福原愛 結婚報告(左:江宏傑/右:福原愛)写真:中西祐介/アフロスポーツ「愛ちゃん」の愛称で親しまれ、長い間卓球界を牽引してきた福原愛(ANA)が、10月21日にブログを更新し、自身の選手生活に一区切りつけることを発表し、23日に都内のホテ…

福原愛 結婚報告(左:江宏傑/右:福原愛)写真:中西祐介/アフロスポーツ


「愛ちゃん」の愛称で親しまれ、長い間卓球界を牽引してきた福原愛(ANA)が、10月21日にブログを更新し、自身の選手生活に一区切りつけることを発表し、23日に都内のホテルで引退会見を行った。

 新聞、ネット、テレビなど各メディアでこのニュースが大きく報じられ、国民的スターの引退に「寂しい」「お疲れ様でした」など様々な声が集まった。



 3歳9ヶ月でラケットを握り始め、母・千代さんの厳しくも愛情ある指導のもと力をつけていった福原は、年長の時に全日本選手権バンビの部(小学2年以下)で初の全国制覇を成し遂げると、その後数々の国内タイトルを総なめ。可愛らしいルックスと振る舞いにより、「天才卓球少女」として瞬く間にお茶の間のアイドルになっていった。

 話題性だけでなく、着実に実力もつけていき、14歳で世界卓球(2003年)に初出場を果たすと、いきなり世界ベスト8という衝撃的世界デビュー。国際大会で日本のエースとして活躍し、五輪は4大会に出場し、ロンドンとリオでは悲願のメダルを獲得した。

 リオ五輪後は、結婚、出産のため競技からは離れていたが、この度ついに大きな決断を下すこととなった。

 幼い頃からメディアの注目を集め、卓球界の顔として常に先頭を走ってきた福原の貢献は、一言では表せないほどに大きいものだ。

 この数年で日本の卓球界は本当にガラリと変わった。チーム全体のレベルが上がり、今や中国に次ぐ強豪国として世界からマークされる存在になった。福原以後、石川佳純(全農)、伊藤美誠(スターツSC)、平野美宇(日本生命)などの若手が続々と台頭。人気が低迷していた日本男子も水谷隼(木下グループ)、張本智和(JOCエリートアカデミー)というスター選手が現れ、メディアでの露出が激増。スポーツニュースで卓球が取り上げるられることは今や珍しくなくなった。

 10年前、福原以外の卓球選手の名を挙げられる人がどれだけいただろうか。

 観るスポーツとしての卓球の面白さを知っている人がどれだけいただろうか。

「愛ちゃん」がいなければ、今の卓球界はなかったと言っても過言ではない。

福原愛 写真:田村翔/アフロスポーツ


これぞ、福原愛。ファンを惹きつけた、団体戦の戦いぶり

 テレビ東京では2005年から毎年「世界卓球」を放映。世界卓球での福原を振り返ると、印象に残るのはやはり団体戦での戦いぶりだ。本人も「団体戦が好き」と度々話しており、個人戦以上に気持ちの入ったプレーで名勝負を繰り広げてきた。

 2008年広州大会では、韓国戦のラストで最終ゲーム9-10から大逆転勝利。ベンチに戻って大粒の涙を流す、感動的なシーンを生み出した。

 2012年ドルトムント大会では、苦手としていた韓国のカットマンから勝利をあげ、ジャンプしてのガッツポーズ。しかしチームは敗れてメダルを逃し、充実と悔恨の大会となった。

 地元開催となった2014年東京大会は怪我で欠場。その悔しさをぶつけるように挑んだ、2年後の2016年クアラルンプール大会ではキャプテンとしてチームをひっぱり、自身初の銀メダル獲得に貢献した。

 気迫のこもったガッツポーズ。満面のスマイル、そして涙。ベンチでも必死にチームメイトを応援し、アドバイスを送る。そんな彼女の懸命な姿にたくさんの視聴者が惹きつけられ、それが卓球の面白さとして、多くの人に伝わっていった。

 ただ知名度があるだけではない。アスリートとしてただ強いだけでもない。福原愛は、福原愛にしかない魅力が詰まった、スポーツ界でも稀有な選手だったと言えるだろう。

「とてもおこがましく身勝手かも知れませんが・・・これまでの私は、これからも卓球界を引っ張っていくため、子育てをしながら競技を続ける必要があると思っていました。
(中略)
皆様がご存知の通り、この2年間で次世代の選手達が大きな成長を遂げ、日本の卓球界全体が以前より盛り上がってきました。

とても嬉しく感じるのと同時に、知らない内に私自身で勝手に感じていた肩の重みが、すっと抜けるような感覚があり、私が選手としてできることはやり切った、頑張り抜いた、という思いが強くなり、自分が選手としての立場でやるべき使命は果たせたかな、と感じるようになりました。」(福原愛オフィシャルブログより)

 競技から離れていても、卓球界の未来について、自分のすべきことを真剣に考えていた福原。その彼女が昨今の若手の活躍を見て、「もう大丈夫」と次の世代にバトンを渡した。

 目が醒めるような前陣速攻プレー、代名詞とも言える「サー」の掛け声のガッツポーズ、そして勝利の涙。これらがもう見れなくなる思うと寂しくなるが、常に"愛ちゃん頼み"だった日本の卓球界にとっては、今回の彼女の決断は、胸を張って良い結果と言えるのかもしれない。

「私は生涯卓球人なので、卓球という軸がぶれることは一生ありません。

コートから離れて更に卓球が好きになった気がします。

これからは選手とは別な立場で、これまで支え続けてくれた皆様に、卓球を通して恩返しをしていきたいです。」(福原愛オフィシャルブログより)

 卓球ファンとして嬉しいのは、まだまだこれからも福原が卓球界に尽力してくれるということだ。

 今後の福原の活躍には大きな期待、楽しみがあるが、まずは理事として参画しているTリーグの成功が彼女の最初の目標と言える。

Tリーグ 開幕記者会見 長田洋平/アフロスポーツ


 多くの人がTリーグに足を運び、ファンでいっぱいになった会場を福原が見たならば、少しだけ「泣き虫愛ちゃん」が顔を出してくれるかもしれない。それが、卓球界に計り知れない財産を残してくれた愛ちゃんへの、卓球ファンからの恩返しにもなるはずだ。


改めて、愛ちゃん、ありがとう。そしてお疲れ様でした。