勝てば優勝に王手が懸かる関東大学リーグ(リーグ戦)第18節は、3試合連続で無失点の東洋大との対戦。勝ち点3を手に入れ次へとつなげたい一戦だったが、前半にまさかの6失点を許してしまう。後半はゲームを立て直し、56分にMF相馬勇紀(スポ4=三…

 勝てば優勝に王手が懸かる関東大学リーグ(リーグ戦)第18節は、3試合連続で無失点の東洋大との対戦。勝ち点3を手に入れ次へとつなげたい一戦だったが、前半にまさかの6失点を許してしまう。後半はゲームを立て直し、56分にMF相馬勇紀(スポ4=三菱養和SCユース)が1点を取り返すものの、その後スコアは動かず1-6で試合終了。前半のうちに流れを改善できず、課題と共に悔しさが残る試合となった。

 試合開始直後は好調にも見えた。8分には相馬が左サイドを駆け上がり相手を置き去りに。その後ボールを受けたMF岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)がシュートを打つもボールは枠外へと流れ最初の決定機は決められず。このまま早大のチャンスが続くかと思われたが、その期待は想像以上に早く崩れてしまった。10分にFW小林拓夢に裏を取られ、左サイドから抜け出されて冷静にゴールへ流し込まれてしまう。裏を取られる場面が続き、15分にも同じく小林拓にゴールネットを揺らされる。東洋大の速いパス回しとオフ・ザ・ボールの動きについていけず、フリーでプレーをさせてしまい気が付けばピンチの状況に。ボールを奪っても前線で収められず守備の時間帯が長く続く。18分にも追加点を献上し早大には負のオーラが漂っているようにも見えた。27、32分にもそれぞれ小林拓に完璧なかたちで決められ、1人の選手に4得点を与えてしまった。『自分たちのミスによる失点』とは言えない、確実に弱みを突かれたプレーの連続に早大は焦りを隠せない。5失点後にはグラウンド上で集まり失点について選手同士で確認し合っていた。まずは1点から取り返そうと39分にDF牧野潤(スポ3=JFAアカデミー福島)による強烈なミドルシュートで早大に得点の可能性を匂わせたが、わずかにゴール上を通過していった。45+2分にはまさかの6点目を与えてしまい、優勝争いの中心にいるチームとは思えない状況で前半を終えた。


負の連鎖を断ち切ることができなかった

 後半のピッチに戻ってきた早大は明らかに前半とは違っていた。消極的なパス回しから一転、ゴールを目指す縦への動きを意識したプレーが多く見られるようになった。そして56分。岡田が勢いよく振り抜いたシュートの跳ね返りを相馬がフリーの状態で落ち着いてゴール左隅に流し込み、待望の得点を手に入れた。このまま点を取り返し始めるかとも思わせる1点だったが、そう甘くはない。東洋大は小林拓を中心に早大DF陣の裏を狙い、さらに得点を重ねようと動く。64分にはGK小島亨介(スポ4=名古屋グランパスU18)が一対一の場面で完璧なポジショニングでシュートを枠外へ外させ、ピンチを免れた。その後、早大がボールを持つ時間が増えたが、後ろに引いて守っている東洋大に対してなかなかチャンスを作り出せない。前線の選手に対してスピードを生かすパスをスペースに出せず、攻守の切り替えが遅くなってしまい、決定的な場面は得点以降つくれずにいた。その反面、東洋大の勢いはなかなか止まらない。積極的に裏を狙ったロングボールを蹴ってくるため、DF大桃海斗(スポ3=新潟・帝京長岡)やDF杉山耕二(スポ2=三菱養和SCユース)らを中心に必死に跳ね返した。すると87分、MF田中雄大(スポ1=神奈川・桐光学園)がペナルティーエリア付近までドリブルで相手を突破し相馬へとパスを出すが、惜しくも得点とはならず。これを皮切りに後半終了間際に怒涛(どとう)の攻撃ラッシュが始まった。しかし、相馬が何度も左サイドから仕掛けにいくが最終的にシュートは打たせてもらえない。このラッシュも実ることなく、そのまま試合終了のホイッスルがピッチに鳴り響いた。


