「パ・リーグの小柄なホームランバッター」として往年の野球ファンが思い出すのは、かつて南海ホークスやオリックスなどで活…
「パ・リーグの小柄なホームランバッター」として往年の野球ファンが思い出すのは、かつて南海ホークスやオリックスなどで活躍した門田博光だろう。身長170センチの体で球界3位となる通算567本ものアーチを描き、40歳で3回目の本塁打王、2回目の打点王と2冠を達成した「不惑の大砲」だ。
その門田の再来と言われ、2015年のドラフト指名1位でオリックスに入団したのが、身長173センチの吉田正尚だった。1年目からケガに悩まされて期待どおりの活躍ができずにいたが、今シーズンは143試合にフル出場。6月からは四番に定着して打率.321、26本塁打、86打点というキャリアハイの成績を残した。
大きな成長を遂げた左の大砲に、今シーズンの自身の変化、代名詞となっている”フルスイング”などについて聞いた。

オリックスの主砲として活躍する吉田
──シーズンを終えて、手応えはいかがですか?
「最低限の目標だった『規定打席の到達』をクリアして143試合にフル出場できたことは、よかった、というよりもホッとしています」
──昨シーズンまではケガに苦しんできましたが、何か変化があったのでしょうか。
「調整法ですかね。ホーム球場ではウェイトトレーニングなどを行なって、ビジターで試合があるときは休養とケアに専念し、ゲームに集中するというスタイルにしたんです。今思えば、以前は”なんとなく”で調整していました。今年から自分でルール作りをしたことが結果につながったんだと思います」
──そのルールのほかに、シーズンを通して好調を維持できた理由はありますか?
「藤井(康雄)打撃コーチ(現二軍打撃コーチ)との出会いは大きかったです。同じ左の長距離打者でしたから気持ちの面でもいろいろ相談できましたし、藤井コーチ自身が勉強されている”4スタンス理論(※)”も学ぶことができました。体の仕組みの解説は新鮮でしたね」
(※)人間の身体特性には4つのタイプがあるという理論。自分のタイプに合った体の動かし方をすることで、パフォーマンスの効率が上がり、ケガのリスクを低減させることにもつながるとされている
──食事面で注意していることは?
「好きな食べ物は、プロ野球選手の王道である焼肉です。ニンニクが好きなのでパンチの効いたラーメンもいいですね。でも、シーズン中に太ってしまうといけないので、筋肉は落とさずに体重を維持するよう気をつけています。とくにオフシーズンは生活リズムが変わりますし、寮生活ではないですから、自分で栄養のバランスを考えています」
──8月15日の西武のホームで行なわれた試合で打った、バットを折りながらのホームランには度肝を抜かれました。
「後にも先にも、2度と打てないホームランでした。打った瞬間に折れたバットが飛んでいって、『あれっ』とは思いましたけど、ヘッドの返りは悪くなかったし、ボールがうまく引っかかった感触があったんです。それでも『バットが折れたし、ホームランではないだろう』と全力疾走していたら、スタンドに入っていました(笑)」
──豪快なスイングは、誰かを参考にしたのですか?
「いえ、子供の時もプロ野球選手のスイングをマネするといったことはなかったですね。球場に2度観戦に行ったこともあるんですが。お弁当を食べながら『ホームランの打球はすごいなぁ』と思ったくらいです(笑)。僕は野球をプレーするのが好きな少年でした」
──野球を始めたのは何歳ですか?
「3つ上の兄が地元の少年野球チームに所属していたのと、両親から勧められたことがきっかけで6歳から始めました」
──それでは、今のスイングはお父様から教わったのでしょうか。
「父からは、『強く振れ』それ以外は、何も言われたことはありませんでした。バッティングセンターに連れていってくれたりして、ずっと、僕の練習に付き合ってくれました。それでもスイングは自己流で作り上げていきました」
──中学卒業後は敦賀気比高校(福井)に進み、1年生から四番を任されるなど甲子園に2度出場。青山学院大学でも4年間チームの主軸を担いましたが、プロに入って違いを感じることはありましたか?
「まず、試合数が圧倒的に違いますよね。大学のリーグ戦は年間30試合程度ですから。また、プロは投手が分業体制なので、ワンポイントリリーフの投手などにも対応する必要がありました。ストライクゾーンについては、大学でちょっと狭くなり、プロに入って『また少し狭くなったなぁ』ぐらいにしか思わなかったので、苦労した経験はないです」
──同じパ・リーグの左バッターで意識する選手は?
「同じ外野手として競い合っていきたいのは、ソフトバンクの柳田(悠岐)選手、西武の秋山(翔吾)選手、そして同学年の日本ハムの近ちゃん(近藤健介)ですかね。自分もその高いレベルの選手に仲間入りして、切磋琢磨していきたいと思っています」
──セ・リーグでインパクトがあった選手はいますか?
「やはり、巨人の岡本(和真)選手でしょう! 1軍でのプレーは実質1年目なのに、3割30本100打点の成績を残せたことはまぐれじゃない。相当な努力を積み重ねてきたことを感じます。もうひとり、DeNAの(ネフタリ・)ソト選手も印象に残っています。オープン戦でバッティングを見たときには、『ボールに力を伝えることがうまいバッターだな』と思っていました。シーズンが終わってみたらホームラン王ですからね。恐れ入りました」
──吉田選手も今シーズン途中から四番を任されましたが、意識に変化はありましたか?
「高校や大学、全日本選抜でも四番を打たせてもらいましたが、僕の四番のイメージ像は、岡本選手や西武の山川(穂高)選手のような右打者なんです。福良(淳一)前監督からも、状況に応じて反対方向に打ったり、引っ張って進塁打を打ったり、打率も要求される三番的な役割を期待されているように感じました。だから、四番に入ってからも”三番バッターの延長線”という気持ちで打席に入っています。その意識があれば、どの打順に入っても適応できると考えています」
──あらためて、吉田正尚選手にとってフルスイングとは?
「僕のフルスイングを誤解している方もいらっしゃると思うんですよね。どんなボールがきてもブンブン振り回すイメージが定着しているんじゃないかと。全身を使ってバットを振り、ボールに強く当てることは意識していますが、しっかりコースを見極めて打っています。僕は空振りの三振が嫌いなので」
──背番号34に関してはこだわりがあるのでしょうか。
「入団時には9番を薦められました。ひと桁の番号は光栄だったのですが、その時に閃いたのが34番だったんです。日本では投手のイメージが強い番号ですが、メジャーリーグではワシントン・ナショナルズのブライス・ハーパーがいますね。そして、通算本塁打541本塁打を放ち、チームを2度の世界チャンピオンに導いた、元ボストン・レッドソックスのデビット・オルティス選手の存在も思い出しました。同じ左打ちで好きな選手でしたし、当時34は空き番号だったので付けさせてもらっています。ですから、ハーパー選手やオルティス選手のような、打者としてインパクトのある活躍がしたいです」
──最後に、来シーズンの目標を言葉で現してください。
「ずばり、『タイトル争い』です。出塁率などを含め、打撃に関するすべての部門でタイトルに絡みたいですね。あ、三振王は別ですが(笑)」