堂安律インタビュー@後編 19歳で海を渡った堂安律は、新天地フローニンゲンの中心選手として結果を残し、シーズン終盤にはガンバ大阪からの完全移籍を勝ち取ることに成功した。 しかし、充実したシーズンのなかにはいいときもあれば、悪いときもあっ…
堂安律インタビュー@後編
19歳で海を渡った堂安律は、新天地フローニンゲンの中心選手として結果を残し、シーズン終盤にはガンバ大阪からの完全移籍を勝ち取ることに成功した。
しかし、充実したシーズンのなかにはいいときもあれば、悪いときもあった。とりわけ移籍当初はチームメイトとのコミュニケーションがうまくとれず、楽しく感じられない毎日を過ごすこととなったという。そんなどん底の状態から、いかにして這い上がり、成功を掴み取ることができたのか?
日本サッカー界の期待の星が、オランダで過ごした1年を振り返り、日本代表を含めた今後の目標を熱く語ってくれた。
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堂安律は今後どのようなビジョンを描いているのか
―― そもそもフローニンゲンに移籍する経緯を聞きたいのですが、もともと海外志向が強かったのですか?
堂安律(以下:堂安) 強かったですね。ガンバのジュニアユースでスペインなど海外遠征によく出掛けていたので、中学生のころからそういう気持ちがあったと思います。あとは、バルセロナを好きになってから、「いつかバルサに勝ちたい」と思うようになり、ますます海外でプレーしたいという気持ちが強くなりました。もちろん、アンダー世代の日本代表として外国チームと対戦したことも影響したと思います。
―― 移籍するにあたり、フローニンゲン以外のクラブからのオファーはありましたか?
堂安 その1年前に、PSV(オランダ)から話がありました。でも、そのときはクラブから「まだ無理。出さへん」って即答されました(笑)。そこで、「来年はワールドユース(2017年U-20ワールドカップ)があるから、活躍次第で行かせてください」と伝えました。
―― 日本でプレーしていたら成長できないと感じたのですか?
堂安 いや、そういうことではないんです。ただ、日本にいたら楽しいけど、サッカーが本気でできないような気がして……。やっぱり、ヨーロッパに行くとやることはサッカーしかないし、1日のほとんどの時間をサッカーのために費やすことになると思っていて。実際、誘惑がない世界に行くことができたことが自分にはよかったと、実感しています。
―― オランダでは独り暮らし?
堂安 はい、独りです。
―― そうなると、日常生活で日本語を使う機会はほとんどないですよね。フローニンゲンは日本人も少ないでしょうし、ホームシックになるのもわかります。
堂安 あれがホームシックなのかはわからないですけど、とにかく最初のころは楽しくない毎日でした。でも、もともと僕の夢はヨーロッパで十何年もプレーすることだったし、「ほんの1~2ヵ月前はあんだけヨーロッパに行きたいと思っていたのに、なんでこんなにビビってんやろ?」って思った自分がいて……。
そしたら、そのうち自分のなかで「無理やりでも楽しくしよう」という気持ちが勝(まさ)るようになったんです。それで、無理してチームメイトに話しかけて仲良くなろうとしたんですけど、でも最初のころはそれでも全然楽しくならなかったですね。
ただ、必死に相手のことを知るように努力して、相手にも自分のことを知ってもらうようにした結果、少しずつ状況が変わりました。今ではめちゃくちゃチームメイトと仲良くしていて、日本に帰ってきても向こうから「元気か?」って電話がくるような関係になりました。
―― 入団後、開幕前のキャンプのときからそういう積極的な姿勢だったんですか?
堂安 いや、あの時期に日本の報道で「堂安のコミュニケーション力がすごい」みたいな記事があったみたいですけど、実際、僕は何もしてないんです。ただ、チームメイトから話しかけられているとき、僕がニコニコしていただけなので(笑)。
でも、今考えると、あのときの僕は逃げていたんだと思います。英語が話せなかったので、話しかけられること自体が嫌で、気を遣われることも嫌だった。だから最初の2~3ヵ月は、本当にアカンかったなって思います。
―― チームメイトと仲良くなるまでに、どれくらいの時間がかかりましたか?
堂安 半年くらいですかね。でも仲良くなったら、もうチームメイトの家に居座るようになっていました。練習が終わったらチームメイトの家に一緒に行って、夕飯を一緒に食べて。で、夜8時半からチャンピオンズリーグの試合を一緒に見て、11時になって「バイバーイ!」って自分の家に帰るんです(笑)。そんな毎日がすごく楽しくて、1日があっという間に終わるんです。
―― 特に仲がいいチームメイトは誰ですか?
