今年も両校の意地がぶつかった。早大で行われた第71回早慶対抗定期戦(早慶戦)は、手に汗握る試合となり、早慶OB、OG、応援部の歓声で大いに盛り上がった。試合は男子フルーレが劇的な逆転勝ちを収めると、勢いそのままに早大が各種目勝利を挙げる。…

 今年も両校の意地がぶつかった。早大で行われた第71回早慶対抗定期戦(早慶戦)は、手に汗握る試合となり、早慶OB、OG、応援部の歓声で大いに盛り上がった。試合は男子フルーレが劇的な逆転勝ちを収めると、勢いそのままに早大が各種目勝利を挙げる。早大が3年ぶりに全勝優勝を果たし、伝統の一戦で見事に白星を勝ち取った。

 最初に登場した男子フルーレは序盤こそ競り合う展開になったが、徐々に慶大にペースを握られる苦しい展開に。じわりじわりと点差を広げられ、最大13点、最終セット前には10点と大きくリードを許してしまう。絶体絶命の状況で、最終第9セットに入ったのは、先日の全日本学生選手権(インカレ)で悲願の優勝を果たした松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)。「苦しい展開で回ってくるということは予想していた」(松山)と、落ち着いた試合運びを見せ、着実に点差を縮めていく。高まる逆転の機運に会場が盛り上がる中、ついに追い付き、勢いそのままに勝利を手にした。逆転勝利した瞬間、松山は倒れ込み、メンバーは松山の元に駆け寄り、勝利の喜びを分かち合った。「みんなの応援だったり、ベンチとか、ワセダの関係の人の力」(松山)を支えに、最後の早慶戦で、圧巻のパフォーマンスを見せた。続く女子フルーレは序盤からポイントを重ね、早い段階で主導権を握る。自分のプレーを貫き、終わってみれば45-24と大きく突き放した。今回ベンチ入りした4人は全員2年生で、来年以降大きな期待を持たせてくれる一勝となった。


男子フルーレの試合終了後、喜びを分かち合う選手達

 実力者のそろう男子エペは、試合全体を通じて優位に進めた。同点で迎えた第3セットでは、加納虹輝(スポ3=山口・岩国工)が6連続得点を挙げ、リードを奪う。その後は個人個人が危なげないプレーを見せ、相手に流れを渡さず。最後は小野真英主将(スポ4=埼玉栄)が無難に試合を締め、白星をつかみ取った。続いて登場したのは先日のインカレを制覇した女子エペ。早慶戦もメンバーを変えずに挑んだが、序盤から苦しい展開が続く。この悪い流れを断ち切ったのが、才藤歩夢(スポ4=埼玉栄)だ。時間をかけ、相手の隙を突く堅実なプレーが光った。第5セットでは6連続ポイントを挙げる活躍で、一気に逆転し、チームに流れを引き寄せる。最終セットでは同時突きを10度記録するなど、リードを維持。終盤の相手のフレッシュにも冷静に対応し、早大の勝ち越しを決める勝利を持ち帰った。

 5戦目の男子サーブルは、序盤から一進一退の接戦が続いた。積極的に攻めるものの相手からリードを奪うことが出来ない。しかし第6セット、高木良輔(スポ3=埼玉・立教新座)が勝ち越しに成功すると、第7セットで青木貴雅(スポ1=静岡・沼津西)が4連続得点を奪い、その後は早大のペースに。青木は第2セットで相手に6連続得点を許していただけに、修正し、際どいプレーをものにできたのはチームに弾みをつけただろう。このリードを保ち、白星を挙げる。全勝が懸かった最後の試合は、女子サーブル。序盤は相手にリードを許してしまうが、徐々に攻め切るプレーが増えていく。着実にポイントを重ね、終盤まで勢いを持続。45-28で勝利を収め、早大は全勝優勝を成し遂げた。


果敢に攻める才藤

 歴史ある伝統の一戦で、最高の結果を残した早大。逆境を跳ね返し、接戦をものにすることができたのは大きな経験になったはずだ。今年度、残す大会は全日本選手権(全日本)だけとなった。「勝っても負けてもワセダらしさを全日本で出して」(松山)と語るように、最後の試合に懸ける選手の思いは強い。有終の美で締めくくることはできるか。最後の栄冠を目指し、奮闘する早大フェンサーの姿に注目だ。

(記事 小原央、写真 本野日向子)

※掲載が遅くなり、申し訳ありません


閉会式後の集合写真

 ※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

 ※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

 ※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

 ※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

総合優勝 早大

▽男子フルーレ
早大[小野真英主将(スポ4=埼玉栄)、松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)、中埜匡貴(創理3=東京・早大学院)]
 ◯45−43慶大

