10月8日に行なわれた近畿選手権男子フリー。演技を終えた髙橋大輔は苦笑いをしながらこう言った。

「最低でしたね。今まで練習でもここまでのボロボロはほとんどしたことがなかったので……。今シーズンというか、現役に復帰してから練習も含めてこんなボロクソな演技は初めてです。これが試合の緊張感だと思うし、ショートとフリーを2日続けてやる難しさだと思うし。この2日間を通して課題もたくさん見えてきて、本当に悔しいというところよりも、これが自分の実力なんだなということをすごく実感しました。それに、あとはここから(状態を)上げていくだけだなということも、同時に強く思いました」



現役復帰初戦で3位だった髙橋大輔

 前日のショートプログラム(SP)では「めちゃめちゃ緊張していてスタートから脚はガクガクで、結構つまずきそうになりながらやった」と言うが、6分間練習でも決めていた最初のトリプルアクセルをきれいに決めた。

 その後、3回転フリップ+3回転トーループはセカンドが回転不足になって0.35点の減点。続くチェンジフットキャメルスピンもスピードのない回転でレベル1の評価で0.13点減点されたが、その後の要素はしっかりこなして77.28点でトップになっていた。

 演技終了後、髙橋はホッとした表情で「とりあえず終わったという感じですね。ジャンプは全部詰まっていたし、スピンもガクガクだったし、ステップも思うようには動かなかったということもあった。そのなかでも大きなミスがなく終われてよかったという安心感はあります」と話した。

 そして翌日のフリーへ向けては「もうショートでこれだけ疲労困憊しているので、『フリーはどうなることやら』というのはありますね。『4分間持つかな?』という不安の方が大きくて。より一層緊張感は高まると思います。ただ、これまでは緊張感でどうなるかというのがあまりわかっていなかったけど、今日それを経験できたので、明日は緊張感に対する準備もできると思う。あとは思い切りやることだけを考えて、精いっぱい自分を出し切るようにしていきたいと思います」と笑いながら話していた。

 だが、フリーはSP以上に厳しかった。動き自体はSPよりよかったと言い、最初の3回転フリップ+3回転トーループは1.77点の加点をもらうジャンプ。しかし、次のトリプルアクセルで転倒し、続くサルコウは2回転になってしまった。さらに、ミスをした疲労が出てきた後半になると、2回目のトリプルアクセルで転倒、続く3回転ルッツと3回転ループはダウングレードになって両足着地になった。

 コレオシークエンスでは髙橋らしさを見せたが、最後のジャンプのフリップも2回転で「ノットクリアーエッジ」と判定され、SP以上の疲労困憊状態で演技を終えた。久しぶりの試合の緊張感で硬くなっていた体が、疲労の蓄積を増幅させたのだろう。

 フリーの結果は118.54点の4位。復帰戦は合計では195.82点で3位に止まった。

「ショートの前も緊張していたんですけど、ショートは時間が短い分ある程度気合いでもっていけたところもあったと思います。だけど、フリーは気持ちだけでもっていけないというのを強く感じたし、本当に練習が大事だなということをあらためて感じました」

 SPの時は「とくにスピンは練習でできている半分以下だった」と、練習でできていることの5割から6割しか出せなかったと話していた。そして、フリーはそれ以下だった。だがSP、フリーともに、体全体を柔らかく使い、音楽に乗って滑る姿は「さすが高橋大輔!」と感嘆する存在感と華があった。

「今回は必死で耐えるだけだったから、楽しめていないですね。本当に楽しめるのは、西日本選手権からかもしれません」と笑顔で語った髙橋。デヴィット・ウイルソン振り付けの『ザ・シェルタリング・スカイ』とブノワ・リショー振り付けの『ペール・グリーン・ゴースト』を、これからどう仕上げていくか、とても楽しみだ。