加納虹輝(スポ3=山口・岩国工)※一部囲み取材より抜粋

――試合への意気込みをお願いします

全日本は、8日に準決勝までが行われます。そこでしっかりと勝ち上がり、グローブ座で行われます決勝に進出したいと思っております。グローブ座での決勝では、フェンシング の面白さを観客の皆さんに届けていきたいです。また来年から、オリンピックシーズンが始まります。今回の全日本で優勝して、自信を付けたいと思います。

――決勝のみグローブ座での試合ということで、何か意識している点はありますか

グローブ座で試合をするのは初めてなので、どういった雰囲気で試合ができるのか楽しみにしています。絶対に決勝に残って、グローブ座でエペの魅力を見せていきたいと思います。

――2020年の東京五輪を見据えたとき、ご自身の中でこの全日本をどのように位置付けていますか

今の日本の男子エペが非常に高くなってきているので、その中で決勝に残る、優勝するというのは国際大会で勝つことへの自信にもなると思います。そういった点において、とても重要な大会だと僕自身思っています。

――試合が近付いていますが、現在の調子は

この間ケガをしてしまって万全の状態ではないんですけど、調子自体はすごくいいので、ケガは気にせずやっていきたいなと思います。

――どこをケガしてしまったのでしょうか

左足の太ももに相手のひざが入ってしまって。ケガ3週間ぐらい経っているんですけど、今も足自体は万全ではない状態です。

――目標は優勝ということで変わりはないですか

はい、変わりないです。

――一番のライバルは見延和靖(NEXUS)選手だと思いますが、意識などはしていますか

強い選手は他にもたくさんいるので、見延先輩だけ意識するということはないかなと。誰と当たっても気を抜かないようにやっていきたいです。

――去年全日本には出場していないので、改革後の全日本に出場するのは初めてだと思います。難しいと思う点や、楽しみな点はありますか

難しいと思う部分はないです。グローブ座で試合をするというのは、すごく面白いことだと思います。選手2人だけが注目されるというのはなかなかないと思うので、すごく楽しみです。

――過去の全日本の試合で印象に残っているものはありますか

2年前はベスト8だったんですけど、見延さんに負けた試合は印象に残っています。あの時期はまだシニアの大会にはほとんど出ていなくて、ジュニアでもそんなに勝ったことがなかったので、その中で安定してベスト8には入れたけど、まだシニアのカベは厚かったなと思いました。

コメント

才藤歩夢(スポ4=埼玉栄)

――きょうの試合全体を振り返って

きょうは予選プールからあまり調子が良くなかったです。普通にやれば全勝できるプールだったんですけど、3敗してしまって。それであまり調子が良くないな、と最初の試合に負けた時点でちょっと思いました。それでトーナメントを見たらワセダ同士で、一発目で当たるか…と思ったんですけど…。関カレでも当たっていて、そこでは私が負けていたので、今回は勝たないとなという気持ちでやりました。

――初戦の駒場選手との試合では前半押されて、後半巻き返す展開となりましたが、何か戦術など考えていましたか

そんなに大きく(戦術を)変えたというわけではないんですけど、前半攻めすぎてぽんぽん点数を取られていたので、後半は少しだけ我慢して、という風には心がけました。

――1回戦、2回戦とも一本勝負となり、メンタル的にも苦しい部分があったと思いますが

そんなに一本勝負で緊張してというのはなくて、気持ち的には楽だったんですけど、2試合目の佐藤さんには、1年生の時に決勝で一本勝負で負けていて。その時は結構自分がラッキーでポイントを重ねてという感じだったんですけど、今回そんなにはうまくいかないとは分かっていました。その前の試合で序盤に無理して自分から攻めて点を取られる展開が多かったので、1試合目のことを学習して、2試合目は我慢して。簡単にいったら絶対やられるような相手というのは戦う前から分かっていたので、じっくり時間を使ってと思いながらやりました。

――次の団体戦に向けて意気込みを

インカレで優勝して、早慶戦(早慶対抗定期戦)でも勝っていて、そんなに団体は印象的に悪くないと思っています。昨年に続いて連覇目指して、ワセダとして出る最後の団体戦でもあるので、しっかり結果を残してワセダに貢献できるように頑張りたいと思います。

武山達(創理4=東京・早大学院)

