10日午後、鳥取県で開催中のアジア選手権倉吉2018でリード男女決勝が行われ、男子は藤井快が優勝、西田秀聖が2位、高田知尭が3位に入り日本勢が表彰台を独占。女子でも2位に野口啓代、3位に小武芽生が入り、合計7名もの日本人選手がメダル獲得を果たした。

 8名のファイナリストのうち、6名が日本人選手となった男子決勝。赤と黒のホールドで統一された最終ラウンドは、終盤の高度32付近が鬼門となった。最初にこの難関へ挑んだのが一番手で登場した地元出身の高田。今大会一の声援を後押しに、序盤のランジ、中盤の強傾斜を切り抜ける。しかし徐々に体力を奪われると、3つ続く三角形のハリボテの2つ目に差し掛かったところで力尽きてしまった。

 後続の選手たちも、なかなかこの高度を越えられない。3番手の西田、5番手の藤井がかろうじてこの記録に並び、ラスト2人を迎えた。7番手に登場したのが、予選2位の楢崎明智。昨日ボルダリングを制した19歳は、長身のリーチを生かして他の選手がランジを選択したポイントも片手で攻略するなど会場を沸かせる。しかし強傾斜を横移動する際に全身を支えていた右指がポケットから外れてしまい、28+でフォールとなった。最後に登場した予選1位の樋口も高度27を掴み切れずにフォールし、男子決勝は完登者0に終わる。この結果、32+で高田、西田、藤井の3人が並んだが、前ラウンド成績上位の藤井が優勝、西田が2位、高田が3位に。藤井は昨年に続く大会2連覇となった。

大会2連覇を決めた藤井。

 インターバルを挟んで行われた女子決勝には、野中生萌が右肩の負傷を考慮して欠場となり、4名の日本人選手が出場した。日本人先頭、2番手で登場した栗田湖有は、粘り強い登りで1番手サ・ソル(韓国)の25+を越える27+をマークすると、4番手に登場した同学年16歳の平野夏海も落ち着いた登りで傾斜の変わる終盤に初めて到達し、28+を記録する。その後、5番手の小武が31まで最高到達高度を更新し、6番手の野口も負けじと34+まで記録を引き上げた。

 最終7番手に登場したのが、2014年の世界王者キム・ジャイン(韓国)。30歳を迎えた今年も力は衰えず、10月のW杯呉江大会では優勝し2018シーズンの年間3位に輝いたばかり。世界に誇るアジアのトップクライマーは、出だしから洗練された動きで進んでいくと、S字状に取り付けられたルートを終盤まで滑らかに攻略していく。そしてTOPにも難なく到達したキムは決勝唯一の完登者となって文句なしの優勝。予選からの4ルートすべてをコンプリートして、観客からの大声援に笑顔で応えた。

 昨日のボルダリングに続いて7名の日本人選手を表彰台に送り込み、改めてリードでも高い実力を示した日本代表。16歳の西田、平野、栗田の健闘も光り、来年以降の国際大会がますます楽しみになる結果となった。

余裕のあるクライミングで完登しガッツポーズするキム・ジャイン。

女子表彰台=(左から)野口啓代、キム・ジャイン、小武芽生

 

藤井快コメント
「2連覇というのは素直にうれしく思います。10月は休みを入れてアジア選手権に照準を合わせてきましたが、それはボルダリングが中心だったので、まさかリード単種目で勝てるとは思いませんでした。ただ内容的にはもっと頑張らないといけません。今回の課題のタイプは楢崎選手や樋口選手の方が上手く対応できると思っていたので、棚ぼた的な感じです。まだまだ持久力、実力は足りていないと思うし、強化していかないといけないと考えています」


高田知尭コメント
「今回の成績は運が良かったんだと思います。やはりアジアの大会ということで難易度は高かったです。いつ滑ってもおかしくないような箇所が多くありましたし、ランジの部分は両手両足が完全に壁から離れてしまうので気持ち悪さを感じますね。声援に関しては感謝しかありません。最後の2、3手はほぼ体は落ちている状態で、力を振り絞れたのは皆さんの応援のおかげだと思っています。まだ明日のコンバインドに出れる可能性があるので、気持ちは切らさずに行こうと思います」


キム・ジャイン コメント
「緊張していましたが、できるだけ楽しむように努めました。オブザベーションの時にはパワーが必要なルートだと感じましたが、思ったより難しくはありませんでした。観客の方が作り出してくれたエキサイティングな環境の中で完登することができ、すごく嬉しいです」


野口啓代コメント
「(キム・ジャインは)圧倒的に実力のある選手と分かっていて、決勝ルートは完登を狙える内容だと感じていたので、完登してタイム差に持ち込みたいと思っていました。余力は残っていましたが、最後のムーブで体が少し回転してしまった。タイム的には勝てていたはずなので、勝負がかかる場面で登りきれなかったです。リードは順位の入れ替わりがほとんどなくて、持久力、技術面も含めて実力をつけないと優勝できない。来シーズンに向けてもっとトレーニングをしていかないといけないですね」


小武芽生コメント
「オブザベの時点では難しそうだと思ってたんですけど、意外と下部は距離も近く登りやすくて、ゆとりを持って最終面まで行くことができました。でも悪いところでクリップミスしたことで崩されてしまい、頑張ってムーブを起こそうと足を入れ替えた際に保持が持たなくなって手が外れてしまいました。『これは完登いけるな』と思っていただけに悔しいですね。目の前の一手に集中しなくてはいけないのに、一瞬でも邪念が生じてしまって甘かったなと思います」

<男子決勝>

1位:藤井 快(25)/32+
2位:西田 秀聖(16)/32+
3位:高田 知尭(23)/32+
4位:パン・ユーフェイ(18/中国)/31
5位:緒方 良行(20)/29+
6位:楢崎 明智(19)/28+
7位:樋口 純裕(26)/26+
8位:チュー・ハイビン(26/中国)/17+

<女子決勝>

1位:キム・ジャイン(30/韓国)/TOP
2位:野口 啓代(29)/34+
3位:小武 芽生(21)/31
4位:平野 夏海(16)/28+
5位:栗田 湖有(16)/27+
6位:サ・ソル(24/韓国)/25+
7位:リン・シウ・ジュ(25/台湾)/20+
8位:野中 生萌(21)/棄権

※左から氏名、年齢、所属国、決勝成績

CREDITS

取材・文

編集部 /

写真

窪田亮