8月31日、ジャパンラグビートップリーグの16年目のシーズンが幕を開ける。ラグビーワールドカップを来年に控え、日本代表やサンウルブズの活動期間を確保するため、今年は16チームをふたつのカンファレンスに分けてリーグ戦を開催。そして11月…

 8月31日、ジャパンラグビートップリーグの16年目のシーズンが幕を開ける。ラグビーワールドカップを来年に控え、日本代表やサンウルブズの活動期間を確保するため、今年は16チームをふたつのカンファレンスに分けてリーグ戦を開催。そして11月の代表月間を挟んだのち、12月に順位決定トーナメントを3試合行ってトップリーグ王者を決める。


3連覇を狙う

「絶対王者」サントリーに入団した梶村祐介

 2年前にニュージーランド出身のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)が就任し、日本代表メンバーもおおよそ固まってきた。だが、指揮官は「トップリーグに目を向けている。可能なかぎり多くの試合を見ていく」と公言しているように、その門戸はまだ閉ざされていない。

 そこで注目したいのは、大学を卒業したばかりのルーキーたちだ。トップリーグの新人賞は過去16名(2013年度のみ2名)が受賞しているが、実はそのうち14名が日本代表になっている。つまり、トップリーグの新人賞は「桜のジャージーへの登竜門」的な位置づけとなっており、その後もW杯に出場するなど日本代表の中心メンバーとなる選手も多い。

 現在の日本代表を見ても、SH(スクラムハーフ)田中史朗(パナソニック/2007-2008)、LO(ロック)真壁伸弥(サントリー/2009-2010)、FL(フランカー)リーチ マイケル(東芝/2011-2012)、PR(プロップ)稲垣啓太(パナソニック/2013-2014)……などなど、過去の受賞者は実に豪華な面々だ。昨年度はFL姫野和樹(トヨタ自動車)が新人賞に輝いている。

 まず、3連覇のかかるサントリーサンゴリアスには、有望な新人4名が一気に加入した。「うちは即戦力にならないルーキーは取らない。楽しみにしておいてください」と沢木敬介監督が言うとおり、開幕直前に行なわれた練習試合では、明治大を大学選手権・準優勝に導いたCTB(センター)梶村祐介、帝京大キャプテンとして9連覇を成し遂げたPR堀越康介、そして帝京大の副将だったWTB(ウイング)尾崎晟也(せいや)の3人が先発出場を果たしている。

 なかでも、エディージャパン時代に高校生ながら代表合宿に練習生として招集された梶村は注目だろう。U20日本代表で薫陶を受けた沢木監督のもとで「ラグビーがしたい!」と入団を決意した梶村は、「ラグビーについて考える時間が増えました。体重も3kg増えて、フィットネスもスピードも上がった」と、チャンピオンチームのなかで成長の手応えを掴んでいる。

「大学時代はポジションが約束されていたが、今はそうではない。開幕戦への出場を狙っていきたい」と意気込む若きCTBは、基本的に12番を任されるだろうが、時には13番としても試合に出場しそうだ。いまだ日本代表には呼ばれておらず、2019年W杯出場への道のりは厳しいが、「まずサントリーで結果を出すことが、これからにつながる」と、前向きに捉えている。

 一方、同期の堀越や尾崎は大学時代、若手主体のチームで臨んだアジア勢との試合で日本代表を経験している。堀越はチーム事情により、今季は慣れ親しんだHO(フッカー)でプレーしながらPRでの出場機会も増えそうだ。大学2年時まで左PRでプレーしたので、それにも問題なく対応できるだろう。また尾崎も、チームには昨年度トップリーグMVPの松島幸太朗がFB(フルバック)のポジションに君臨しているため、まずはWTBで出場機会をうかがう。

 そのサントリーに対し、3年ぶりの王者奪還を誓うパナソニックワイルドナイツにも有望な新人が入ってきた。東海大の主将だったFB野口竜司だ。すでにサンウルブズでデビューを果たしており、日本代表キャップ数も13を誇っている。藤田慶和や森谷圭介といった先輩たちからポジションを奪うことができるか、この大型ルーキーからも目が離せない。

「W杯出場にはチャンスがある」と野口は言いつつ、日本代表で同じポジションの選手と比べて「足りない部分がある」とも感じている。「タックルされても前に出る強さ、スキルを磨いていきたい」と語っており、トップリーグの舞台でどれだけ活躍できるか注目したい。

 また、パナソニックの新人には、東福岡高から大学を経由せずに加入したFL福井翔大もいる。9月28日の誕生日までに出場することができれば、史上初めての「18歳トップリーガー誕生」となるが、果たして……。

 そして、昨年度の新人王を獲得した姫野を輩出したトヨタ自動車には、8名もの新人が加入した。チームを率いるのは、2007年に指揮官としてW杯優勝を経験したジェイク・ホワイト監督。就任2年目の今季は「日本代表に選手が輩出することが、自分の役目のひとつ」と語るように、今年も積極的に若手を起用しそうだ。「開幕から新人を5人、メンバーとして起用する可能性もある」と発言している。

 東海大出身で日本代表5キャップの左PR三浦昌悟、昨年度まで天理大のスクラムを支えた右PR木津悠輔、帝京大時代にスピード豊かなランでファンを魅了したCTB岡田優輝……。彼らは初年度から活躍する可能性を秘めており、新人賞は今季もトヨタ自動車の選手が獲得するかもしれない。

 ほかには、ヤマハ発動機ジュビロにはタックルが魅力の東海大出身CTB鹿尾貫太と、SH矢富勇毅の弟の帝京大出身WTB矢富洋則、東芝ブレイブルーパスには7人制日本代表の摂南大出身WTBジョネ・ナイカブラ、NTTコミュニケーションズシャイニングアークスには東海大出身のCTB池田悠希、さらには初昇格の日野レッドドルフィンズには日体大出身のWVB竹澤正祥……などなど。今季のルーキーは注目したい逸材が多い。

 そのなかでも、とくにブレイクを期待している選手がいる。それは、日本代表No.8(ナンバーエイト)アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)の出身大学である花園大から豊田自動織機シャトルズに加入したWTBシファ・リサラだ。

 リサラは大学時代から7人制日本代表のエースとして名を馳せていた逸材である。昨年5月のワールドシリーズ・パリ大会ではブレイク数やオフロードパスなどで全選手中トップの数字を記録し、「インパクトプレイヤー賞」に選出。今年4月に香港で開催されたワールドシリーズの昇格大会でも中心選手として躍動した。リオデジャネイロ五輪にも出場したHonda HEATの日本代表WTBレメキ ロマノ ラヴァのような存在感で、一気に15人制の日本代表になり得るポテンシャルを秘めている。

 まだ24歳だが、すでに日本人女性と結婚しており、8月末に日本国籍を取得した。シオネムリ貫太郎とソアペ金太郎というふたりの息子を持つリサラが日本代表に加われば、パワーとスピードを兼ね備えたランでトライを量産してくれるだろう。

 トップリーグ新人賞は各チームの監督、主将、記者による投票で決まる「ベスト15」とは違ってリーグ自体が決定し、過去15回は年間総合順位の5位以上のチームから選ばれている。慣例どおりだとすれば、どの選手も個々のパフォーマンスはもちろんのこと、チームの上位進出を後押しすることも欠かせない。

 昨年新人賞を受賞した姫野は、トップリーグでの活躍そのままに日本代表まで駆け上がった。2019年W杯に日本代表として出場する若手は台頭してくるのか、今季のトップリーグに注目したい。