2018年のMLBニューカマー@ナ・リーグ編 大谷翔平選手の衝撃デビューがアメリカ全土で話題となったメジャーリーグ前…
2018年のMLBニューカマー@ナ・リーグ編
大谷翔平選手の衝撃デビューがアメリカ全土で話題となったメジャーリーグ前半戦。ロサンゼルス・エンゼルスの所属するア・リーグに対し、ナ・リーグではどんなニューカマーが台頭してきたのか。シーズン前半戦で注目を集めた投打の若手有望株をピックアップしてみましょう。
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度肝を抜く球速で一躍脚光を浴びたジョーダン・ヒックス
まず、ピッチャーでは、ジョーダン・ヒックス(21歳)を紹介しなければならないでしょう。ナ・リーグ中地区に所属するセントルイス・カージナルスの若きリリーフ投手です。
ヒックスはテキサス州のヒューストン出身。テキサスといえば「伝説の速球王」ノーラン・ライアンを筆頭に、幾多の豪腕投手を生み出してきた土地です。ヒックスもアマチュア時代から剛速球で名を馳せ、2015年のドラフト3巡目・全体105位でカージナルスに入団しました。
プロ入りしてから昨年までの3年間、ヒックスはずっとマイナー生活でした。しかも、シングルAより上で投げたこともありません。しかし、今年のキャンプに招待選手として呼ばれたときに好投を披露し、見事に25人の開幕ロースターに選ばれました。
3月29日、ニューヨーク・メッツとの開幕戦。ヒックスは5番手としてマウンドに立つチャンスを掴みます。そして、衝撃だったのは、その初球です。ヒックスの投げた球は、なんと100.3マイル(約161.4キロ)をマーク。さらに、最速101.6マイル(約163.5キロ)のボールを投げて関係者の度肝を抜きました。
その後の試合でも、ヒックスの豪腕ぶりは止まりません。投げるごとに100マイル級の記録を連発。そして5月20日のフィラデルフィア・フィリーズ戦では、あの「人類最速男」アロルディス・チャップマンのメジャー記録に並ぶ105マイル(約168.9キロ)を2度もマークするという快挙を成し遂げたのです。
7月1日時点でヒックスの投げた球が100マイル以上を計測した球数はメジャートップの236個。それに対し、メジャー2位のチャップマンが投げた100マイル以上の球数は126個。しかも、ヒックスが100マイル以上を投げた球数は投球数全体の38%を占めていました。いかにヒックスの内容が群を抜いているかがわかるでしょう。
また、2015年からメジャーリーグに導入された解析システム「スタットキャスト」でも、驚くべきデータがわかりました。じつは、ヒックスの投げたツーシームは最速100マイル(約160.9キロ)、フォーシームは最速99.5マイル(約160.1キロ)だったのですが、それに対してシンカーのスピードで最速105マイル(約168.9マイル)を計測していたのです。
従来のピッチャーなら、シンカーのほうがフォーシームよりスピードは落ちます。この球速でシンカーを投げられたら、メジャー屈指のスラッガーもそう簡単には打てないでしょう。チャップマンに与えられた「最速王」の称号は、いずれヒックスが継承するかもしれません。
一方、ナ・リーグのバッターで紹介したいのは、ワシントン・ナショナルズのフワン・ソト(19歳)という左投げ左打ちの外野手です。
ソトはドミニカ共和国出身で、2015年に16歳でプロ入りしました。そして2016年にはルーキーリーグのMVPを受賞。若手有望株として将来を嘱望される声が広がっていきました。しかし2017年、ソトはシングルAでの試合で足首を骨折。わずか32試合しか出場できなかったのです。
そんな苦難の日々を乗り越えるべく挑んだ2018年、ソトはふたたびシングルAからスタートします。その後、ダブルAに昇格して合計39試合で打率.362・14本塁打・52打点をマーク。目覚しい活躍を見せて、ついに5月20日にメジャーへの昇格を果たしました。
5月21日に行なわれたサンディエゴ・パドレス戦。ソトはメジャー唯一の10代プレーヤーとして6番レフトで初のスタメンに抜擢されます。そして2回の第一打席、ソトは初球に対して迷うことなくバットを振ると、いきなりボールをスタンドに叩き込みました。初球打ちでスリーランを放った衝撃はすさまじく、2012年のブライス・ハーパー以来となる19歳でのホームランとしても大きな話題となりました。
その後もソトの勢いは止まらず、6月13日にはニューヨーク・ヤンキースとの対戦において敵地ヤンキースタジアムで2本塁打をマーク。「野球の聖地」での公式戦では、1989年に当時シアトル・マリナーズのケン・グリフィー・ジュニア以来となる「10代のヤンキースタジアム本塁打」を記録したのです。
さらに6月21日のボルチモア・オリオールズ戦では、ついに初の4番にも抜擢。19歳での4番バッターは、1970年に当時ヒューストン・アストロズに在籍していたシーザー・セデノ以来。その試合では8回に決勝二塁打を放ち、またもソトがヒーローとなりました。
6月29日のフィリーズ戦では、彼自身2度目の2本塁打も記録。これは10代の選手としては、殿堂入りのメル・オット、ケン・グリフィー・ジュニア、ブライス・ハーパーに次ぐ4人目の快挙です。怒濤の快進撃でシーズン前半戦の話題をさらっています。
ソトがこれほどブレイクするとは、メジャー関係者も予想外でした。ナショナルズの若手有望株ランキングではナンバー1プロスペクトではなかったからです。このように毎年、突如ブレイクするニューカマーが誕生するのもメジャーリーグの魅力のひとつでしょう。
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