日本よ、見事だ。本当に見事だ。このようなエネルギー溢れるサッカーを見たとき、チームスピリットに触れたとき、私は大きな幸福を感じる。 試合前は日本がセネガルに対抗できるのか、私は懐疑的だった。セネガルの選手の身体能力は非常に高く、すこぶ…
日本よ、見事だ。本当に見事だ。このようなエネルギー溢れるサッカーを見たとき、チームスピリットに触れたとき、私は大きな幸福を感じる。
試合前は日本がセネガルに対抗できるのか、私は懐疑的だった。セネガルの選手の身体能力は非常に高く、すこぶる強靭だ。野生動物のような鋭さを持っている。そんな彼らと互角の戦いをするのは、決して簡単なことではなかったろう。
それなのにデータを見ると、”デュエル”での勝利は日本がセネガルを上回っている。日本の選手が知能と工夫を駆使して競り勝つたびに、私は誇りのような喜びを感じ、思わず手を叩いていた。
中盤で屈強なセネガルの選手たちと渡り合った柴崎岳 photo by Sano Miki
1点のビハインドから同点にすることは、ただ単にゴールすることより難しい。この2-2という結果は、最後の1秒まであきらめず、集中力を切らさない日本の、まさに面目躍如といったところだろう。いや、それどころか日本は勝つことさえできたかもしれない。柴崎岳のクロスに大迫勇也の足が触れていれば、それも可能だったはずだ。
今、私はグラーツにいて、クロアチア・テレビの放送でワールドカップをテレビ観戦している。おりしも日本対セネガル戦の解説者はロベルト・プロシネツキだった。かつてレッドスターやバルセロナ、レアル・マドリードでプレーし、現在は我がボスニア・ヘルツェゴビナの代表監督でもある。
プロシネツキは日本のプレー、精神力、その統率の取れた動きに驚嘆し、絶賛していた。私はなにか、自分の息子が褒められたかのようにうれしかった。
次のポーランド戦で、計算上、勝ち点1さえ挙げれば、日本は決勝トーナメントに進出することができる。しかし、頭のどこかで”引き分けでもいい”などと思ってしまうのは非常に危険だ。それでは前へは進めない。守るばかりでは後ろ向きの結果しか出ない。
次の試合でもこれまで通りのプレーを、勇猛果敢に走り、何が何でも勝つというサムライスピリッツを見せてほしい。今の日本とポーランドなら、強さは日本のほうが上のはずだ。頭を働かせて、正しいメンタリティをもって試合に臨めば、いい結果は出せる。ポーランドのディフェンスは、動きが緩慢だ。日本がそこをつけば、必ずや突破口を見出せるはずだ。
サッカーの世界に絶対はありえないが、日本のベスト16入りを信じている。それは日本サッカーにとって大きな前進となるだろう。
コロンビア戦後の取材で「体調が悪い」と言ったら、多くの日本人が私の健康を心配してくれていると聞いた。本当にありがたいことだ。持病の心臓に加え、今は右膝を痛めてうまく歩くことができない。本当は手術をすべきなのだが、心臓にはペースメーカーが入っているし、血が固まらない薬も飲んでいるので、それは危険なことなのだ。
おかげでソファーから動くこともままならないのだが、幸いにも頭だけは健在だ。そして、今回の日本のようなすばらしいサッカーが、私に活力を与えてくれる。