今季早々に監督交代に踏み切った浦和レッズが、シーズン半ばを過ぎてようやく調子を上げてきた。 オズワルド・オリヴェイラ監督が指揮を取るようになったのは第10節の柏レイソル戦から。当初は結果を出せなかったものの、ワールドカップ中断明け後は…

 今季早々に監督交代に踏み切った浦和レッズが、シーズン半ばを過ぎてようやく調子を上げてきた。

 オズワルド・オリヴェイラ監督が指揮を取るようになったのは第10節の柏レイソル戦から。当初は結果を出せなかったものの、ワールドカップ中断明け後は3勝1分と復調し、しかも第18節には首位のサンフレッチェ広島を4-1、第19節には昨季王者の川崎フロンターレに2-0の快勝と、決してフロックではない、たしかな力をつけているようにうかがえた。



柏木陽介は懸命にレッズの攻撃を引っ張ったのだが......

 果たして、好転の要因はどこにあるのか――。それを探るべく、埼玉スタジアムで行なわれたV・ファーレン長崎戦に赴いた。

 結論から言えば、この日の浦和には安定感こそあったものの、強さまでは感じられなかった。隙を見せなかった一方で、決定的なチャンスはほとんど作り出せず、0-0というスコアが妥当な内容だった。

 開始早々、ファブリシオのパスに抜け出した興梠慎三が惜しいシュートを放ったものの、それ以降の浦和は急激に勢いを失った。その原因は、つなぎのクオリティにあっただろう。

 この日の浦和はビルドアップを狙うのではなく、長いボールで前線を走らせる攻撃が多かった。前節の川崎F戦でもロングフィードが先制点の起点となっており、あえてそのスタイルを狙っていたとも思われたが、そもそもこの戦略は川崎Fのようにポゼッション型のチームには有効な手段。逆に長崎はカウンター型のチームであり、本来であれば浦和がボールを長く持つこともできたはずだったが、長崎に合わせるように浦和もまた、長いボールを蹴ってしまっていた。

 その原因は、長崎の献身的なプレスをかわすだけのボール回しができなかったからだ。長崎が長いボールを蹴り込んでくるため、ボールを奪える位置は必然的に後方に押しやられるが、そこからつなごうとしてもうまく回せず、結局長いボールに逃げてしまう。フィードを狙ったのではなく、蹴らされていたというのが現実だろう。

「前からはめられて、蹴らないといけないというのが、自分たちのよさを一番出せない状況になる」という柏木陽介の言葉からも、想定外の展開であったことがうかがえる。

 ハーフタイムのオリヴェイラ監督のコメントからは、浦和の本来の狙いを知ることができた。

「(前半)最後のファブリシオのシュートシーンが、我々が何をしなければいけないかを表している」

 そのシュートシーンとは、前半アデショナルタイムの場面。右サイドに流れた柏木からのパスに反応した武藤雄樹がペナルティエリア内でポストプレーをこなし、後方から走り込んできたファブリシオが決定的なシュートを放つ。相手GKの好セーブにあってゴールとはならなかったが、バイタルエリアで連動したこの決定機こそが、浦和の狙いを体現していた。

 そうした状況を、さらに作り出したかったのだろう。59分、オリヴェイラ監督はボランチの青木拓矢に代えて阿部勇樹を投入。阿部に後方でのつなぎと守備の役割を託し、柏木を前方に押し上げる。前の人数を増やし、高い位置での連動性を求めた。

 実際にそこからしばらくは、浦和の攻撃に迫力が生まれた。前で連動し、ギャップを突いて長崎ゴールに迫っていく。もっとも、その時間も長くは続かなかった。前がかりになった分、背後にスペースが生じ、そこを鈴木武蔵に突かれてこの日最大のピンチを迎える。鈴木のシュートはポストにはじかれて救われたものの、このプレーを境(さかい)に、ふたたび浦和は前に人数をかけられなくなった。

 以降は球際の攻防や、走力という部分に闘う意識は垣間見えたものの、お互いにゴールへの道程を見出すことができず、時間だけが刻々と過ぎていく。浦和はアディショナルタイムに再度猛攻を仕掛けたが、その迫力とは裏腹に決定的な場面までは作り出せず、結局ゴールが生まれないままタイムアップの笛を聞いた。

 その瞬間、頭を抱えるオリヴェイラ監督と、拳を握る高木琢也監督――。勝ち点1を分け合う結果となったものの、狙いどおりに試合を運んだのは長崎のほうだったといえる。

 浦和のジレンマが見えた試合でもあった。カギを握るのは柏木だ。

 柏木が下がってボールを受ければ、ビルドアップはスムーズになるが、前線の連動性を失う事態を招く。一方で高い位置に上がれば、後ろでボールが回らなくなる。いずれの状況でも、”柏木の不在”が響いてしまっていた。

「試合の流れを見ながら引いたり、前に出ていったりということはできているし、落ち着いてプレーできている」と、柏木は状況に応じたポジション取りをしていると明かす。ただし、いいポジショニングが成果につながらない。より苦悩が感じられたのは、高い位置を取ったときだ。

「俺が前を向いている瞬間、(興梠)慎三以外、前にいってくれないというのがある。でも、慎三だけだと、そこのラインは読まれているから、出すのは難しい。警戒される分、次の人が動いてくれないと。足もとだけではなく、スペースで受けるというところを突き詰めてやっていきたい」

 もちろん、前に人数がかかれば、カウンターの餌食になりやすい。そのリスクを排除している分、今の浦和には安定感がある。広島、川崎Fに次ぐ失点の少なさが、好調の要因のひとつだろう。

 ただし、この日の引き分けで、浦和の引き分けの数は7となった。これは、セレッソ大阪に次ぐリーグ2位タイの多さである。手堅さはあるものの、勝ち切れない。これが今の浦和が抱える最大のテーマだろう。

 手堅さを保つのか。それともカウンターのリスクを受け入れ、前に人数をかけるのか――。柏木の意思表示は明白だ。

「狙っていかないと、サッカーは始まらない」

 8位にとどまる浦和は残り14試合でどこまで巻き返せるのか。「狙っていく」姿勢こそが、キーファクターとなる。