忙しいのが性に合う。明大ラグビー部4年の土井暉仁はそう言って、前主将の凄みを体現したいとも誓った。

 グラウンド内では、福田健太主将を含め計8名いるリーダーグループの一員。さらにグラウンド外では、チーム広報の仕事も任されている。他のリーダーと練習内容などについて話し合うかたわら、取材対応の窓口や撮影の立ち合いもこなすのだ。チーム始動時は、後輩と手分けしてホームページ用の部員名簿をまとめた。

「まぁ、僕自身も暇でいるよりは仕事があった方がいいタイプなので。ホームページに全部員のプロフィールを入れる時はしんどいなぁと思いましたけど、充実感はあります」

 芝の上でも渋く光る。大阪の強豪、常翔学園高出身の土井は、身長189センチ、体重107キロのLO。おもに背番号「4」を担い、目立たぬ仕事を遂行する。

 敵陣深い位置での鋭いキックチェイスで相手のエリア獲得を阻害する。肉弾戦で球に絡む相手防御を引きはがし、連続攻撃のテンポを保つ。タックルした後は素早く立ち上がり、防御網の穴を埋める。

 その姿に、ファンは以前の「4」を想起するかもしれない。

 19年ぶりに大学選手権決勝へ進んだ前年度のチームでは、当時主将の古川満が「4」をつけていた。献身的に動き回り、周りのランナーが躍動するのを陰で支えた。

 土井がイメージするのは、まさにその「ミツルさん」のパフォーマンスだという。

「去年からいるLOの選手は、全員ミツルさんを目標にしていると思います。わかる人にはわかる、LOらしいプレーをする人だったので。抜けた穴を、いま出ている選手がカバーしないとだめだと思う」

 今季の正LO候補には箸本龍雅や舟橋諒将のような突破役、外岡悠太郎、片倉康瑛といった黒子役が揃う。激しい競争のなか、リーダーの1人である土井はこうも続ける。

「舟橋、龍雅はキャリー(突進)で目立つ選手ですが、逆に僕やそっさん(外岡)、片倉は、ミツルさんがやっていたようなLOらしいプレーをしていかなきゃいけない。それはシーズンが始まってから、ずっと思っています」

 6月18日朝に起きた大阪北部地震では、土井の実家も被害を受けた。ガスが「4~5日」ほど止まり、水道水はしばらく濁っていたという。「オフだったので寝ていたのですけど、妹から電話がかかってきて。ケータイを見たら震度6と書かれていて、目が覚めました。家(建物自体)の被害はなかったですが、生活面はきつかったみたいです」。東京に残った土井は、遠く離れた家族を心配した。

 一方で、22年ぶりの大学日本一に向けた準備期間がどんどん流れてゆくことも意識する。

 関東大学春季大会Aグループでは、大学選手権9連覇中の帝京大を制するなどして初優勝を決めた。しかし、「向こうも僕らもまだ完成していない」。伝統校が集う関東大学対抗戦Aは9月から、日本一を決める大学選手権は12月からそれぞれおこなわれる。土井は5月に故障するもすっかり癒えたうえで、この夏を大切に過ごしたいと誓った。

「ピークは1月6日の選手権決勝で、この7、8月は秋、冬のシーズンに向けてチームを仕上げていく時期。4年生がもっとチームを引っ張って、レベルをもう一段、上げていきたい」

 自分たちで書き入れたというホームページのプロフィールをのぞいてみる。「土井暉仁」の欄をクリックすると、座右の銘は「一生懸命」、目標は「日本一」とそれぞれ確認できる。(文:向 風見也)