堂安 右サイドバックのトッド・ケイン(現オックスフォード・ユナイテッド)です。チェルシーからローン移籍でプレーしていた選手で、今年の冬に移籍してしまいましたけど、彼にはいろいろと助けられましたね。それと、彼の移籍後は7番の(ジュニーニョ・)バクーナ、23番の(アイディン・)フルスティッチ、5番の(サミール・)メミシェヴィッチと特に仲が良くて、若手の4人で買い物に出かけたり、とにかくよく一緒に遊んでいます。
―― では、チームメイトと仲良くなる前はどんな1日を過ごしていたのですか?
堂安 午後2時ごろに練習から帰って、昼寝を3時間くらいして、夕方5時ごろに起きてから6時半くらいまでスマホをいじったりして。それから近所のイタリアンレストランに行くんですけど、僕は30分くらいでご飯を食べ終わっちゃうので、もう夜7時からにシャワー浴びて、8時ごろからまたスマホいじって、YouTubeをずっと見て……(笑)。
―― どんな動画を見るんですか?
堂安 僕の場合、ユーチューバーの動画は見なくて、サッカーで言うと他の人のプレー集を見たり、本田圭佑選手(パチューカ)のインタビューなんかもよく見ますね。本田選手が英語でインタビューに答えている動画とか、あとは吉田麻也選手(サウサンプトン)の英語インタビューや(テニスの)錦織圭選手の英語インタビューなんかも繰り返し見て勉強していますね。
―― では、英語は独学というか、YouTubeなどで覚えたんですか?
堂安 YouTubeでも英語は勉強できますよ(笑)。もちろん1週間に2回、家庭教師にも来てもらっていますけど。でも、結局毎日のようにチームメイトと一緒にいるので、それが一番ですね。あと、英語の話せる友人が日本にもいるので、その人とは英語だけで連絡取り合うようにしています。そういう意識の高いところも、しっかり記事にしてくださいね(笑)。
―― はい、しっかり書いておきます(笑)。話を本題に戻させてもらいますけど、現在はヨーロッパで成功したいという気持ちと、日本代表に入りたいという気持ちを比べて、どっちが上にありますか?
堂安 どっちも大事ですけど、現時点ではまず目の前のことなので、ヨーロッパで成功したいという気持ちが強いですかね。僕の最終目標は「チャンピオンズリーグで優勝すること」なので、そのためには将来的にチャンピオンズリーグで優勝できるようなクラブに移籍しないといけないんです。
―― ところで、一部の報道で今回のロシアW杯の予備登録メンバーに入ったというニュースがありましたね。結局、登録されることはなかったのですが、そのときはどんな気持ちでしたか?
堂安 実際問題、23人目と24人目の差はすごく大きいですし、予備登録メンバーでは何も意味はないと考えていました。でも、(ガンバ大阪の)先輩の宇佐美貴史選手(デュッセルドルフ)や東口順昭選手が入ったのはよかったです。できれば、井手口陽介選手(クルトゥラル・レオネサ)にも入ってもらいたかったですね。
―― ヨーロッパで残した数字でいうと、堂安選手もメンバーに入ってしかるべきだったと思いますが。
堂安 僕が選ばれなかったのは仕方ないとして、中島翔哉選手(ポルティモネンセ)や森岡亮太選手(アンデルレヒト)は僕よりもヨーロッパで多くのゴールを決めているので、選んでほしかったという気持ちはあります。
―― 彼らふたりもそうですが、今回選ばれなかった選手でベスト11を作ったら現日本代表に引けを取らないチームになると思うので、気持ちを切り替えて4年後につなげてください。
堂安 はい、もう次を見るしかないので。来年の1月にはUAEでアジアカップがあるので、それに向けての準備を今からやるしかないと思っています。
―― 2020年には東京五輪もありますが、当面の目標はA代表デビューですか?
堂安 オリンピックを下に見ているわけではなくて、まずはA代表をいつも見ていないとダメだと考えています。上を見て損はないですし、上をしっかり見ることで自然とオリンピックもついてくると思うので、まずはA代表に入ることを目指したいです。
―― では最後になりますが、今後の目標をお願いします。
堂安 とにかく、来シーズンが大事だと思っています。今シーズンで残された課題はシーズンふたケタ得点が達成できなかったことなので、来シーズンはふたケタをクリアして、全試合フル出場するくらいにチームに欠かせない存在になりたいですね。
それと、インスタのフォロワーも3万人まで増えたんですけど、それも今シーズンの課題として残っているので、フォロワー10万人を目指してがんばります(笑)!
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