11月10日まで韓国・江陵で開催されていたパシフィック・アジア・カーリング選手権(以下、PACC)。女子日本代表として4大会連続出場となるロコ・ソラーレは、決勝で韓国代表に8-12で敗れ、準優勝で大会を終えた。 ラウンドロビン(予選リ…

 11月10日まで韓国・江陵で開催されていたパシフィック・アジア・カーリング選手権(以下、PACC)。女子日本代表として4大会連続出場となるロコ・ソラーレは、決勝で韓国代表に8-12で敗れ、準優勝で大会を終えた。

 ラウンドロビン(予選リーグ)から準決勝までの7試合は、ゲーム後半にリードを許すことのない磐石の戦いを見せたが、決勝では「若くて、勢いのあるチーム」(吉田夕梨花)という韓国代表のチームKIMからの追い上げを受け、押し切られる形で3年ぶりのアジア王者にはなれなかった。



PACCでは準優勝に終わったロコ・ソラーレ

 このチームKIMは、8月の韓国国内のトライアルおいて、平昌五輪で話題になった「メガネ先輩」ことキム・ウンジョン率いる五輪銀メダルチームを破って、今大会に駒を進めてきた。

 なかでも際立っていたのは、19歳のスキップ、キム・ミンジだ。ゲーム終盤のプレッシャーのかかる場面でも、ドローショットを幾度も決めるなど、勝負強さが光った。今大会は男子選手も含めて多くの選手が「これまでのPACCと比べても、ここまで滑るアイスは珍しい」と、”滑るアイス”への対応を勝負のポイントに挙げていたが、彼女はそのアイスにうまく対応していた印象だ。

 滑るアイスについては、ロコ・ソラーレのスキップ・藤澤五月も留意していたが、最後までアジャストできなかったことが明暗を分けた。藤澤が語る。

「(滑るアイスのことは)わかっていたつもりなんですけど、やはりもうちょっと慎重に投げて、うまくスイーパーを使うべきでした。相手(の韓国)は、アイスに合わせた投げ方やウエイトコントロールを見せて、試合のなかでも『成長しているな』と思った。

 彼女たちは、教わったことをすぐにアイスで表現できる強さがある。今回は(韓国チームに)成長を見せつけられたが、私たちもそれ以上に成長しなければいけない」

 今季、ロコ・ソラーレは、強化のキーワードのひとつに”準備”を挙げている。「練習、休息、食事……全部です」と言うのは、吉田夕だ。

 たとえば、食事では「私たちのチカラめしは、白米です」という彼女たちは、今大会でも炊飯器と大量の日本米を持ち込んで、自炊生活でコンディションを整えた。試合前にも「約3時間前にビッグミールを摂って、(その後も)エネルギーを切らさないように、捕食の準備もする」そうだ。

 結果は準優勝に終わったものの、そうした”準備”は一定の成果を挙げた。加えて、得るものも決して少なくなかった。選手それぞれが、収穫と課題を口にする。

「今までやってきたことと、新しくトライしていることがつながってきた。今季は(挑戦者として)向かってくるチームが増えてくるが、そうやって挑んでくる相手に対してどう戦うかを考えたい」(吉田夕)

「すごく成長を感じられた大会。勝ち切れない部分は、メンタルなのか、何なのか。そこはまた、みんなで考えて探して、これから、プレッシャーのかかる大会や試合でも勝てる、強いチームにならなくてはいけない」(鈴木夕湖)

「トップチームになるにつれて、どういうふうにモチベーションを維持するのか。何に向かって試合をするのか(考えないといけない)。そこで、心の準備だったり、身体の準備だったり、氷に上がる前の準備に、今季は長い時間を費やしてきた。

 そういう意味では(今大会では)何が足りなかったのか。(それを見極めるうえでも)日本選手権だったり、世界選手権だったり、(今後の)大きなイベントの前に1回、負けを経験できてよかった」(吉田知那美)

 チームは今後、日本で調整をしたあと、12月上旬には北米に飛んで、米ネブラスカ州オマハで開催されるW杯のセカンドレグに出場する。そしてそのまま、カナダ東端のニューファンドランド・ラブラドール州コンセプション・ベイ・サウスで行なわれる、ワールドツアー最高峰タイトルのひとつ『BOOST NATIONAL』に挑戦する予定だ。

 それらの大きな試合で結果を残せば、W杯では来年3月に中国・北京で行なわれるグランドファイナルが視野に入り、ワールドツアーにおいては来年もグランドスラムタイトルに継続して出場できる見通しだ。

 さらに、2月の日本選手権(札幌)を制すれば、チームとしては3年ぶりとなる世界選手権(3月/デンマーク・シルケボー)の出場権を獲得する。

「世界一になるチャンスは増えている。コンスタントに自分たちのプレーができるように、しっかり準備していきたい」(吉田知)

 敗戦を糧に、悔しさをバネに。あくまでも貪欲で、どこまでもポジティブな彼女たちの”天下取り”はここからが本番だ。