9月9日の早稲田大vs.筑波大戦を皮切りに、今年も関東大学ラグビー対抗戦Aグループが開幕する。

 大学選手権10連覇を狙う「赤い旋風」帝京大は対抗戦でも7連覇中と、「一強」とも言える実力を見せ続けてきた。だが、今年は昨季の大学選手権準優勝だった「紫紺」の明治大が春と夏の試合で絶対王者に勝利。さらに「アカクロ」ジャージーの早稲田大も夏の練習試合で28-14と白星を飾るなど、帝京大が築いていた牙城を崩しにかかっている。



早稲田大のルーキー3人衆。左から小林賢太、河瀬諒介、長田智希

 しかも、大学選手権最多の15回優勝を誇る早稲田大は、今年で創部100周年。2010年以来の対抗戦優勝、そして10年ぶりの大学日本一奪還に燃えている。

 今年、早稲田大の新指揮官には相良南海夫(さがら・なみお)監督が就任。主将のFL(フランカー)佐藤真吾(4年)を軸に、大学生で唯一日本代表候補に選出されたSH(スクラムハーフ)の齋藤直人(3年)と、キックもパスもうまいSO(スタンドオフ)岸岡智樹(3年)のふたりが試合をコントロールする布陣で挑む。

 帝京大に勝利した要因について、新監督は「春からディフェンスをしっかりやってきた成果」と胸を張ったように、14失点に抑えたことが大きかった。開幕前の夏合宿とはいえ、8年ぶりに帝京大に勝利したことは大きな自信になったはずだ。

「大学選手権で9連覇しているチームに、『どうせやっても……』と怖じ気づくことなく、同じステージ、土俵に立つことができた」

 相良新監督は開幕に向けて、手応えを掴んでいる。

 夏合宿では大東文化大(17-21)と東海大(21-28)に惜敗したものの、帝京大戦も含めてこれらの試合には今年から加わった3人の新人が先発で出場し、その3試合とも躍動するプレーを見せていた。春季大会はチーム方針としてほとんど出場しなかったが、今季の大きな戦力となることを証明したと言えるだろう。

 その3人とは、昨年度の全国高校ラグビー大会で優勝した東海大仰星高(大阪)のCTB(センター)/WTB(ウイング)長田智希とWTB/FB(フルバック)河瀬諒介、そして一昨年度の花園で優勝した東福岡高(福岡)の右PR(プロップ)小林賢太だ。とくに長田と河瀬は、高校日本代表とU20日本代表にも招集された逸材である。

 デビューとなった大東文化大戦で非凡なタックルやランを披露し、帝京大戦でトライも挙げた長田は、小学校4年生のときに京都・亀岡ラグビースクールで楕円球に出会った。東海大仰星では2年時から先発として出場し、3年時は約100人の部員を率いる主将に抜擢。アングルチェンジで相手の隙を突くのがうまく、1対1での強さも兼ね備えている。

 相良監督は長田について、「全体が見えていて、判断力が高く、タックルも強い。ボールに関係ないところでも動いている」と高く評価している。それに対し、夏合宿で初めて試合に出場した長田は、「(試合時間が60分の)高校とは違い、80分戦うなかでのフィットネスが課題です」と語っていた。

 一方、大東文化大戦と帝京大戦で豪快なランでチャンスメイクをしていた河瀬も、小学校4年生から大阪・阿倍野ラグビースクールで競技を始めている。昨年の花園では5試合で8トライを挙げて、チームメイトの長田とともに優勝に大きく貢献。まさにMVP級の活躍だった。

 父は元日本代表No.8(ナンバーエイト)の河瀬泰治氏(現・摂南大総監督)。大阪工大高(現・常翔学園)、明治大、東芝府中(現・東芝)で活躍し、「怪物」の異名を取った名選手だ。息子の諒介は父親譲りの恵まれた体格(身長183cm)を生かし、大きなストライドを武器としている。

 夏合宿の試合で河瀬は、「緊張していましたが、思いっきりいけた」と語る一方、相手チームの外国人選手に対しては、「弾かれた部分もあったし、フィジカルは全然(ダメでした)。前に出られなかったり、タックルで止められなかったりは課題です」と、ディフェンス面での反省を口にしていた。それに対し、相良監督は「もうちょっと自信を持って、自分から空いているスペースに仕掛けるマインドが出てくれば。遠慮せずに、伸び伸びやってほしい」と期待を込める。

 そして、このふたりに先駆けて6月末の日本大戦で1軍デビューを飾った小林は、4歳から神戸・芦屋ラグビースクールで競技をはじめ、東福岡高時代はPRながらオフロードパスの名手としても注目された逸材だ。フィールドプレーにおいては「超高校級PR」と言っていいだろう。

 ただ、高校とはルールの違う大学で、1年生ながらどこまでスクラムを組めるのか――。その疑問に対し、相良監督は「フィールドプレーはもともといいですし、身体も大学1年生にしてはベースが強く、スクラムも組める」と語る。

 小林自身も、大学トップクラスのスクラムを誇る大東文化大戦で大きな自信を得たようだ。

「大学トップクラスの相手とスクラムを組んでみて、何本かは自分の形で組めることがあった。これを今後に活かしていきたい。アタックの部分でも絡んでいきたいが、まずはスクラムを強化しないと、自分のやりたい(フィールド)プレーはできない」

 今シーズンはスクラムを強化し、チームの勝利に貢献することに集中している。

 100周年を迎える早稲田大は今年、『Moving』というスローガンを掲げた。「グラウンドを走り回る」「ボールを動かし続ける」といった意味だけでなく、「ファンを感動させる」などの思いもあるという。

 そのスローガンを実現させるためにも、ポテンシャルの高いルーキー3人の存在は必要不可欠になりつつある。今季最初の目標は、この対抗戦でライバルの帝京大と明治大に勝利すること――。なぜならば、10年ぶりの大学日本一に輝くためには、対抗戦で優勝したほうがドロー的にも日程的にも有利となるからだ。

 今シーズンは長田、河瀬、小林の「ルーキー3人衆」に注目してもらいたい。早稲田大学ラグビー部の躍進のカギは、彼らが握っている。