反撃は相馬の2試合連続弾による1点にとどまった

 「起こりうるリスクに対しての抑止力が生まれた」と外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)が試合後に語ったように、今回の敗戦は収穫が全くなかったわけではない。首位を走るものとしてプレーを分析され、自分たちの弱みを狙われるのは想定内のことである。それに対してどう戦うか、今一度振り返るきっかけを与える試合となった。「(気持ちの)緩みじゃなくて、根本的に相手に弱点を突かれての失点」と岡田も冷静に試合を分析していた。相手に気持ちで負けていたわけでは決してない。しかし、弱点を突かれても勝利をものにできるチームこそが真の強さを持っている。次節の対戦相手は現在2位の筑波大。早大は後期リーグ開幕以降の7試合のうち6試合で相手に得点を与えてしまっているが、自分たちの良さを出し、真の強さを求めて無失点で勝利をつかんで欲しい。


スターティングイレブン

 

(記事 大山遼佳、写真 稲葉侑也、新開滉倫、守屋郁宏)


JR東日本カップ2018 第92回関東大学リーグ戦 第18節
早大0-6
1-0
東洋大
【得点】
(早大)56’相馬 勇紀
(東洋大)10’,15’,28’,32’小林 拓夢、18’坪川 潤之、45+1’坂元 達裕
早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属
GK小島 亨介スポ4名古屋グランパスU18
DF牧野 潤スポ3JFAアカデミー福島
DF杉山 耕二スポ2三菱養和SCユース
DF大桃 海斗スポ3新潟・帝京長岡
DF18阿部 隼人社2横浜F・マリノスユース
→36分12小笠原 学社4青森山田
MF11相馬 勇紀スポ4三菱養和SCユース
MF17工藤 泰平スポ2神奈川・日大藤沢
→25分33清水 駿政経2京都橘
MF34田中 雄大スポ1神奈川・桐光学園
MF◎10岡田 優希スポ4川崎フロンターレU18
FW栗島 健太社3千葉・流通経大柏
FW14藤沢 和也商3東京・早実
→74分19杉田 将宏スポ1名古屋グランパスU18
◎=ゲームキャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
JR東日本カップ2018 第92回関東大学リーグ戦 1部順位表
順位大学名勝点試合数得点失点得失差
★早大3918124433+11
筑波大3318103422+12
★明大29183518+17
順大28183018+12
法大28182923+6
駒大26183129+2
流通経大26182937-8
東洋大24182524+1
桐蔭横浜大22182931-2
10専大22182335-12
11東京国際大15182037-17
12国士舘大18142042-22
※第18節終了時点
※★は第67回全日本大学選手権(インカレ)出場権獲得チーム。第42回総理大臣杯全日本大学トーナメント優勝の明大と、今リーグ戦1~6位のチームが関東地区からインカレに出場する。明大が6位以上の場合は7位のチームがインカレ出場権を獲得
※11、12位のチームは2部リーグに自動降格

コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――今日の試合の勝敗で来週の直接対決の位置付けも変化するという重要な一戦だったと思いますが

優勝にいよいよ王手だということを初めて意識してやってきたんですけど、Jrリーグとかで結構緩さのある試合があったり、そういうこと(優勝)を意識するとこういうこともあるかなという中で来たという事実はありました。突き詰められなかったというか、プレッシャーはそういうものだろうなと思っていたところもあったので。その中で、東洋さんは自分たちでアクションしてボールを動かせるチームで、そういう研究はしていました。(相手が)ボールを持てるチームだからこそ、もう少し高い位置、蹴られる前のところでプレッシャーを掛けて蹴らせないという状況をつくるという、後半みたいなやり方を(最初から)できていたらよかったと思います。そこでなかなかはまらず、向こうのボールの動かし方も良かったので、シンプルにボールを入れてきたところに対してうちが対応できなかった、単にそれだけだったとは思っています。

――スタメンには前節と比べて大きな変化がありましたが

金田が(累積警告で)出れない、武田もちょっと難しいという中で、前からプレッシャーを掛けられる人間をというところで、その構成を意識しました。ボランチとFWにはどちらかと言うと守備ができて、ボールもキープできるような田中と栗島を置いて、彼らが前に出ていった時に守備を締めることができる選手という意味で工藤を置きました。でも、簡単に言えばそこ(工藤)を飛ばされてしまっていたので、彼が生きるような場面をつくれなかったなと。もう少しつないでくるかなという想定をしていたんですけど、それを完全に外されてしまいました。

