張本智和 Photo:Itaru Chiba

 フランス・パリで開催された卓球の「男子ワールドカップ」<10月19〜21日/ディズニー・イベントアリーナ>が閉幕した。優勝したのは世界ランク1位でトップシードの樊振東(中国)。決勝でドイツの英雄ボルをゲームカウント4-1で破り、2年ぶり2度目のワールドカップを手にした。3位はディフェンディングチャンピオンのオフチャロフ(ドイツ)を破った林高遠(中国)。張本智和(JOCエリートアカデミー)、丹羽孝希(スヴェンソン)の日本勢は張本がボル、丹羽が林高遠に準々決勝で敗れトップ8にとどまり、日本男子初のメダルには届かなかった。

ボル、樊振東、林高遠 Photo:Itaru Chiba Photo:Itaru Chiba

 張本とボルの対戦は大きな見どころのひとつだった。前回の2人の対戦は2017年8月のワールドツアー・チェコオープン決勝。この時は張本がゲームカウント4-2で勝ち、ワールドツアー自身初優勝を飾った。その前は同年6月の中国オープン準決勝でボルがゲームカウント4-1で勝利していた。つまり2人の対戦成績はイーブン。もちろん経験値では37歳のベテラン・ボルが勝るが、勢いと技術の高さでは張本も負けてはいない。

 張本はロングサービスを要所で効かせ、ボルのレシーブミスを誘ってチャンスを作り得点していく。ボルもミドル攻撃を多用し張本を崩しにかかるが、第1ゲームは張本が先取。だが第2ゲーム以降はボルの巧みな戦術が光った。回転豊富なループドライブや横回転系のゆるい球などを織り交ぜることで張本のタイミングを狂わせ、浮いたボールやコースが甘くなったボールを確実に決めていく。さらに今大会のボルは反応の良さも際立ち、張本の速い攻撃にもカウンターで対応する場面が多く見られた。

 一方の張本もボルがフォアに回り込むのを見てすかさず逆を突き、コートのミドルに打ち込むボールや得意のバックハンドクロスでエースを取るなど豪快な得点シーンもあったが、ストレート狙いのボールにミスが出たり、フォアハンドの威力を欠いて逆に強打されたりして流れを引き寄せることができなかった。張本本人も「フォアハンドがやっぱり、一発は打てたけど連続で打てなかったしコースも甘かった」と、かねてより取り組んでいるフォアハンドの強化を改めて課題に挙げていた。

 これに関して言えば、決勝でボルを下した樊振東はフォアハンドの連続強打が打てるし、難しいストレートへのボールもしっかり決めて得点できていた。もちろんフィジカルの強さもある。強烈なチキータが武器である点や攻撃の速さでは似たタイプと言える2人だが、そのあたりの差が同じ相手に対し勝敗を分けた要因のひとつと言えそうだ。

 丹羽もジュニア時代からのライバルである同年代の林高遠に、いつになく気迫あふれるプレーで応戦した。しかし、ゲームカウント1-1から競り合いになった第3ゲームが肝となった。お互い得意とするカウンターの応酬などで互角に持ち込みながら、10オールの競り合いの末にこのゲームを落とした丹羽は、これを潮に3ゲームを連取され過去2大会と並ぶベスト8で3度目のワールドカップを終えた。

 パリを後にした張本と丹羽は帰国後、24日に開幕する日本初の卓球プロリーグ(アマ混合)「Tリーグ」出場を控えている。

(文=高樹ミナ)