激闘を制し、安堵の表情を浮かべていた錦織圭 4時間8分におよぶ激戦を制した瞬間、錦織圭は、コーチたちに向かって両手を上げ、満面の笑みで勝利の喜びを分かち合った――。 グランドスラム今季最終戦・USオープン準々決勝で、第21シードの錦織(…



激闘を制し、安堵の表情を浮かべていた錦織圭

 4時間8分におよぶ激戦を制した瞬間、錦織圭は、コーチたちに向かって両手を上げ、満面の笑みで勝利の喜びを分かち合った――。

 グランドスラム今季最終戦・USオープン準々決勝で、第21シードの錦織(ATPランキング19位、8月27日づけ/以下同)が、第7シードのマリン・チリッチ(7位、クロアチア)を、2-6、6-4、7-6(5)、4-6、6-4で破り、3年ぶり3度目のベスト4に進出した。

 2014年USオープン男子決勝の再現となった今回の準々決勝。あの時、初めてグランドスラム決勝に進出した錦織は、準決勝までの戦いでエネルギーをほとんど使い果たしてしまい、もはやチリッチに勝てるほどの力は残されていなかった。

 今回も序盤では、チリッチが好調で第1セットを6-2で取り、さらに第2セットも4-2までリードを奪った。4年前の決勝を思い起こさせるような展開で、錦織は内心穏やかではなかった。

「2セット目の途中まで、本当にこの前と一緒の展開だと思った。自分が何もできずに、ミスも早いし、彼の攻撃的なテニスにやられている。どうにかして払拭したい」

 こう考えていた錦織は、第2セット第7ゲームのチリッチのサービスをラブゲームでブレークに成功し、これがきっかけとなった。

「ちょっと気持ちがふっ切れて、(自分の)ショットの精度が上がって来た。そこからやっと自分のリズムをつかみ始めた」

 逆転で第2セットを錦織が取り返すと、第3セットでは錦織がタイブレークを制した。第4セットでは、劣勢になっても強気な姿勢を貫こうとするチリッチが息を吹き返して2セットオールとなった。

 そして、ファイナルセットでは、錦織が第4ゲームを先にブレークして、第5ゲームをキープし4-1としたが、チリッチが第7ゲームをブレークバックして第8ゲームをキープし4-4に追いつく。だがチリッチは、ラリー戦になると、錦織の深めのグランドストロークに多くのミスを強いられた。第10ゲームで、錦織が最初につかんだマッチポイントでは、フォアクロスのリターンウィナーを放ち、再びチリッチのサービスをブレークして激戦にピリオドを打った。

 結局、錦織は45本のミスをしたものの、フォアハンドの9本を含む29本のウィナーを決めた。一方、チリッチは、57本のウィナーを決めたものの70本のミスをし、錦織に勝つにはミスが多すぎた。

 じつは、同日に大坂なおみも、USオープンで初のベスト4に進出している。グランドスラムで日本男女が共にベスト4に進んだのは、1968年のオープン化(プロテニス解禁)以降、日本テニス史上で初めての出来事になり、新たな歴史がつくられた。

 錦織も大坂の活躍を喜んでいる。

「彼女はよくやっている。今、彼女はグランドスラムのタイトルさえも勝ち取ることができると思う」

 また、自分自身もチリッチという世界のトップ10選手を再び倒して、ニューヨークでの相性のよさを披露するとともに、昨年の右手首のけがを経て、錦織のテニスが再びトップレベルに戻ったことを証明してみせた。

「(この勝利は)大きいと思います。今週初めてこんなに競った試合でした。特に出だしのああいう中から戻って来られた。最後まで勝敗は本当にわからなかったですけど、最後チャンスをモノにできて、勝利することができたので、大きな自信になったと思います」

 こう語った錦織は準決勝で、第6シードのノバク・ジョコビッチ(6位、セルビア)と対戦する。対戦成績は、錦織の2勝14敗で、現在13連敗中。錦織の勝利は2014年USオープン準決勝まで遡らないといけない。

「そのこと(ニューヨークで勝ったこと)を忘れていました。ここニューヨークではいつもいい思い出がある。ノバクに対しては対戦成績がよくないし、ここ数年タフマッチばかりです。チャンスがあっても、最後の詰めでうまくプレーできていない」

 一方、ジョコビッチは、錦織の才能を評価し、決して油断はない。

「(圭は)ベストなダブルバックハンドのひとり。ツアーで最も動きの速いひとりで、素晴らしいフットワークをしている。彼が本調子なら、間違いなくトップ5、トップ10の選手だ。タフな試合になると思う」

 USオープンで3度目の準決勝を戦う錦織は、「ノバクと戦うのは、いつもエキサイトなことだし、自分にとっては素晴らしいチャレンジです」と気を引き締める。果たして、錦織が、4年前のように強敵ジョコビッチに勝って、グランドスラム2度目の決勝に進めるのか、最大の挑戦が始まる。