全日本選手権出場枠をかけて、熾烈な争いを見せた東日本選手権。僅差のショートプログラム(SP)を受け、全てはフリースケーティング(FS)の結果にかかった大会最終日。会場は異様な緊張感で包まれていた。早大からはSPに引き続き、男子に石塚玲雄(…

 全日本選手権出場枠をかけて、熾烈な争いを見せた東日本選手権。僅差のショートプログラム(SP)を受け、全てはフリースケーティング(FS)の結果にかかった大会最終日。会場は異様な緊張感で包まれていた。早大からはSPに引き続き、男子に石塚玲雄(スポ1=東京・駒場学園)、女子に永井優香(社2=東京・駒場学園)が出場。石塚は8位でシニアの全日本選手権初出場、永井は3位で5年連続全日本選手権出場を決めた。

 男子8位でシニアの全日本選手権初出場を決めた石塚玲雄(スポ1=東京・駒場学園)。「東日本選手権は通過点」と、全日本選手権出場へ強い想いを胸に臨んだFS。演技前の6分間練習では緊張から少し硬さが見られる。名前をコールされてから位置につくまでもいつもより表情が硬い。しかし曲が流れ始めると音楽と溶け込み、印象的な振り付けから一気に会場をその世界観へ引き込んだ。 黒を基調とし右手の赤が目を引く衣装は、指先の動きまではっきりと強調し、注目してほしいと語った振り付けを一層美しく際立たせた。陸上練習から意識したというキレのある表現で観客を魅了した。 ジャンプでは、冒頭のトリプルルッツやコンビネーションジャンプで若干の回転不足や手をつく場面が見られたが、試合後半でサルコーやトーループをしっかり決め、ジャンプ全体として大きなミスはなく、好印象でまとめ上げる。「序盤こそ少し硬くなってしまったんですけど、後半は本当に楽しく滑ることができました」と語ったように、後半のステップでは持ち前の笑顔が光り、リンクを味方につけた内容の濃い4分間で今季最高得点をマークし全日本選手権出場を決めた。 演技後のインタビューでは「これからも楽しんでスケートをして、楽しんで技を磨いていくというのは変わらない。…自分は伸びしろがある選手だと自分でも思っているので、これから日々成長できるようにがんばりたいです」と笑顔を称えながら今後に向けて意気込みを語った。試合を重ねるごとに着実に成長した姿を見せる石塚。全日本でさらに成長した姿を見せてくれるだろう。


印象的な振り付けで魅せる石塚

(記事 尾崎彩、写真 糸賀日向子)

 早大のエースが今年も全日本への切符を勝ち取った--。 東日本から全日本への出場枠がわずか3という厳しい条件のシニア女子では、FSでも白熱の戦いが繰り広げられた。5人がSPを僅差で折り返した最終グループ。直前の6分間練習から会場全体が熱気と緊張感に包まれる。それでもこれまで幾度となく大舞台での経験を積んできた永井は「完全に緊張のない状態で滑ることはできなかったですけど、そのおかげで緊張を良い方向に変えられた」と冒頭から堂々たる演技を見せていく。自身の代名詞であるトリプルルッツからの連続ジャンプを成功させると、続々とジャンプを着氷していく。ステップシークエンスでもしなやかな動きで演じていき、オールレベル4を獲得した美しいスピンでもプログラムを彩った。最後のサルコーが1回転となるなど伸びしろは残したが、「今季の中で一番まとまった演技ができた」と振り返る優美な『シンデレラ』で今季最高得点を叩き出し、FSでは全体1位となった。 「最後のサルコー以外は回転に持っていくことができたので次への自信になったかなという風に思います」と確かな収穫を得た今大会。表彰台に上り、5年連続となる全日本選手権出場を決めた。これから「良い試合経験を積むためにそこも精一杯頑張りたい」と語る東日本学生選手権などを経て全日本に臨む。2ヶ月後に待ち受ける大一番では銀盤の上でさらに洗練された演技を披露してくれることだろう。


観客の声援に応える永井

(記事 糸賀日向子、写真 尾崎彩)


表彰式での永井

(写真 尾崎彩)

結果

▽男子

石塚玲雄 8位 160.92点(FS 106.39点)

▽女子

永井優香 3位 146.81点(FS 99.50点)

コメント

石塚玲雄(スポ1=東京・駒場学園)

――今日の演技を振り返っていかがですか

6分間練習の時から少し硬い感じがしたので、それをどうにかしなきゃなと思って試合に臨んで、緊張もあって思うような演技ができなかった部分もあるんですけど、今までの練習はちゃんとやってきたのでそれを信じて滑ったって感じです。

