大阪・ITC靱テニスセンターで開催されている「三菱 全日本テニス選手権」は、11月2日に第7日を迎えた。男子シングルスは準々決勝4試合が行なわれ、第1シードの伊藤竜馬、第2シードの徳田廉大らは順当にストレート勝ちを収めたが、第4シードの清水…

大阪・ITC靱テニスセンターで開催されている「三菱 全日本テニス選手権」は、11月2日に第7日を迎えた。

男子シングルスは準々決勝4試合が行なわれ、第1シードの伊藤竜馬、第2シードの徳田廉大らは順当にストレート勝ちを収めたが、第4シードの清水悠太は関口周一に0-6、0-6で敗退。昨年ベスト4の上杉海斗は、慶應義塾大学の後輩でもある羽澤慎治に第1セットを奪われるも、第2セット以降は「最近自信がついてきた」というストロークで優勢に立ち5-7、6-2、6-2の逆転勝利をつかんだ。この結果、男子準決勝は伊藤対関口、徳田対上杉となる。

「厳しいと思うよ」

昨年末に入籍した伴侶に、関口はそう漏らしていたという。対戦相手は第4シードで、19歳の清水悠太。プロ1年目の今季、既にフューチャーズ3大会で優勝している成長株だ。

対する関口は昨年末に負ったケガの影響等もあり、今季、特に序盤はフューチャーズでも初戦敗退が続く。

「正直、今年の自分のランキングや調子を見て、厳しいなと思っていた」

そんな思いが、最も親しい人への弱気とも取れる発言の背景にあった。

だが同時に関口は、今大会のドローが決まった時からこの一戦を想定し、来るべき対戦に備え清水のプレーをチェックしていたとも言う。その上で自分が取るべき戦術を、そして「敗戦も含めた、全てを受け入れる覚悟」も抱き、彼はコートに向かっていた。

「行ける」との予兆は、最初のポイントで早くもつかんだという。清水が得意とするバックのカウンターを封じるため、あえて相手を動かさない策に出た。試合開始と同時に手にしたその作戦奏功への予感は、第1ゲームをブレークした時点で、早くも手応えへと変わる。実際には、スコアほどに一方的な内容だったわけではない。だが、似たような展開を好む者同士の対戦で、全てにおいて関口が少しずつ上回った。

加えてこの日の関口は、どんなにリードを広げようと激しく吠えて己を鼓舞し、気を緩める気配すら見せない。主導権を掌握した関口が、怒涛の12ゲーム連取で、3年連続となるベスト4の舞台へ駆け込んだ。

全日本のタイトルは関口にとり、どうしても取りたい特別な肩書。故に過去の大会では、過剰な思い入れが緊張を呼び込みもした。だが今は「負ける時は負けるでしょ......という、変な割り切りがある」と言う。

プロ転向9年目の27歳。「こんな気持ちで全日本を戦うのは初めて」という諦念の心持ちで、過去2度跳ね返された壁を破りにいく。(リポート=内田暁 ©スマッシュ)

※写真は大会の様子

(©スマッシュ)