▽女子フルーレ
早大[遠藤里菜(スポ2=群馬・高崎商大付)、千葉朱夏(スポ2=岩手・一関第一)、登尾早奈(スポ2=愛媛・三島)、溝口礼菜(スポ2=千葉・柏陵)]
 ○45−24慶大

▽男子エペ
早大[小野真英主将(スポ4=埼玉栄)、加納虹輝(スポ3=山口・岩国工)、安雅人(スポ3=茨城・水戸一)、増田陽人(商1=岡山大安寺中教校)]
 ◯45−28慶大

▽女子エペ
早大[才藤歩夢(スポ4=埼玉栄)、澤浦美玖(スポ3=群馬・沼田女)、駒場みなみ(スポ2=富山西)、村上夏希(スポ2=三重・津東)]
 ◯45—37慶大

▽男子サーブル
早大[茂木雄大(スポ4=神奈川・法政二)、高木良輔(スポ3=埼玉・立教新座)、小山桂史(スポ2=東京・クラーク)青木貴雅(スポ1=静岡・沼津西)]
 ◯45−38慶大

▽女子サーブル
早大[佐々木陽菜(社4=東京・大原学園)、齊藤里羅子(スポ3=山形東)、佐野友香(スポ3=静岡・沼津西)、村上万里亜(スポ1=愛媛・三島)]
 ◯45−28慶大

コメント

松山恭助(スポ4=東京・東亜学園)

――完全優勝となりましたが今のお気持ちはいかがですか

素直に、男子フルーレや男子サーブルは慶大にものすごく迫られると思っていました。他の種目は僕の中では正直安心して見ていられたんですけど、自分の種目をはじめとして、サーブルだったり、大丈夫かなという不安はあったんですけど、結果的に、完全優勝できて非常に嬉しいです。

――近年、毎年早大が優勝している早慶戦ですがプレッシャーなどはありましたか

連覇していることに対して、特別な思いはなかったんですけど、男子も女子も毎年ワセダが優勝していたので、必ず2勝1敗以上の成績を出さなければいけないというところは、すごく自分の中で強く思っていました。その中で男子フルーレが初戦だったので、そこで流れが懸かっているなというプレッシャーはありました。

――松山選手にとって最後の早慶戦となりましたが、どのような思いで試合に臨みましたか

今まで以上に特別な思いがあって、最近強いチームに勝てていなかった印象が僕の中であって、早慶戦のタイトルをしっかり取って、全日本(全日本選手権)団体につなげたいという思いが人一倍強くて、それが結果にしっかり出て良かったです。

――早大を勢い付ける試合となった、初戦を振り返っていかがですか

試合展開は本当にめちゃめちゃだったっていうか。僕の理想的な展開は、自分が点数を取って勝つのではなく、みんなで5点ずつ取って、最初から最後までしっかりバトンをつなぐっていうのが、理想かなと思っていました。だけど、結局どんな勝ち方であれ、勝利を目指して戦っているので、それは達成できて嬉しいです。最後もたまたま点数をたくさん取ることができて、勝てたと思っているので。みんなの応援だったり、ベンチとか、ワセダの関係の人の力かなと。あと、ホームっていうのも僕に取ってものすごくパワーを与えてもらったので、それがこの結果につながったのではないかと思います。

――10点差で最終セットが回ってきましたが、どのような心境で試合に臨みましたか

お互いのエース以外を比較した時に、僕達が少し劣っているというのは分かっていたので、苦しい展開になるなというのは分かっていました。本当は、良い流れでうまくリードして僕に回ってくれば良いなと思ったんですけど、8割以上は苦しい展開で回ってくるなということは予想していたので、点差にはそんなに驚きはなかったです。いつもの10点差と今回の10点差で何が違ったのかというと、自分は自分が勝てるって思っていて、とにかく自分を信じていました。他の人はどう思っていたのか分からないんですけど、僕は自分の実力に疑いを持たなかったというか、必ずできると思っていて、相手にだけ集中してやれたのが結果につながったので、今後の戦い方として、非常に良いポジティブな経験ができたのかなと思います。

――次の全日本の団体戦が早大での最後の団体戦になりますが、何か一言をお願いします

最後と思うと悲しい、寂しい気持ちがあるんですけど、特別最後だからとかそういうことを考えると、かえって良くないと思っているので、とにかく楽しんで、自分達の力を出して、勝っても負けてもワセダらしさを全日本で出して、次の学年にバトンをつなげたいと思います。