「正直、春の時点では『今年は大変だな……』って思っていました。大阪桐蔭の根尾昂(ねお・あきら…

「正直、春の時点では『今年は大変だな……』って思っていました。大阪桐蔭の根尾昂(ねお・あきら)、藤原恭大(きょうた)以下は力が離れちゃうかなと……。それが夏になって盛り上がってきた。収穫はありました。2年生の逸材も多くいたし、来年への楽しみができた大会になりました」

 あるパ・リーグ球団のスカウトがそう語ったように、春の段階で注目されていた大阪桐蔭の2人以外にも報徳学園の小園海斗、金足農の吉田輝星(こうせい)らスターが誕生。春は「目玉不足」と嘆いていたスカウトたちも大満足の大会となった。



190センチの長身から150キロ近い速球を投げ込む浦和学院・渡辺勇太朗

 今大会のビッグ3は根尾、藤原、小園の3人で、どのスカウトに聞いても「ドラフト1位確実」と太鼓判を押す。

 そのなかでも、とくに人気が高いのが根尾だ。

「見るたびに成長している。去年はショートができるのか? 外野手になっちゃうんじゃないかと思っていたけど、今は十分ショートを守れる。学習能力がある証拠。プロは考える力があるヤツが生き残る世界。ピッチャーとしても可能性があるし、本当に楽しみな選手です」(パ・リーグ球団スカウトA氏)

「根尾、藤原、小園の3人を比較して、春から夏にかけて一番技術が上がったのは根尾でしょう。将来性はナンバーワン。松井稼頭央や今宮健太を想像していたけど、間違いなく今宮以上にはなる。メジャーでプレーした松井レベルまでいけるかどうか」(パ・リーグ球団スカウトB氏)

「スピード、柔軟性、体のキレに加えて、天性のパワーと瞬発力もある。体勢が崩れても投げられるボディバランスは素晴らしい」(セ・リーグ球団スカウトC氏)

“伸びしろ”という意味でもっとも魅力なのが根尾という評価だ。

 一方で、藤原、小園はすぐにでもプロで使えるという声が上がる。高校生の左投げの外野手は評価が低くなりがちだが、それをいっさい感じさせないのが藤原だ。

「スピードはほれぼれするね。ストライドが大きく、ダイナミックな走りをする。盗塁のスピードというより加速がすごい。プロで二塁打、三塁打の記録をつくるんじゃないかな。プレーに強さがあるし、常に安定して結果を残すのも重要な部分だね」(A氏)

「バッティングの際、フォロースルーが素晴らしい。沖学園戦の逆方向(レフト方向)のホームランは外の球を狙って打った見事な一発。ボールに対する集中力がすごい。『やってやろう』という気持ちが空回りしないのもいいね」(セ・リーグ球団スカウトD氏)

 ただ、今回を含め4度甲子園に出場している藤原だが、万全の体調で迎えたのはこの夏が初めてとあって、「故障が怖い」と話すスカウトもいた。

 この2人に勝るとも劣らない評価を得たのが、報徳学園の小園だ。初戦の聖光学院戦で3本の二塁打を記録。一般的に、二塁到達タイムが8秒を切るとかなり速いと言われるが、小園は7秒7台を連発。驚異のスピードをスカウトたちに見せつけた。

「守備と走塁は問題ない。打撃が課題だったが、非力さがなくなった。もともとバットに当てるのが上手な選手で、走攻守の三拍子が高いレベルで揃った。去年のU-18世界大会や甲子園など、大舞台で力を発揮できるのもいいね」(A氏)

「社会人、大学も含めて、アマチュアでナンバーワンのショート。少なくとも10年はレギュラーを張れる選手。性格もプロ向きっぽいし、今回の活躍で評価がグーンと上がりました」(B氏)

 とくに守備は、「プロでも二軍なら即レギュラー。一軍でも通用するレベル」と高評価だ。

 この3人に加え、今大会で外れ1位候補に浮上してきたのが、浦和学院の190センチ右腕・渡辺勇太朗。3月上旬に右ヒジを痛めた影響で春の県大会はベンチ外だったが、甲子園初戦の仙台育英戦で149キロをマークするなど、底知れぬ可能性を感じさせた。

「スケールは間違いなく高校ナンバーワン。大きいだけでなく、柔らかさもある。ボールにボリューム感があって、ベース上でブワッと広がってくる感じ。コントロールも悪くないし、指先の感覚もいい。今は突き上げる投げ方だけど、上から叩けるようになったら面白い」(B氏)

