四つんばいでのタスキリレーから1カ月。 11月25日に行われる全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝、宮城)では、レース中に選手が故障などで「走行不能」となった場合、本人が競技続行を希望しても審判の権限でレースを止めることが決まった。 …

 四つんばいでのタスキリレーから1カ月。

11月25日に行われる全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝、宮城)では、レース中に選手が故障などで「走行不能」となった場合、本人が競技続行を希望しても審判の権限でレースを止めることが決まった。

前日の監督会議で緊急時の対応が話し合われ、アクシデント発生時の連絡体制の見直しにも着手。コース上の監察車などに乗った審判や医師、各中継所、大会本部が同時に情報を共有できるように無線を配備。各チームには、関係者1人をフィニッシュ地点付近の監督控室に待機させるよう求めた。

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「悲劇」を繰り返さないための措置


 第一生命の山下佐知子監督は「歩けなくなったり、フラフラになったりした時は、迅速に止めるスピード感が大事。監督が伝達する時間はどうなのかなと思っていた。どの監督も選手がはいつくばってまで進む姿は見たくないと思う」と話した。

 「悲劇」を繰り返さないための措置だ。10月の予選会では岩谷産業の選手が中継所まで残り約200メートルで転倒して足を負傷し、四つんばいで進んで次走者にタスキを渡した。広瀬永和監督が棄権を訴えたにもかかわらず、審判は選手の意思を優先して判断が遅れ、運営責任が問われていた。

 この大会で車の伴走は認められておらず、コースから離れた部屋で中継を見ていた監督が異変に気付き、棄権させるよう大会本部に要請。連絡を受けたコース担当の審判が選手に伝えたところ、本人が強い競技続行の意思を示した。審判は再度、監督に確認作業を行うも、監督の棄権させる意向は変わらなかった。こうしたやりとりが行われているうちに時間が経過し、中継所まで残り15メートルの地点まで迫った選手を、審判が見送ったという経緯があった。

 選手に声をかけた審判は「本人の『絶対に行く』という思いが明確で、止めるのを躊躇(ちゅうちょ)してしまった」、「中継所まであと少しだったから、続けさせた」と説明。この大会では負傷選手に監督ら関係者が触れたり、介抱するなどした場合は棄権になるが、審判権限で選手を棄権にできる基準がなかった。

 予選会の反省を受け、改善策が示されたが、今後への課題を指摘する声もある。規定での「走行不能」とは「歩いたり、立ち止まったり、倒れた状態」を想定。だが「走行不能」の範囲は多岐にわたり、線引きがあいまいなため、審判個々の判断や資質に求められる部分が大きい。審判によっては、安全面を重視するあまり、棄権者を増やしてしまう可能性も否定できない。

タスキの重みを「軽く」してあげる方策は?

 「棄権による記録なし」はどのチームも避けたいのが本音。一連の問題について、旭化成元監督の宗茂氏が一石を投じる。「棄権した場合は区間最下位の記録に何分か足したタイムが記録となる、という規定が以前の大会でありました。これが選手を守る最善のように思います。生き残る可能性を残しておけば、早い段階で棄権を決断できる。審判も答えを出しやすいと思います」。

 企業や学校の看板を背負って走る駅伝。誰かのために頑張るから、自らを追い込み、無理をしてしまう側面もある。タスキの重みを「軽く」してあげる方策を検討してみてもいいかもしれない。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]