この春に日立リヴァーレを退団し、迷った末にJTマーヴェラスへの入団を決めた栗原恵。前回の記事では、移籍決断にいたる吉原知子監督とのやりとりなどを紹介したが、栗原は今後のキャリアをどう考えているのか。本人に直撃した。



JTマーヴェラスで新シーズンへの準備を進める栗原恵

(前編記事はこちら>>)

――JTマーヴェラスで選手生活14年目のシーズンを迎えることになりましたが、「長く現役を続けたい」というビジョンはずっと持っていたのでしょうか。

「若いときは(荒木)絵里香と『できるだけ長く現役でいたいね』と話していました。(大山)加奈は『何歳までに結婚して・・・・・・』と、その先も考えていましたけど(笑)、私にはそういうイメージはなかったですね。でも、一番体が動いていたときにケガをしたことで、急に引退が頭をよぎるようになりました。悔しくて、『絶対にこのままではやめられない!』とプレーしていましたが・・・・・・振り返ると痛々しいくらいコンディションが悪かったです。

 その頃は引退をネガティブに捉えていたこともあると思います。でも今では、日立リヴァーレを退団してからの4カ月で、引退してからも違う世界が見られることがわかりましたし、『悔いがないくらいやってこられた』という充実感もあるので、ガツガツしていたときとは違って力が抜けてきました。現役でいられるのもあと数年。1年か2年かもしれないですけど、『残り少ない期間、好きなバレーボールを思い切りやろう』と決めました」

――大山さんは結婚の時期まで考えていたとのことですが、栗原さん自身が結婚を考えることは?

「結婚はしたいと思ってできるものじゃないですから(笑)。もちろん、いつかはしたいなという気持ちは普通の女性と同じように持っていました。でも、優先順位はやはりバレーが上でした。昨年引退した(木村)沙織も、今は主婦で楽しそうですよね。それは、現役生活がすごく濃かったということの裏返しでもあると思うんです。長く日本の期待を背負うことで、苦しいこともいっぱいあったと思うんですけど、そのときの頑張りが今につながっているんだろうなと。自分もそうなるように頑張りたいです」

――現役を続けるためにはコンディション調整が重要になると思いますが、それも若手の頃とは変わりましたか?

「30歳を過ぎたあたりから体力は落ちたと思います。回復力が違いますね。昔は寝れば回復していたのが、今はそれだけじゃ補えない部分がある。チームのスタッフを頼るのは当然なんですが、自分でもかかりつけのマッサージ店を見つけたり、若い頃にはやっていなかった寝る前のセルフケアをしたりしています。そうしないと、疲労を次の日に持ち越しちゃうので」

――逆に、ベテランになったからこそのポジティブな面は?

「昔は身体能力任せで、『とにかく高く跳んで強く打つ』しかやってこなかったんですけど、悲しいことですが、ケガをしてからそのプレースタイルでは通用しなくなってしまって。なので、どうしたら1点を取れるかを考えてプレーするようになりました」

――まだ考えるのは早いと思いますが、引退後もバレーボールにかかわっていきたいと考えていますか? かつて全日本で共にプレーしていた迫田さおりさんや佐野優子さんは解説を務めていますが。

「解説は難しそうですね・・・・・・。『今のプレーはこうしたほうがよかったですね』などと言えたほうが、聞いてる側は絶対楽しいじゃないですか。でも、私は選手の気持ちがわかっちゃうので、『今のプレーはちょっと・・・・・・でもわかるな。ああなっちゃうときもあるよね』と思ってしまう(笑)。向いていないなと思います」

――指導者はいかがですか?

「子どもたちとバレーをするのはすごく楽しいですね。『バレーボールを好きになってもらいたい』という気持ちが原点にあるので、高校生、中学生、小学生を対象にした指導は積極的にやりたいです。ただ、バレーボールの難しさをわかっていますから、勝つための指導になると楽しいばかりではいけなくなります。最近、『将来的にコーチはどうなの?』と聞かれることもあったんですけど、『私はそういうのはないですね』と答えていました。指導者の道は考えず、今は選手としてプレーするだけだと思っています」



JTの背番号10をつけた栗原の、今後の活躍が期待される

――選手として迎える新シーズンの目標は?

「JTでみんなと一緒に優勝することですね。私も10年以上現役を続けてきて、優勝したのはパイオニア(レッドウィングス)時代の1回だけですし。Vリーガーで優勝を経験しないでやめていく選手もたくさんいる中で、一度でもそれを経験できたことは幸せなことです。それでも、現役でいる限りは優勝を争うチームの戦力になる選手でいたいと思っています」

――関西での生活には慣れましたか?

「まだチームに合流したばかりですが、1回目のオフは筋肉痛がひどかったので、マッサージやスーパー銭湯に行って体をリラックスさせました。あとは、家の近くにかわいいカフェがたくさんあるのがわかったので、幸せな気分でお茶しています(笑)。ちょっと道に迷ってしまったこともあったんですが、そのときに道案内をしてくれた方が優しくて。街の人の温かさを実感しているところです(笑)」

――今秋にVリーグが開幕する前に、日本で世界選手権が行なわれます。8年前の大会では、栗原さんの活躍もあって銅メダルを獲得しました。今の全日本についてはどんな印象を持っていますか?

「(中田)久美さんが監督になった際に『歴史を作る』と言っていましたが、すごく厳しい環境で、常に自分たちにプレッシャーをかけ続けながら戦っていると思います。自分たちのやるべきことをやればメダルもついてくるでしょうし、新たな歴史を作っていくこともできると思います」

――その歴史を作っていくメンバーに自分も入りたいという思いはありますか?

「難しい質問ですね。でも、アスリートとしてはそこを目指さないとおかしいですし、チャンスがあればと思っています。そのためには、まずチームで結果を残さないといけない。まずはトモさん(JTの吉原知子監督)に評価してもらえるプレーをして、そのうえで全日本にも必要としてもらえたらすごく幸せですね」

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