星槎(せいさ)国際湘南高校が、神奈川県厚木市上古沢に野球部専用球場を完成させた。6月3日には学校関係者や地元住民、…
星槎(せいさ)国際湘南高校が、神奈川県厚木市上古沢に野球部専用球場を完成させた。6月3日には学校関係者や地元住民、選手の保護者たちなど、約300人が参加してオープニングセレモニーが行なわれた。

総工費3億円の新球場が完成し、日々練習に打ち込む星槎国際湘南の選手たち
「今までは学校のテニスコートをメインに、町の運動場と近くにあった中井球場を借りて練習していただけに、こんな素晴らしい球場が完成してうれしい。これで思いきり野球ができます。練習試合も、今までは他校に行かなければできませんでしたが、この球場なら胸を張って来てもらえます。球場づくりに関わってくれた地元の方や関係者をはじめ、多くの人たちへの感謝の気持ちをプレーで恩返ししたい」
そう語ったのは主将の松下壮悟(3年)。その言葉通り、セレモニーのあとに行なわれたこけら落としの記念試合では、静岡の強豪・常葉橘を相手に第1試合で特大のホームランを放ち、途中出場となった2試合目にも9回に逆転の3ランを放ってみせた。
新球場は、いすゞ自動車の福利厚生施設の運動場だったものを大幅に改造し、両翼97メートル、センター120メートル、さらにはバックネット裏と一、三塁側に300人ほどが座れるスタンドも設(しつら)えるなど、本格的な球場へと様変わりした。
ライトの奥にはバッティングケージがあり、選手たちは心置きなく練習に打ち込むことができる。ちなみに、総工費は約3億円という。
球場名は、星槎国際の名前を入れると学校関係者だけのイメージが強くなってしまうため、スタジアム建設に尽力してくれた星槎グループの宮澤保夫会長の名前から「宮澤スタジアム」とした。
「学校名や厚木の地名などをあえて使わなかったのは、地元の人たちはもちろん、神奈川県内の少年野球の子どもたちが抵抗なく使用できるようにしたためです。野球以外のスポーツでも自由に使ってほしいですし、音楽などのイベントでも構いません。にぎやかになれば、それが地元の活性化にもつながると思います。
大磯にある学校からはマイクロバスで50分ほどかかりますが、行き帰りに車内でミーティングもできますし、贅沢は言っていられません。なにしろ今まではテニスコートが中心でしたから……フォームの修正や捕球姿勢、送球姿勢のチェックがほとんどでした。狭いところでやることで欠点は見つけやすかったですが、やっぱり広いところで、しかも土の上で思いきり野球をさせてあげたかった。彼らの大きな成長につながると確信しています」
そう語るのは、星槎国際湘南の土屋恵三郎監督だ。
土屋監督は前任の桐蔭学園で32年間指揮を執り、春夏通算10回の甲子園出場を果たした名将として知られる。2015年の1月に星槎国際湘南の監督に就任すると、2016年秋に県のベスト8、2017年春にはベスト4に進出して、夏の大会の第1シードを獲得。その夏の大会は5回戦で日大高に4-9で敗れたが、瞬く間に神奈川の強豪校へと押し上げた。
今年の春季大会は守備力の弱さを露呈して、3回戦で公立校の金沢に3-4と惜敗。それでも土屋監督は前向きに語る。
「グラウンドができあがったので、本格的に守備力の強化ができます。夏の戦いは、守りの時間を短くして、いかに攻撃の時間を長くするかがカギになる。70名ほどの部員全員を動かし、下からも引き上げる。神奈川は屈指の激戦地なので簡単に勝てないことは知っていますが、可能性はあると思う。あとはチームワークです」
昨年はドラフト3位でオリックスに指名された本田仁海(ひとみ)という絶対的エースを擁したが、「いくらいい投手でも、夏はひとりでは無理」(土屋監督)と、今夏は継投策で挑むつもりだ。
エース左腕の石橋颯太(3年)が緩急をつけたピッチングで試合をつくり、終盤は右オーバーハンドの一柳大地、左サイドハンドの石綿唯人(ともに2年)、左腕の三浦舞秋(ましゅう/1年)と、個性あるリリーフ陣がつなぐ。
先発の石橋が言う。
「自分はテンポよく、球数を少なくして打たせてとるタイプです。先発として試合をつくり、チームに流れを引き寄せる。そのためには無駄な四球をなくし、低めにボールを集めるピッチングを心掛けています。最速は135キロぐらいですが、コントロールには自信があります」
一方の攻撃陣は、50メートル5秒8の快足・小倉健太朗(3年)が出塁し、松下で還すというのが必勝パターンだ。
1年夏からチームの主軸として活躍し、ここまで高校通算40本塁打以上を放っている松下は、今秋のドラフト候補でもある。
「監督からいつも言われている『強く振ること』『確実にミートすること』だけを心掛けています。ホームランの数はこだわっていません。結果としてホームランになればいいと思っていますが、チームの勝利が優先です。どこが相手でも必ず5点以上取ることを目標としています。将来的にはプロ野球選手になりたいですが、進路は監督と相談して決めたい。今のところ東京六大学が希望です」
オリックスの由田慎太郎スカウトは、松下についてこう語る。
「遠くへ飛ばす力があるのが大きな魅力です。あとは、もうワンランク上のレベルの投手が出てきたときにどう対応できるかでしょう。ガッツもありそうだし、楽しみな素材です」
DeNAの稲嶺茂夫スカウトも「インサイドの捌(さば)きがうまい。パワーもあるし、広角に打てるので大砲として面白い存在。いい選手なので、今後の成長に期待して、夏の大会を見たいと思います」と興味を示している。
今年の夏は、第100回記念大会のため、神奈川からは2校が甲子園に出場する。星槎国際湘南が参加する南神奈川大会には、横浜を筆頭に横浜隼人、横浜商など強豪校がひしめく。南北に分かれても、なお激戦の大会を勝ち抜けるのか。新球場完成で勢いに乗る星槎国際湘南の戦いから目が離せない。