――前半は攻められては失点という流れが続いてしまいましたが、立て直せなかった要因は

うちには最初、本当に狙い通りの形で岡田のシュートまで行けたシーンがあって、今日は意外とこっちがボールを動かして攻められるなという空気が全体にもあったと思うんですよね。その中でそれがなかなかできず、反面、裏を取られて2対1、GKを入れれば3対1という『これは守れたな』という状況で決められて、あそこでみんなに『あれっ』っていう感じがあったと思うんですよね。あれが多分全てだったかなと思いますね。『とはいえ行けるんじゃないの』という空気の中で失点して失点して、という感じだったので。

――今までにない試合展開になったのはいつもと違うことがあったということだと思いますが、それは優勝への意識ですか

それもあったと思います。思った以上に試合の入りが良かったことによって、良くも悪くも勘違いが生まれてしまって、その優勝というものへの意識も含めて難しいゲームになってしまったなと。良くも悪くも受け入れてしまったことがひとつ良くなかったなと思います。

――後半は失点もなく攻めに出るシーンも多くつくれていたと思いますが、次につながるのではないですか

ハーフタイムに帰ってきた時には、みんなぼう然としているという感じでしたけど、「こういうかっこ悪い、恥ずかしい姿の中でサッカーができることってそうそう無いし、サッカーではそこで逃げも隠れもできない。後半もある中で、何ができるのかというところに向き合った人が選手としてのたくましさを持てて、初めて『選手』になれるんじゃないか」みたいな話をしました。その中で田中とかが、相手に引かれている中でも勇気を持って進出してということを、ある意味相馬や岡田以上にプレーで示したと思うし、後半1-0で終えたことはすごく大きな兆しなんじゃないかと思います。あのスコアになったからこそ気付けたこともあるし、それを大事にしたいし、その後の後半でそういう経験ができたことはすごくポジティブだと思うし、僕はそこにすごくチャンスがあると思っていました。試合の結果だけ見たら1-6、しかも前半で6点取られててどうなっているんだと、1-6は2回目だし、よくそれで首位にいられるなというところはあるかもしれないですけど(苦笑)、それでも首位に立つチームなんだということを証明できるチャンスが与えられているわけで、最終章に向けて、新たなワセダになるための大きな手応えをつかんだと捉えたいと思います。大学サッカーの難しさ、厳しさだし、ここから改めて成長させてもらえるくらい(リーグ)全体として切磋琢磨した環境にあるということをすごく感じますし、だからこそ今シーズンずっとやってきていることの成果を生み出したいということを強く思います。

――次節の筑波大戦は勝つか負けるかで未来が大きく変わる大一番になります。どのように向かっていきますか

筑波さんは力があるし4連勝中というのもありますけど、当然盤石だとは思っていないし、うちはこういう経験をしたことで、起こりうるリスクに対しての抑止力が生まれたと思います。そこを本物にするための時間をしっかり積み重ねていく1週間にしたいなと思いますね。今日の試合は非常に大きなヒントがあったと思うので、最後に『あの試合があったから自分たちはもう一皮むけられた』と言えるような形にはしたいなと思います。

FW岡田優希主将(スポ4=川崎フロンターレU18)

――次週に筑波大戦を控えた中での一戦でしたが、チームとしてこの試合はどのような位置づけだったのでしょうか

前節の結果を踏まえて自分たちの自力優勝が見えてくる試合だったので、王者になるにふさわしい試合をしようと、監督もそのようなテーマを持って臨みました。

――結果としては厳しい結果になりました。今振り返って試合前のチームに緩んだ部分などはあったと思いますか

根本的に相手に弱点を突かれての失点だったので、そこは緩みとしてはいけないなと思っています。背後からのロングボールへの対応や、横からのクロスの対応とか、そういうのはこれまでも弱点としてやってきた部分なので、それを「気持ちが」とか「雰囲気が」とかにするのは逃げだと思うので。なぜ駄目だったのかは冷静に振り返らないとわからないですけど、緩みという言葉だけで片付けたくはないですね。相手に弱点を突かれて、そこに対して修正もできなかったですし、相手の勢いを跳ね返すパワーもなかったので、冷静に考えればそういうところだと思います。

