50歳まで現役生活を続け、通算219勝を挙げた球界のレジェンド・山本昌氏。毎年恒例となった、夏の甲子園に登場した好…

 50歳まで現役生活を続け、通算219勝を挙げた球界のレジェンド・山本昌氏。毎年恒例となった、夏の甲子園に登場した好投手アナライズを今年も敢行。これまで数々の好素材を見抜いてきた慧眼で、未来のスター候補13名の素養を一斉チェックする!

山﨑武司の100回大会強打者分析の記事はこちら>>



全試合に先発し、甲子園で881球を投げきった金足農・吉田輝星

吉田輝星(金足農3年/176cm・81kg/右投右打)

文句なしの今大会ナンバーワン投手です。上背はそれほどありませんが、ピッチングをまとめられますし、何よりもボールの質がいい。リリースで最後に強く切って、ボールに回転をかけるのがうまい。全盛期の藤川球児くん(阪神)を思わせるボールの回転ですから、高校生では攻略するのは難しいでしょう。変化球も器用に投げ分けていますが、欲を言えば縦に落ちる変化球の精度を高めたいですね。プロに入ってすぐ活躍できるとまでは言いませんが、いずれ高い確率で成功できる投手になるでしょう。



準決勝、決勝で先発完投し、チームの春夏連覇に貢献した大阪桐蔭・柿木蓮

柿木蓮(大阪桐蔭3年/181cm・85kg/右投右打)

昨年に見た徳山壮磨くん(早稲田大1年)と同様に、大阪桐蔭らしい完成度が高い勝てる投手です。さすが、甲子園春夏連覇チームのエースだなと感じました。チームが強すぎて注目選手がたくさんいるので話題になりにくいのかもしれませんが、ここぞというところで150キロを超える、速くてしっかりしたボールを投げられます。体が右打者の外の方向に出ていくことがあって、開きが早くなるとシュート回転が強くなりますが、自分でそのクセを理解して修正できるのも高ポイントです。プロで見たい投手ですね。



この夏の甲子園で2試合に先発するなど、投打で活躍した大阪桐蔭の二刀流・根尾昂

根尾昂(大阪桐蔭3年/177cm・78kg/右投左打)

内野手としての評価が高く、本人も今後は野手としてプレーしていきたいと話しているようですが、私はプロでも投手で見てみたいです。それも「二刀流」ではなく、投手に専念した上で。彼のいいところは、上背はそれほどなくてもリリースで腕が上に伸びて、高い位置から角度をつけて投げられること。縦の変化球が投げやすい腕の振りをします。投球センスも高いし、当然のようにフィールディングもうまい。私は桑田真澄(元巨人ほか)さんのような投手になれると考えています。仮に投手として頭打ちになったとしても、投手として鍛えた時間は野手になっても無駄にはなりません。まずは投手として勝負してほしいですね。



190センチの長身から投げ下ろす150近いストレートが魅力の浦和学院・渡邉勇太朗

渡邉勇太朗(浦和学院3年/190cm・90kg/右投右打)

南埼玉大会では不調だったそうですが、「なぜこの投手が背番号11をつけているんだ?」と思うくらい、素晴らしい素材です。まず腕の振りがすごくいいのが目につきますし、体が大きく、ボールに力があります。ただ、せっかく長身なのに軸足で立ってからすぐヒザを折って体重移動するのは、特徴になるはずの角度を生かせません。移動しながら自然とヒザが折れるようになると、ボールに角度がつきますし、勢いがつきます。また、体に力がついてくれば左肩の開きも我慢できるようになって、シュート回転が目立つこともなくなるでしょう。



敗れはしたが、強打の大阪桐蔭打線から11三振を奪った高岡商の山田龍聖

山田龍聖(高岡商3年/182cm・80kg/左投左打)

好きなタイプのサウスポーです。ボールを縦に切れて、カーブが大きく曲がる。縦の変化球が使えて、コントロールのブレが小さい投げ方をしています。ストレートの回転がきれいだから、打者の手元ですごく伸びてきますね。少し気になったのは、体重移動で左肩が下がって顔が上を向いてしまうことと、テイクバックで左腕が伸びないこと。本人の投げやすさを最優先すべきですが、両肩を水平にできれば体重移動できる距離が伸びますし、テイクバックで左腕を大きく使えたらボールに勢いがつきます。試してみてほしいですね。



初戦で二松学舎大付に敗れたが、常時140キロを超すストレートが魅力の広陵・森悠祐

森悠祐(広陵3年/175cm・75kg/右投右打)

バッターがタイミングを取りづらい一瞬遅れてくる腕の振りがいいですね。リリースポイントは低いですが、ボールの走りはいいし、体の力の強さも感じます。スピードもコンスタントに140キロ台後半が出ていますね。プロに進んだとしても、早い段階でリリーフとして出てこられる力を持っていると思います。今はリリースでボールを押して投げるタイプなので、前で叩けるようになるともっといいボールが投げられるようになるでしょう。