「ゆったりしたフォームで余力十分。将来性はナンバーワン。3~5年後にはローテーションの中心になっている可能性がある」(D氏)

 投手で渡辺に次いで高評価を得たのが、2試合連続2ケタ奪三振を記録した金足農の吉田だ。149キロを記録したスピードだけでなく、けん制やフィールディングもうまい。また、秋田県大会からひとりで投げ抜くスタミナも魅力だ。

「初戦(鹿児島実戦)は県大会より出来がよくなかったけど、それでもこれだけ投げられるんだ(14奪三振)というのを見せてもらった。けん制やバント処理などを見てもセンスを感じるし、マスクもいい。あえて注文を出すとすれば、決め球となる変化球がほしいね」(A氏)

「フォームに無駄がないから、コントロールが乱れない。真っすぐの質も素晴らしいし、ギアの上げ方やペース配分もいい。総合力が高く、器用な投手だね」(B氏)

 高評価を受ける吉田だが、「大学進学が有力」との噂がある。あるスカウトは「選手には”売り時”がある。とくに投手はいつ故障するかわからないし、高卒でプロに入ってもらいたいね」と語るように、最終的に吉田自身がどんな決断をするのか注目される。

 このほか、「3位以内には入る」と評価されたのが花咲徳栄の野村佑希。全国制覇を成し遂げた昨年も2年生で4番を任されたが、今夏は「4番・エース」として2本塁打を放った。

「去年のビッグ3(清宮幸太郎、安田尚憲、村上宗隆)より、ちょっとだけ下というレベル。それぐらいパワーは立派。当たれば飛ぶし、スケールがある。問題はプロでどこを守るかということだけど、肩があるからいろんなポジションに挑戦させられる。巨人の岡本和真ぐらいになる可能性はある」(A氏)

 ここまでがドラフト上位候補だが、下位指名で名前の挙がりそうな選手はまだまだいる。筆頭が、大阪桐蔭のエース・柿木蓮。沖学園戦ではリリーフで登板し、自己最速となる151キロを出してアピールした。

「春から成長している。1イニングであれば、150キロを出せるエンジンがあることがわかった。能力が高く、まだまだ成長できる」(B氏)

 バッターでは、まず横浜の大砲・万波中正。甲子園ではここまで不発だが、神奈川県大会で特大のホームランを放つなど、長打力は一級品。

「フリーバッティングを見たらすごいよ。詰まっても、バットの先に当たっても飛んでいく。柔らかさがあるし、素材にはほれぼれする。ただ、打席でどう打つかというプランがまるでない。これでは永遠に開花しない可能性がある(笑)。獲るとしたら完全に”ドリーム枠”。素材のよさに賭けるしかないね」(C氏)

 同じく今大会は不発だったが、智弁和歌山の林晃汰のパワーを評価する声もあった。

「ボールの見極めができないのは課題だけど、スイングスピード、パワー、飛距離は魅力だね」(D氏)

 浦和学院の蛭間拓哉は174センチと小柄ながら、仙台育英戦でホームランを放つなどアピールした。

「センスを感じる。荒井幸雄(元ヤクルト)や雄平(ヤクルト)をイメージした。上背はないけど、体は強いし、スイングも速い」(B氏)

 また、創成館の185センチ左腕の川原陸、山梨学院の183センチ、93キロの巨漢左腕・垣越建伸、191センチ、88キロの”福岡のゴジラ”、折尾愛真の松井義弥らは「育ててみたい素材」と育成枠も含めれば指名の可能性があるという。

 ちなみに、今大会は全チームが初戦を終えた段階で、140キロ以上を記録した投手が37人。145キロ以上でも13人いた。

「情報化社会になり、練習方法やトレーニング方法を簡単に学べる時代になった。昔とは体の成長が変わった。1年生が145キロ(明石商・中森俊介が記録)なんて、僕らの時代には考えられなかったからね。個々の能力は年々上がっている」(A氏)

 レベルが高いために埋もれていたり、目立たない選手もいるはず。高校卒業後、大学、社会人に進む予定の選手も含め、今回名前は挙がらなかったなかにも将来のドラフト候補はたくさんいる。

 ビッグ3はもちろん、100回大会世代の球児がどこまで成長するのか。今後の活躍から目が離せない。