錦織圭が、ジャパンオープンに帰って来た――。 楽天ジャパンオープン1回戦で、第3シードの錦織(ATPランキング12位、10月1日づけ/以下同)は、杉田祐一(110位)を、6-4、6-1で破り、2年ぶりに2回戦へ進出を果たした。28歳の…

 錦織圭が、ジャパンオープンに帰って来た――。

 楽天ジャパンオープン1回戦で、第3シードの錦織(ATPランキング12位、10月1日づけ/以下同)は、杉田祐一(110位)を、6-4、6-1で破り、2年ぶりに2回戦へ進出を果たした。28歳の錦織と30歳の杉田の対戦は、プロになってから初となり、それを東京で実現させた形だ。



意外にもプロ初対決となった錦織圭(左)と杉田祐一

「もちろんやりたくない選手ですけど、いつかは日本人と当たる時も来るかなと思っていました。今年は、彼と同じ大会をずっと回っていて、いつかは当たるんだろうなって。それが、日本でやらなくてもよかったんですけど……。お互い、いい試合ができればうれしい」

 このように試合前日に錦織が語れば、杉田も日本での初対決に少しだけ戸惑いを覚えた。

「ここで来るか、という感じでした。(錦織と)同じ大会に出るようになって、彼のプレーをずっと見てきましたし、どこか大きな所で当たれたら楽しいなと思っていました」

 1回戦が始まると、杉田以上に錦織の動きが硬く、ミスの多いテニスをした。

「自分でもびっくりするぐらい体が重くて、2年ぶりの日本ということもあったと思いますし、いいプレーをしたかったという思いもあるし、相手が杉田選手というのもあった。久しぶりに感じた緊張感があった」

 こう振り返った錦織は、第1セット第2ゲームでは、1回ブレークポイントを握られたが3回のデュースの末キープ。第4ゲームでは、2回ブレークポイントを握られたが同じく3回のデュースの末キープ。錦織は、サービスキープに苦労するが、この難局を乗り切ったことで、次第に自分のプレーができるようになった。逆に、杉田はブレークできずに、錦織を勢いづかせてしまったことを悔やんだ。

「錦織選手の方がやりづらい状況で、思うようなリズムがとれていないなか、チャンスがあった。自分としては、そこを取りきれず、最大のチャンスを逃した」

 錦織はセットを先取してから、ようやく体が軽くなって、足も動くようになり、得意のグランドストロークのボールも伸びるようになった。第2セットでは、第4ゲームで一度だけサービスブレークを許したものの、試合の主導権を手離すことはなかった。

 いい仲間であり、いいライバルでもある杉田との戦いを終えた後、「あんまり友達と勝ち負けをつけたくないというのは、スポーツ選手らしくないですけど、正直ありますね」と錦織らしい優しさを見せて、盟友である杉田を気づかった。

 昨年は、右手首のけがによって戦線離脱していたため、ジャパンオープンを欠場した錦織だけに、今大会への意気込みは例年にも増して大きい。

「昨年プレーできなかった分、今年は楽しみにしていました。日本でプレーできる機会は少ないですし、今調子が上がってきて、いいテニスができるようになってきたので、できれば優勝目指してがんばりたいと思います」

 また、今年のジャパンオープンは、会場である有明コロシアムと有明テニスの森公園が、2020年東京オリンピックに向けた改修工事のため、今年だけ武蔵野の森総合スポーツプラザに移して、インドアハードの大会として行なわれる。1987年から有明で開催されてきたので、今年は趣(おもむき)が例年と異なっている。

「有明でプレーしないのは、ちょっと違和感がありますし、楽天オープンじゃないような気も若干あります。でも、(武蔵野の森も)すごくいいセンターコートですし、会場もすごく過ごしやすいので、慣れればこの場所もいいかなと思います」

 USオープンでベスト4という大きな結果を残した後、気持ちがさらにポジティブになり自信のついた錦織は、年間成績上位8人しか出場資格が得られないツアー最終戦のATPファイナルズへの2年ぶり4度目の出場を、シーズン後半の一番の目標に置いて邁進している。

 現在、ATPファイナルズ出場権争いの「レース・トゥ・ロンドン」で錦織は、2565点で10位。8位のケビン・アンダーソン(南アフリカ)が3450点で、885点差があるため、理想は楽天オープンで優勝して500点を獲得し、差を縮めておきたいところだ。

「残り4大会で、ツアーファイナルに出られるよう、もちろん目指しています」

 2回戦で、錦織は、ブノワ・ペール(63位、フランス)と対戦する。ペールとの対戦成績は錦織の4勝2敗。2015年USオープン1回戦では、錦織が2度のマッチポイントを握りながら5セットの末に敗れ、2015年ジャパンオープン準決勝では、錦織が第1セットを6-1で取りながら逆転負けを喫したため、負けた時の悪い印象が多くの人の記憶に残っているかもしれない。だが、今年の全仏オープン2回戦では、錦織が5セットで勝ち、過去の呪縛を振り払うような大きな勝利を手にすることができた。

 ジャパンオープンを勝ち上がっていくには、「自分の攻撃的なプレーが必要になってくる」と語る錦織の2回戦は、10月3日(水)に行なわれる予定だが、上位進出のための大きなキーポイントになる一戦になりそうだ。