凱旋試合の初戦から、しっかりと力を見せつけた大坂なおみ 大坂なおみは、まさにグランドスラム優勝者としてふさわしいプレーを東京で披露した。 東レ パン パシフィック オープンテニスの2回戦で、第3シードの大坂(WTAランキング7位、9月1…



凱旋試合の初戦から、しっかりと力を見せつけた大坂なおみ

 大坂なおみは、まさにグランドスラム優勝者としてふさわしいプレーを東京で披露した。

 東レ パン パシフィック オープンテニスの2回戦で、第3シードの大坂(WTAランキング7位、9月17日づけ/以下同)は、ドミニカ・チブルコバ(30位、スロバキア)を6-2、6-1で破って、2年ぶりのベスト8に進出した。

 大坂にとって、USオープンで日本人初のグランドスラム初優勝を成し遂げた後の初めての試合となった。対戦相手のチブルコバは、2014年オーストラリアンオープン準優勝者で、2017年3月に最高4位まで上がったことのある実力者。初戦(第3シードなので1回戦は無し)の相手としては決して容易ではなかった。

 ニューヨークでもそうだったが、大坂は、「安定したテニスをずっと続けることを最優先」と心がけており、チブルコバを相手に豪快な好プレーを連発。

「彼女(大坂)が安定していて、簡単なボールをまったく私に与えてくれなかった。自分のミスが多過ぎた」とチブルコバは、ほぼお手上げ状態だった。

 インドアハードコートという環境も相まって、大坂のビッグサーブがさく裂し、時速190km後半を何度も叩き出した。第1セット第8ゲームでは、この日最速の196kmを記録。サービスエースは10本、ファーストサーブのポイント獲得率は86%、セカンドサーブのポイント獲得率も71%と非常に高く、ほぼ完璧なサーブの出来だった。

 大坂は、第1セットでは2回のブレーク、第2セットでは3回のブレークに成功して、わずか59分の完勝。結局、大坂は自分のサービスゲームでは相手に1回もブレークポイントを許さなかった。

「とてもいい試合ができたと思います。東京での最初の試合をいい形で終えられました。いいサーブも打てて、ミスもそんなになかった」

 こう振り返った大坂には、試合後日本人初のグランドスラム優勝という快挙に対して日本テニス協会から報奨金800万円が贈呈された。

 また、今回の凱旋試合初戦での快勝は、あらためて20歳の大坂の着実な成長を感じさせた。

 2018年3月、WTAインディアンウェルズ大会で優勝した後、ランキングが44位から22位に急上昇し、それにともなって注目度も上がった時、大坂は思うように勝てなくなった。

「たくさん期待されて挑戦者のような立場じゃなくなってしまって、大きなプレッシャーを感じた。いろいろなことが私の周りで起こっているようで、体も気持ちもついていかない」

 USオープンの前哨戦であるWTAシンシナティ大会で敗れた後には、ロッカールームで泣いたこともあった。

 だが、USオープンで初優勝してグランドスラムチャンピオンになり、トップ10選手になった今、さまざま変化が起こっても、インディアンウェルズ後に経験した葛藤が糧となり、成すべきことに迷いは生まれなかった。

「インディアンウェルズで優勝を経験したおかげで、USオープンでの一連の出来事に気持ちの面でもうまく対処できたと思っています。もちろんUSオープンの方がスケールが大きくて、比べものにならないですけど、でもやっぱりあの時の経験が生きていると思います」

 さらに、USオープン優勝後の大会が、日本での開催であることが、大坂の助けになっている。

「直後の大会が、東京でのプレーということをうれしく思っています。この大会(東レPPO)に向けてしっかり戦う心の準備をすることができました。USオープンの優勝を考え過ぎないようにしました。オフシ-ズンに入ったらどう感じるかはまだわかりませんが、今は落ち着いて、ここでの次の試合だけを考えています」

 長年、日本人グランドスラムチャンピオンの誕生を、多くの関係者やファンが待ち望んできた。その願いを大坂が実現し、グランドスラムチャンピオンになった直後の試合は東京での開催。そこで、大坂は完璧なプレーを披露してくれた。

 こんな至福の時間が、日本テニス史上においてあっただろうか――。

 大坂は、2年前に準優勝した東レPPOを特別な大会だと位置づけている。自らを完璧主義者だと称する大坂が狙っているのは、もちろん東京での初優勝だろう。

 大坂と日本のファンの幸せな時間が、1分1秒でも長く続くことを切に願いたい。

 準々決勝で大坂は、第8シードのバルボラ・ストリコバ(25位、チェコ)と対戦する。