従来のV・プレミアリーグやV・チャレンジリーグI・IIを再編成し、新しい大会としてスタートした「V.LEAGUE」。その初代女王の座を狙う、久光製薬スプリングスの注目選手のひとりが、全日本でも活躍する新鍋理沙だ。

 昨年、全日本に2年ぶりの復帰を果たし、”守備の要”として中田久美監督からの信頼も厚い新鍋は、今年度の中田ジャパンの戦いで何を得たのか。アジア競技大会や世界選手権を経ての成長と、名門・久光に戻って臨む新リーグへの抱負を聞いた。


久光でも主力として活躍する新鍋

 photo by Horie Joe

--今年度の全日本は、世界選手権で6位と健闘しました。その前のアジア競技大会では、中国、タイ、韓国に遅れをとる4位と苦しみましたが、その大会で得たものは?

「アジア大会はいい結果が残せなくてすごく悔しかったです。自分自身も十分に貢献できたとは言えなかったと思います。試合に途中から入る場面が多かったんですが、それまであまり経験がなかったので、気持ちや体の準備をどうすればいいのか手探りなところがありました。どんな場面で出てもやるべきことはやらなくちゃいけないことを再認識しました。

 アジア大会後は、(岩坂)名奈を中心にチーム内で『テーマを持ってやろう』という目標を立てました。ポジション別に、たとえばサイドであれば『ノータッチでサーブを落とさない』『攻撃ではブロックアウトを取る』といったように、1、2個のテーマを決めて練習に取り組んだんです。具体的なイメージを持って練習できたことが、チーム力のアップにつながったんだと思います。勝つためにどうするべきか、みんなで突き詰めました」

--アジア大会での悔しい思いが、チームを進化させたわけですね。

「『このままじゃいけない』という危機感が、チームに一体感を与えてくれました。合宿でもいろんな練習パートナーの方に協力してもらって、すごくいい練習ができていましたから、世界選手権はいいイメージを持って開幕を迎えることができました」

--その世界選手権で、新鍋選手は初戦のアルゼンチン戦や、3次ラウンド進出がかかったブラジル戦など、「大事な局面」で起用されているように感じましたが。

「負けていい試合はありませんから、『大事な局面』という意識は自分の中にはありません。ライトで起用されたのは私と(長岡)望悠で、求められていることが違う。それぞれが自分の役割を果たすこと、コートに出ていない時でもチームをしっかり支えることだけを考えていました」


復帰2年目の全日本での戦いを振り返る新鍋

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--中田監督に信頼を置かれているレシーブはもちろんですが、世界選手権ではサーブやライトからの攻撃も効果的でしたね。

「サーブ練習は時間をかけてやっていました。相手にAパス(セッターを動かさないサーブレシーブ)を返されたら、特に高さのあるチームには簡単に決められてしまいます。逆に、サーブで崩した時にはスパイクのコースやタイミングが読みやすくなって、ブロックやレシーブで拾いやすくなる。コーチからも『リスクを負ってでも攻めよう』と言われていましたが、それがうまく実践できた試合はいい展開に持ち込むことができました。

 ライトからの攻撃は、相手のブロックがきっちり2枚つくことが少ないので、『1枚だったらしっかり決める』という約束事がありました。ブロックを利用されて決められることは大きなダメージになるだろうなと思い、そこを徹底して打っていました」

--セッターの田代佳奈美選手も、大会が進むにつれてライトにトスを上げる回数が増えていたように見えましたが。

「『こういうトスがほしい』というリクエストに応えてくれたので、すごく合わせやすくて迷いなく(助走に)入れました。相手のブロックのつき方にもよりますが、ストレートのラインいっぱいに打つのか、ちょっと中に入るのかといったことを、密に打ち合わせていたのもいい結果につながったんだと思います」

--大会を通して、どの試合が印象に残っていますか。

「一番悔しかったのは、フルセットで負けた1次ラウンド2戦目のオランダ戦です。第1セットも終盤までリードしながら逆転されるなど、勝てる試合を落としてしまったので。5月にネーションズリーグで対戦した時は何もできずに負けてしまったので、『今度は絶対に負けない』と対策も練っていたんですが、勝ちきれませんでした。最後の1、2点の攻防で我慢が足りませんでしたね」

--古賀紗理那選手、黒後愛選手など、サーブレシーブをこなす後輩選手たちの印象は?

「紗理那や愛は、サーブレシーブしてからでも、高い打点でブロックの上や奥を狙うことができる。それは私にはない武器で、頼もしい存在です。愛はメンタル面に関しても、初の世界選手権で堂々としていることに驚きました。私が初めてワールドカップに出た時には、緊張して周りに助けてもらってばかりでしたから。紗理那はたくさん経験を積んでいるのでわかるんですけど、愛にはすでに貫禄がありましたね(笑)」

--久光のチームメイトで、全日本のキャプテンを務めている岩坂選手をどのように支えていましたか?

「名奈は本当にチームのことをすごく考えているので、支えることができているかはわかりませんが、『何かあったら相談しよう』と話していました。それは久光でも同じです。同級生でもある私はいろんな話をしやすい存在でしょうから、そういったところで力になりたいと思っています。経験豊富な(荒木)絵里香さんもみんなを引っ張ってくれましたし、みんなでいいチームを作ろうとしていました」

--久光でも指導を受けた、中田監督の印象は?

「久美さんは、本当に選手ひとりひとりを見てくれていると思います。たとえば、試合中にいいプレーができてベンチへ戻った時に、すっとそばに来て『ナイス』と声をかけてくれたり、試合が終わった後にも『ありがとね』と言ってくれたり。そんなちょっとした言葉が選手にとってはすごく嬉しいことで、ちゃんと見てもらえていることを実感できるんです」

--ちにみに、フルセットの激闘でセルビア代表がイタリア代表を下した、世界選手権の決勝はご覧になりましたか?

「見ました。『ここで点を取れば』というところで決めきれたチームがセットを取る、すごくいい試合でしたね。両チームのスパイクはもちろんですが、粘り強くボールをつなぐ場面が多かったことも印象的でした。あれだけ背の高い選手たちがボールを落とさずに戦えるわけですから、日本の選手はそれを上回る粘りで対抗しないと勝てないと思います」

--「粘り」の他に、日本が世界に勝つために必要なことは何だと思いますか?

「チームのテーマでもあった、『サイドアウトを1回で切ること』です。極論ではありますが、サイドアウトを1回で切り続けられたら負けることはないですからね。そのためにはサーブレシーブの精度を高めて、速くテンポのいい攻撃につなげる必要があります。リーグでも、技術を高めていくことを意識して戦っていきたいです」

--リーグの開幕戦に勝利し、ここまで2勝1敗。目標は新生「V.LEAGUE」の初代女王になることだと思いますが、それに向けた意気込みを聞かせてください。

「(V・プレミアリーグを制した)昨シーズンの戦いについて、『すごく強かったね』と言ってもらえることもありますが、チームには『このままで大丈夫なのか』という危機感もありました。ファイナル6や皇后杯で落としてしまった試合もありましたからね。今シーズンはアメリカ代表としてロンドン五輪、リオ五輪でメダルを獲得した、ミドルブロッカーの(フォルケ・)アキンラデウォも加入しましたから、より強いチームにならないといけないと思っています。

 世界選手権が終わってチームに帰ってくると、練習のやり方がガラッと変わっていて、それを若手の選手も必死に取り組んでいるので雰囲気はすごくいいです。今後は試合をしながらよりチーム力を高めていき、優勝を手にできるように頑張りたいです」