――試合の結果についてはどのように受け止めていますか

このスコアは僕自身一生忘れることはないと思います。チームとして考えれば明大戦でも1-6と同じスコアで負けていて、このスコアがチームの状況を端的に表していると思います。

――失点後グラウンドで全員が集まって話し合っている場面がありましたが、あそこではどのような話をしたのでしょうか

状況も状況だったので、前から(プレッシャーを)かけにいこうという話をしました。守備から入って、自分たちのペースに持ち込んでという感じですね。

――攻撃でもアタッキングサード以降で手詰まりになった印象があります

引かれた相手に対してというのはこれまでも課題としてありましたし、この前の国士舘大戦でも相手が前に出てきて、そこにできたスペースを自分たちが突いてチャンスをつかんできたんですけど、引かれた相手に対してはリーグ戦を通して勝ち切った試合はほとんどないと思うので、そこに関しては守備と同様に課題だと思います。

――次週は優勝の行方を大きく左右する筑波大戦です

まずはこの結果を受け止めることだと思います。自分たちは優勝を掲げてやってきたけど、その前の試合でこのような結果になってしまうという力の無さを見つめ直すことから始めたいと思います。その上で、相手に研究されて自分たちの弱点を突かれると思うので、そこに向き合うということと、そうなっても戦えるようにすること。本当にこれを精神論だけで終わらせてはダメだと思うので、ここに対して向き合うという意味では何が足りなかったか冷静に分析していきたいと思います。

DF小笠原学(社4=青森山田)

――優勝争いにかかわる大事な一戦でしたが、この試合にどのような位置づけで臨まれましたか

この1週間が始まるときに、今日の試合に勝つことができれば自分たちで優勝を勝ち取れると位置付けて、あえて優勝というものを意識してやってきて、優勝するためにふさわしい試合をしようという風に言っていて、何としても今日勝って、次勝てば優勝という切符を自分たちで勝ち取ろうという位置づけでやってきました。

――出場するまでの間、試合をベンチから見ていていかがでしたか

最初に失点した後に立て続けに失点してしまっていて、チームの中でなかなか立て直せない状況が続いていて、恐らくどうしたらいいのかというのが(ピッチの)中の前と後ろで共有できていなかったと思います。『このまま行ったらまずい』というのはみんな分かっていたと思うんですけど、その中でどうしたらいいのかというところでなかなかうまくいかずにずるずるといってしまったので、一度流れを変えたいなという気持ちで見ていました。

――交代する際に、監督から何か言われたことがありますか

具体的なことは実は言われていなくて、みんなが混乱している状況だったので、一度流れを落ち着かせるというところは、監督から言われなくても自分が出るというのはそういう意味だと自負しているので、意識して入ろうと思いました。それと、試合に入る前に監督から呼ばれて、「お前のサッカー人生を懸けてこい」という言葉を言われて、試合に入りました。

――試合全体を振り返っていかがでしたか

1-6というスコアで負けたという結果は、今日の試合するまでの自分たちの取り組みの甘さとか、そういったところが一つ一つボロとして出たと思います。前半で6失点するということは、やり方どうこうよりも、自分たちがそこに対してどう向かってきたのかという部分で、少なからず過信であったり、このまま優勝できるんじゃないかというような一人ひとりの心の隙みたいなものが積み重なって、立ち上がりに少し浮き足立ってしまってこういう結果になってしまったと思います。明日(29日)はトレーニングマッチもあるので、もう一度一人ひとりが取り組みのところから見つめなおして、やっと優勝というステージで戦えるのかなと思います。

――試合中、うまく改善できなかったのはなぜだと思いますか

戦術的なところで言うと、今までの相手に対してディフェンスラインを高く設定して前からプレスをかけていくというサッカーをしてきて、今日の試合も同じようなスタイルで臨んだんですけど、そこで相手が、自分たちが(ラインを)上げたところの裏のスペースを徹底的に狙ってきていました。その中で、自分たちとしてはそういう戦い方をいきなり変えるという柔軟性や対応力というものがなかなかなくて、そこを相手は突いてきたのかなと思います。

――来週に向けて一言お願いします

来週の筑波戦を意識する前に、まずは次のトレーニングやトレーニングマッチから一日一日を大切にして、サッカー前の取り組みなどの部分も含めて自分たちの足元をもう一度見つめなおして、来週の筑波戦を迎えたいと思います。