――全日本はどういった目標を目指していましたか

正直順位に関しては、具体的な目標はそんなに持っていなくて。なんとなくベスト8というのはあったんですけど。学生として最後の試合だったので、1試合でも多く楽しんでやろうというのが目標でした。でもベスト8に行きたかったというのは少しあるので、ちょっと悔しいです。

――実際満足した気持ちと悔しさだと、どちらが大きいですか

…難しいですね。2回戦の相手は後藤さん(駿弥、大垣共立銀行)という、めちゃくちゃ強くて憧れの選手で。その後藤さんに一本勝負で勝つことができて、そのときはすごくうれしくて、その瞬間はすごく満足していました。でもいざ島村さん(智博、警視庁)とやると、自分の中では結構いいプレーができたとは思ったんですけど、結果を見ると点数がすごく開いてしまっていて。すごく自然に点数を取られてしまったなと。もっとできたんじゃないか、と終わってからすごく悔しくなったので、今はうれしい気持ちより悔しい気持ちの方が大きいです。

――今大会を迎えるにあたって調子は

インカレが終わってから、闘争心がちょっと薄れてしまって。サーブルは前に前にという気持ちがないと勝てないと思うんですけど、それが少しできなくなってしまって。勝ちに対する意欲が薄れてしまっていたので、直前まであまり調子自体は良くなかったと思います。でもきょうは前に行けて、その中で相手にミスをさせるというプレーをうまく使えたので、きょうは調子が良かったです。

――2回戦で後藤選手に勝てた理由は

ほとんどが立ち会いで終わったんですけど、その中で自分が得意であったシュラプレパラションという相手がアタックに来ている最中に自分が打つという技と、パラードリポスト(相手の剣を払って攻撃をかわした後、すぐに反撃する技)が本当にうまく決まっていいタイミングで出せて。結果的にその技を生かして、その次のプレーで前に出るというのがうまくはまりました。そこに関しては自分の長所を出せたかなと思っています。

――理系の大学4年生ですが、進路はどうなっているのでしょうか

半年間大学に残って、その後院試を受けて、今の研究室の大学院に行く予定です。

――大学には残るということですが、部には残りますか

部には残らないんですけど、きょう悔しい思いで終わったので、来年ももう少し選手を続けようかなと今思っています。部に籍は置きませんが、練習は変わらず部でしようと思っています。

――全日本の団体には出場予定ですか

出ずに次の代に託す予定です。でもそれまで練習相手などでサポートできればと思っています。

――では正式に部員として大会に出るのはこれが最後なんですね

はい、最後ですね。

――最後に早大の後輩へのメッセージをお願いします

とにかく後輩たちは強いので、日本で満足せず海外で活躍する選手も多くて。そういう選手がいっぱいいる中で練習しているというのは、とてもいい環境だと思います。だからみんな現状で満足せず、もっと上に行って、もっと早大が強くなってくれたらと思います。種目関係なく全員自分の限界を超えられるように、もっと頑張っていってほしいです。

青木貴雅(スポ1=静岡・沼津西)

――今大会の目標は

今回の目標は入賞することだったんですけど、32で終わってしまいました。ベスト8以上に入りたいなと思っていました。

――ベスト32の結果についてはどのように受け止めていますか

目標としている結果にはならなかったんですけど、関カレ、インカレに比べて、自分のやりたいことができてしっかりとプール戦を上がれて、今までの試合よりは良かったかなと思います。

――試合で良かった点などありましたか

プール戦が関カレ、インカレ、全日本と3つを比べて、一番上がりが良かったことが一番うれしかったです。

――初戦は接戦を制しましたが振り返っていかがですか

前半に8−4で勝っていたんですけど、途中で少し点数を追い上げられて。ちょっと負けていた時もあったんで前半勝って、最後までずっとリードしたまま勝ちたかったです。

――2試合目は、最終的に6点差をつけられての敗北となりましたが

前半結構良いペースでやっていけたんですけど、相手がやってくることを前半と後半で変えてきて。それに対して対応できなかったところが悪かったと思いますし、後半に後ろで戦ってしまったので、自分から組み立てて仕掛けたかったです。

――最後に団体戦に向けて一言お願いします

個人戦は目標には達することができなかったんですけど、自分の中で納得できた部分が多かったので、良かった部分を団体戦につなげて、団体戦では良い結果で終わりたいです。