日本代表FW武藤嘉紀のニューカッスル・ユナイテッド移籍が決まった。 契約期間は4年で、移籍金は950万ポンド(約14億円)。就労ビザも無事に取得した武藤は、入団発表後、ビザ書類の手続きのためにイギリスを一度離れた。そのため、8月4日に…

 日本代表FW武藤嘉紀のニューカッスル・ユナイテッド移籍が決まった。

 契約期間は4年で、移籍金は950万ポンド(約14億円)。就労ビザも無事に取得した武藤は、入団発表後、ビザ書類の手続きのためにイギリスを一度離れた。そのため、8月4日にホームで行なわれたアウクスブルクとのプレシーズンマッチには姿を見せなかったが、近日中にはイギリスに来る予定だ。クラブの広報によると、「8日には諸々の手続きが完了し、11日に行なわれるトッテナム・ホットスパーとのプレミアリーグ開幕戦には出場可能」だという。



晴れてニューカッスルの一員となった武藤嘉紀

 そんな武藤に対し、地元ニューカッスルでの期待は高まっている。「950万ポンドという移籍金の高さが期待の大きさを証明している」と語るのは、地元メディア『クロニクル・ライブ』でニューカッスルの番記者を務めるリー・ライダー氏だ。同記者は武藤獲得の背景について、次のように明かした。

「武藤は長い間、クラブの補強ターゲットだった。具体的に話が進み始めたのは、昨年の夏に行なわれたマインツvs.ニューカッスルのプレシーズンマッチ。私もこの試合を取材したが、武藤は運動量が多く、活力に満ちたいい動きを見せていた。チャンスを作り出そうと精力的に動いていたし、FWながら守備意識も高い。好印象を抱いたことをよく覚えている。

 ラファエル・ベニテス監督も同じ印象を持ったようで、昨年冬の移籍市場で武藤にオファーを出した。そのときは実現しなかったが、今夏に商談がまとまることになった。武藤の獲得は、ベニテス監督の希望で決まった」

 ニューカッスルの課題は得点力不足にある。昨季はリーグ中位の10位でシーズンを終えたが、得点数はリーグ上位14チームのなかで2番目に少なかった。守備組織の構築に定評のあるベニテス監督のおかげで失点数こそリーグ7位の少なさだったが、貧打に泣いて勝ち点を落とす試合も少なくなかった。

 昨季のチームには、イングランド出身のドワイト・ゲイルとスペイン人のホセルという、ふたりのセンターフォワードが在籍した。しかし、ゲイルは昨季リーグ6得点、ホセルは同4得点と、十分な成績を残せなかった。

 そこでベニテス監督は、今オフにFW陣のテコ入れを行なった。まず、指揮官の期待に応えられなかったセルビア代表FWアレクサンダル・ミトロビッチをフルハムに売却。さらに、素行に問題のあったゲイルもWBAへ放出した。また、191cmの長身を誇る既存戦力のホセルも肝心のフィニッシュワークと身体のキレがいまひとつで、決定力不足が目立つ。

 それゆえ、かねてよりターゲットにしていた武藤を獲得した。さらに6日には、2部に降格したWBAからベネズエラ代表FWサロモン・ロンドンを1年のレンタルで補強した。

 要するに、ベニテス監督はFWの陣容を刷新したかったのである。

 では、武藤はどの位置で起用されるのか。「マインツではセンターフォワードとしてプレーしたが、日本代表ではFWに加え、ウィンガーとしてもプレーしていたが……」筆者がそう質問をぶつけると、前出のライダー記者はニューカッスルのメンバー表を示しながら、次のように答えた。

「基本布陣は4-2-3-1。チームのストロングポイントは、スコットランド代表MFマット・リッチーと、チェルシーからレンタルで在籍しているMFケネディの両ウィングだ。彼らはスピード、突破力とも十分で、スタメン起用は間違いない。

 ここに、セントラルMFのジョンジョ・シェルビーがロングフィードや縦パスを入れて、攻撃を構築している。しかし、チャンスを得点に結びつける絶対的なセンターフォワードが不在だった。だから、武藤を獲得し、ロンドンの補強にも動いた」

 ライダー記者はFWの定位置争いについても言及した。

「1トップの場合はロンドンと武藤がポジションを争うことになるが、ベニテス監督の頭のなかには4-4-2で2トップの選択肢もある。武藤を2トップの一角として起用することも可能だろう。

 さらに、フィジカルプレーに強いロンドンと武藤は、そもそもプレースタイルが違う。対戦相手や試合展開によって、ふたりを使い分けるだろう。また、リッチーやケネディをケガで欠くことになれば、サイドMFとして起用するオプションもある。こうしたユーティリティ性も、ベニテス監督が武藤を獲得した要因のひとつだ」

 武藤の評価ポイントで、ライダー記者がとくに強調していたのが、武藤の「インテンシティの高さ」「運動量の多さ」「守備意識の高さ」だった。昨季のニューカッスルは前半こそアグレッシブな姿勢で試合を支配するも、後半に入ると途端に失速し、勢いもプレー強度も尻すぼみになることが多かった。

 こうした悪癖は、「我々が必要としているエネルギーとインテンシティを、武藤はもたらしてくれる」というベニテス監督の言葉にも重なってくる。スペイン人指揮官は、武藤の加入でチームに必要なポイントを補えると期待しているわけだ。