日本代表から引退することを表明してからの長谷部誠(フランクフルト)は、どこか肩の荷が下りたような、リラックスしたム…

 日本代表から引退することを表明してからの長谷部誠(フランクフルト)は、どこか肩の荷が下りたような、リラックスしたムードを漂わせている。今シーズンを迎えるにあたっては、当初、「W杯後は闘志が湧かず苦労した」などという話もしていた。そのキャリアにおいて、大きな区切りをつけたということなのだろう。



フォルトゥナ・デュッセルドルフ戦にフル出場、大勝に貢献した長谷部誠

 ロシアW杯後、2回目となるインターナショナルマッチウィーク、長谷部は日本代表の試合を見なかったという。

「いや、こっち(ドイツ)にいたので、見られなかったですけどね。でも、もう若い選手たちがみんな頑張ってくれているので、自分が退くタイミングが正しかったと思わせてくれる。そういう後輩たちには感謝したいですね」

 文字面だけを見ると硬い言い方に感じられるかもしれないが、そういうわけでもない。半笑いで「退くタイミングが正しかった」などと言うあたりは、きっと笑いを取ろうとしているのだ。代表の主将をしていたころに発していたピリピリ感からは考えられない穏やかさだ。

 とはいえ、つい数カ月前まで主将を務めていたチームの戦いを見ないでもいられるものなのだろうか。確かにドイツで日本戦のテレビ中継はないが、その気になれば視聴する方法はないわけではない。

「まあ、ちょうど練習もしていたので。できるだけ見たいなとは思いますけどね」

 関心がないわけではなく、見られないだけ。そんなニュアンスでまとめて取材を終えた。今は自由な時間を楽しむことも大事な時期なのだろう。

 代表に呼ばれない選手は、この9月から11月にかけては毎月、試合がない週ができる。もちろん、その間ずっと休みということはなく、2、3日の連休が与えられることが多いようだ。遠出はできないが、スペインの島や南仏のリゾート地、パリなどに旅行に行く選手も多い。

 長谷部はこれまで代表に捧げてきたその時間を、家族とともに過ごせることを楽しみにしており、「海でも山でも全部行きたい」などと話していた。だが、今回の代表ウィークは「休養」の優先順位が高かった。

 開幕当初はメンバーから外れることもあった長谷部だが、ポジションを取り戻し、9月20日から10月7日までの間に行なわれた全6試合(リーグ戦4試合、ヨーロッパリーグ2試合)にフル出場した。「なかなかここまでの連戦は経験がないので、かなり疲れていた」と、過密日程に悲鳴をあげた心身を休めることに専念したのだ。

 連戦で起用されていることからわかるように、長谷部自身のコンディション自体は上々だ。また、アディ・ヒュッター新監督が就任してから少し時間がたったことで戦術的にうまく回るようになり、チームも調子を上げている。

 第8節のフォルトゥナ・デュッセルドルフ戦は7-1の大勝。長谷部はフル出場している。それでも「0で抑えたかった」と、まず反省を口にするところが、やはり長谷部らしかった。

 長谷部は自身の状態をこう説明する。

「感覚としてはいい状態にあるかなというのは、やっていて感じています。読みだったりが、いい状態にあると思うんです。このチームは、ローテーションで出た選手がしっかりと結果を残しているので、1、2試合よくなかったら、また外されるというのがあると思う。コンスタントにこれを続けていきたいと思います」

 ちなみにこの日、7点中5点を決めたルカ・ヨビッチは、1997年生まれ。まだ20歳のセルビア代表だ。代表キャップがないままロシアW杯のメンバーに選ばれ、ブラジル戦にも出場した、今後ビッグクラブに買われていくだろうと目されている注目株だ。

 10月の日本代表のメンバーを見ると、最年少の1998年生まれが冨安健洋(シント・トロインデン)と堂安律(フローニンゲン)、次が1996年生まれの三竿健斗(鹿島アントラーズ)となる。彼らと同世代の選手が、格段にレベルが高く厳しい環境のなかで戦い、成果を出し始めているのだ。

 日本代表こそ退いたが、長谷部は今もクラブでバリバリと戦っている。もしかしたら現在の日本代表の誰よりも厳しい戦いを日々こなし、勝ち残っているのかもしれない。そう思うと、少し複雑な気持ちになる。ビッグクラブとはいわないまでも、最低でもヨーロッパリーグに出場できる程度の欧州のクラブでレギュラーを獲得し、チームのなかでリーダーシップを発揮している日本人選手がいま、何人いるだろうか。

 新生日本代表の3連勝に沸くのもいいが、そういう選手が出てこないと今後は厳しくなる。最近の長谷部の充実ぶりからは、そんなことを思わされるのだ。