――緊張があったということですが昨日と比べてどうでしたか。

昨日は滑走順が早かったので気楽な部分がまだあったんですけど、今日は一応後半グループということで、少し重圧を感じながらではありましたが練習ちゃんとやってきたから大丈夫という気持ちを持って滑りました。

――楽しんで滑ることはできましたか。

そうですね。序盤こそ少し硬くなってしまったんですけど、後半は本当に楽しく滑ることができました。

――やることはやってきたのでそれをやるだけと昨日何度もおっしゃっていたのですがどうでしたか。

やることをやるだけっていうのは普段から練習をちゃんとやってきたのでそれを出すだけって意味で言ってたんですけど、ルッツとフリップは正直全然ダメで思うようなジャンプは決められなかったんですけど、そういう時に、その基礎となっているサルコーとかトーループをしっかり今回の試合でも後半で決めれたので最低限のことはできたかなという感じです。

――今日は東京選手権より点数が出ていたのですがそこについてはどうでしたか。

そうですね。ジャッジの方も新採点方針になってから全体的に見栄えがいいほど評価してくれる採点になっていると思うので、そういった意味でもジャンプは3回転が2回転になってしまったり、手をついてしまったりしたんですけど、こけるってことがなかったのでそれが良かったのかなと思います。

――ジャンプの完成度が高くなっていると思ったのですがそこについてはどうですか。

そうですね。今まではサルコーとかトーループをポロポロ試合でミスすることが多かったのですが最近の試合ではそこは決まって当たり前と思えるくらいのレベルになっているのでそこが大きいと思います。

――今日のジャンプで一番良かったのはなんですか。

サルコーです。好きなジャンプなんです。

――今日の演技で一番良かった点は何ですか。

後半になっても落ち着きを保ったまま楽しく演技できたことです。

――振り付けに注目してほしいということだったのですが、表現面で心がけたことは何ですか。

キレです。それは普段の陸上練習から意識していることで、今回は体力を温存するために動きは小さくなってしまったんですけど、これからキレをもっと出していきたいです。

――スピンはどのように技を磨いていらっしゃるのですか。

小さい頃からスピンが好きで、回る感覚が好きなので、磨いているというよりは、回る感覚を楽しんで、もっといろんなことやってみようって向上心を持って取り組んでいることがつながっているのだと思います。

――今後に向けて一言お願いします。

最終グループの人たちが終わるまで、自分が全日本に行けるかどうかわからないんですけど、行けたとしても行けなかったとしても、これからも楽しんでスケートをして、楽しんで技を磨いていくというのは変わらないと思っていて、自分は伸びしろがある選手だと自分でも思っているので、これから日々成長できるようにがんばりたいです。

永井優香(社2=東京・駒場学園)

――全日本選手権出場決定おめでとうございます

ありがとうございます。

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

色んな気持ちがありすぎて何から言えば良いのか分からないんですけど、とりあえず大事な場面で今季の中で一番まとまった演技ができたので良かったなと思います。

――東京選手権の時は悔しさを口にしていましたが、その時と比べてきょうはいかがでしたか

試合までの練習が今回の方がしっかりできていたので、自信を持って楽しんですべれたかなと思います。

――きょうは緊張はありましたか

朝の公式練習から結構ジャンプの調子が良くて、きょう滑るの楽しみと思っていたんですけど、実際6分間で滑り始めたらやっぱり緊張もあったので、完全に緊張のない状態で滑ることはできなかったんですけど、そのおかげで緊張を良い方向に変えられたのかなという風に思います。

――ジャンプを振り返っていかがでしたか

堪えるジャンプがちょっと多くなってしまったので、そこは改善点だと思うんですけど、とりあえず最後のサルコー以外は回転に持っていくことができたので次への自信になったかなという風に思います。

――表現面はいかがでしたか

きょうはやっぱりジャンプが決まらないと点が伸びないのでそっちには気を取られてしまったんですけど、表情はいつもより柔らかく滑れたんじゃないかなと思います。

――3枠という点でプレッシャーはありましたか

こっちに来てからは枠のことはSPが終わってからもあまり考えないで済んだんですけど、ブロックの時とか練習の時とかは結構自分の中でプレッシャーになっていてやっぱり全日本に行けるか行けないかというのは自分の中で大きな差だと思っていたので、プレッシャーにはなっていたかなという風に思います。

――それでは最後に次戦の東インカレに向けての意気込みをお願いします

今回の東日本に向けてしか方面を向けていなかったのでちょっと今言われてみてあっ、東インカレあるんだって感じなんですけど、ほんの少し休んでから全日本に向けての良い試合経験を積むためにそこも精一杯頑張りたいなという風に思います。