大阪・ITC靱テニスセンターで開催されている「三菱 全日本テニス選手権」の第6日。男子シングルスは3回戦の残り4試合が行なわれた。ベテランの仁木拓人は、第5シードの今井慎太郎相手にフルセットながら最終セットは1ゲームも与えぬ快勝。大学1年生…

大阪・ITC靱テニスセンターで開催されている「三菱 全日本テニス選手権」の第6日。男子シングルスは3回戦の残り4試合が行なわれた。ベテランの仁木拓人は、第5シードの今井慎太郎相手にフルセットながら最終セットは1ゲームも与えぬ快勝。大学1年生の羽澤慎治は、第3シードの越智真を6-3、6-3で破り高い地力を示した。また、第2シードの徳田廉大、第7シードの上杉海斗はそれぞれ、シード順を守り準々決勝へと歩みを進めている。

シード順だけを見れば、上位選手を破る殊勲の星。だが羽澤の表情に、さほどの歓喜の色はない。

「今日はリラックスすることを心掛けた。サービスが好調で、そこから良い流れに持ち込めた。次につながる勝利かと思います」

そう語る落ち着き払った口調にも、ここはまだ通過点だという高い目的意識がにじみ出た。羽澤の視線が上に向けられているのは、清水悠太ら同期の存在が大きく影響しているだろう。ジュニア時代は同じ拠点で切磋琢磨した仲だが、清水は高校卒業と同時にプロの道を歩みだす。そしてわずか半年の間に、フューチャーズ3大会で優勝しランキングも300位台に。

「正直、先を越されているという思いはある」

ことさら力むふうもなく、羽澤は胸中を言葉にした。羽澤本人も昨年は、プロ転向か否か迷いもした。ただ、ジュニア最後の年に自身に課した「グランドスラムJr.でべスト8以上」というプロへのノルマをクリアできなかったという悔いがある。周囲からすれば十分とも思える実積を残しながらも、その約束を反故にはできないと進学を選んだあたりは、どこか昔気質な雰囲気漂う彼らしい。それだけに、大学に進み成長した自分の力をアピールしたいとの想いは強い。

「将来的には、グランドスラムを目指している」という羽澤は、いずれはプロとの明確な青写真をも抱いている。「そのための一つの通過点」と位置付ける全日本で、目指すはもちろん頂点だ。(リポート=内田暁 ©スマッシュ)

※写真は大会の様子

(©スマッシュ)