初戦の佐久長聖戦では8回4失点ながら自責点0と好投した旭川大高の沼田翔平

沼田翔平(旭川大高3年/175cm・65kg/右投右打)

ストレートは140キロ台中盤まで出るし、腕が真上から出てくる投げ方なので、カーブやフォークなど縦の変化球が有効に使えそうですね。ただ、私は投手を見る際にライン(投手が投げる際に使う空間の幅のこと)のなかに体を収めて使えているかをチェックするのですが、彼は頭と手首から指先までがラインから少しずれるんです。頭がずれるとコントロールがつきにくいし、手首は寝ていて押し出すように見える。顔を立てて、前で切るように投げられれば、もっといい投手になるはずです。



チームを甲子園初勝利に導いた下関国際のエース・鶴田克樹

鶴田克樹(下関国際3年/180cm・93kg/右投右打)

体が大きくて、いかにも馬力がありそうな投手です。でも、コントロールがいいので強豪校を立て続けに破ることができたのでしょう。ちょっと気になるのは、コントロールを重視しているからかフォームがおとなしいこと。テイクバックを大きくとってダイナミックに投げられたら、もっと豪快な投手になれるはず。ステップもややアウトステップでロスがあるように見えるので、体重移動にも改善の余地があります。



初戦の長崎創成館戦で16奪三振を記録した創志学園・西純矢

西純矢(創志学園2年/184cm・79kg/右投右打)

投げっぷりのよさとボールの力の強さは2年生のなかでは群を抜いています。故障さえなければ、間違いなく来年のドラフト1位の素材でしょう。右打者の方向にボールがシュートして抜けることが多いので、体の中心にまとめるようなフォームになるといいですね。リリースの過程で右腕が途中で窮屈になって、腕を逃がすように投げることが強いシュート回転の原因でしょう。もう少し前でリリースできるようになると、今まで以上にキレのあるボールを投げられるでしょう。



甲子園開幕戦で150キロをマークした星稜の2年生エース・奥川恭伸

奥川恭伸(星稜2年/183cm・82kg/右投右打)

2年生で唯一、侍ジャパンU-18代表に選ばれたそうですが、それもうなずける素材のよさですね。すでにプロ野球選手のような体をしていて、オーソドックスでクセのないいい投げ方をしています。西くんもそうですが、2年生の時点で150キロを出せるのはすごいこと。これからまだ体に力がつきそうですし、もっと腕が走るようになればボールの伸びが増すはず。現時点でトップクラスの素材であることは間違いありません。



昨年夏も甲子園のマウンドを踏んだ最速152キロ左腕・横浜の及川雅貴

及川雅貴(横浜2年/182cm・74kg/左投左打)

知り合いの某球団編成担当者が「来年のナンバーワン」と言っていました。サウスポーで145キロが楽に出ますし、キレも十分。まとまりとバランスのよさを感じさせるフォームです。リリースする位置が高くないので、横に曲がる変化球と小さく変化する球種を磨いて勝負するのがいいでしょう。今はあえてストレートとスライダーの2つの球種に絞っているそうですが、いい試みだと思います。気がかりは、頭と手が離れる投げ方で制球がつきにくいということ。本人の投げやすさもありますが、ちょっと考えてみるといいでしょう。



甲子園で自己最速の149キロをマークした木更津総合の本格派右腕・根本太一

根本太一(木更津総合2年/181cm・85kg/右投右打)

力感のないフォームなのに、140キロ台後半のボールがバシバシ決まる。楽しみな2年生投手ですね。左足を右足に巻きつけるような特徴的な足の上げ方から、リラックスしてゆったりとしたモーション、リリースのタイミングまで自分の感覚を持っていることを感じます。だから球速だけではなく、球の走りも素晴らしいのでしょう。まだ長いイニングを任されていないようですし、これから大事な役割を任されてどうなるか。マウンドでの態度に焦りが見えないところも含めて、楽しみな投手です。



根上中学時代、U-15日本代表メンバーとしてアジア選手権優勝を飾った星稜の1年生投手・寺西成騎

寺西成騎(星稜1年/186cm・79kg/右投右打)

1年生の時点でこれだけ投げられれば、何も言うことはありません。まだ体に力がないので、リリースで押すところがありますが、いかにしてボールを前まで持ってきて切るようにリリースできるか。とはいえ、15歳で143キロを投げられるなら十分、立派です。2年後、さらにその先での成長を楽しみにしています。

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 今夏の甲子園は昨夏に続いて「投低打高」と言われていたようですが、私はまったくそんな印象はありません。こうして見ると、素晴らしい投手の素材はたくさんいました。下級生にも楽しみな逸材が多くて、来年以降も見どころがありますね。

 これから10月25日のドラフト会議に向けて、甲子園に出られなかった高校生や大学生、社会人、独立リーグにもどんな選手がいるのか、チェックしてみたいと思っています。