現在放送中の番組で圧倒的な知能を惜しみなく発揮するのが “東大王”の称号を持つ水上颯氏(みずかみ・そう)。開成高等学校から、現役東大医学部へと進んだ俊英で、現在「東京大学医学部卓球部」に所属する。これはわれわれラリーズも負けられない。編集部…
現在放送中の番組で圧倒的な知能を惜しみなく発揮するのが “東大王”の称号を持つ水上颯氏(みずかみ・そう)。開成高等学校から、現役東大医学部へと進んだ俊英で、現在「東京大学医学部卓球部」に所属する。これはわれわれラリーズも負けられない。編集部の “頭脳担当”こと中川正博は京都大学大学院を卒業後、大手外資コンサル2社を経てベンチャー創業という経歴を持つ。何より、人類の2%しか入ることのできない「高知能集団」MENSAに所属している。
“学歴エリート”という言葉では終わらせるには、もったいなすぎる2人の頭脳。両者ともに異業種で頭脳を活かしキャリアを積み重ねてきたが「卓球に虜である」という共通点がある。
ではなぜ、2人は卓球に魅せられ、なぜ貴重な青春を懸けてきたのか。意外な理由がそこにあった。
2人の最近注目の卓球の試合
——卓球の情報はどういうところで見ているんですか?
水上:最近だとYouTubeでテレビ東京の世界卓球の映像を見たりしていました。やる方も見る方も好きですけど、こんな超次元の卓球は真似できないなあと思いながらプロ選手動画を見ています。
——ちなみに5月の世界卓球で一番面白かった試合は?
水上:伊藤美誠さんの決勝の試合はすごかったですよね。あんなに追い詰められた場面で僕だったら何をすべきか迷っちゃいますね。
中川:僕はやはり女子準決勝の石川佳純対キムソンイ戦かな。あの試合を取られてたらキツイという場面でアンラッキーがありながらも耐えて取れたのはすごく大きかった。
京大卒のRallys中川(左)と東大王の水上颯。卓球の話をしているだけでも頭の回転の速さがわかる。
——実際に卓球をしてきて、「この試合はきつかった」とか思い出深い試合はありますか?
水上:だいたいきつい試合ばっかりです(笑)。でも中学の時の県総体で準決勝で相手がロビングマンで、こちらも緊張でガチガチになってしまったので、緩いドライブを打って負けてしまいしました。それが一番印象に残る敗戦でしたね。
中川:僕は奈良県出身なんですけど、奈良県は有名は藤井姉妹がいて、そのお兄ちゃんの藤井健太郎さんと全日本予選で当たって、その試合が印象的でしたね。ちなみに彼がロビングマンなのよ(笑)。
水上:奇遇ですね。
中川:でしょ。そして初めて藤井健太郎さんに勝って奈良県ベスト4に入れたのがとても嬉しくて、きつかったけど印象に残る試合でしたね。大事な試合だとロビングされるとひよっちゃうから、難しいですよね。
水上:そうですよね。
卓球は頭脳戦、試合をどう組み立てる?
——二人は卓球の戦術とかはどういうふうに考えているのでしょうか?
水上:実はあんまり深く考えなくて。良くて3球目までしか考えてないんですよ。でも第1ゲームは相手の苦手を探そうと努力してますね。
——得意なサーブをガンガン使っていく、といった感じでしょうか?
水上:はい、そうですね。でもあんまりサーブに種類がなくて、バックサーブしか使わないんです。フォアサーブが始めた頃にとても下手で、そこからずっとバックサーブしか使っていません。なので、結構最初からサーブから崩していくタイプですね。このやり方は最初は効くので1ゲーム目は奪えることが多いのですが、2ゲーム目から慣れられて負けてしまうんですよ。
中川:僕は自分の得意なことを活かせる戦術をひたすら考えていますね。例えば、フォアハンドのループドライブとか。
水上:ティモボル…!(編集部注:水上さんはティモ・ボルの大ファン)
(一同:笑)
水上さんが好きな選手であるティモ・ボル選手(ドイツ)のレシーブ時の構えを真似してもらったものだ。
写真:伊藤圭
中川:まずは下回転のサーブで相手にツッツキをさせて、そこからループドライブを使って攻めていく。そして下回転サーブにうまく対応されてきたと感じたら、ナックルサーブで回転量の差で相手を困惑させる。さらに下回転とナックル、両方に慣れられたら今度は急に横回転のサーブを出して、相手にツッツキをさせる。基本的にはこのサイクルですね。そしてその中で相手の弱みが見えてきたらそこを徹底して突く。
水上:頭脳戦ですね!
——重要な場面で攻めるときは?
中川:一番点を取れそうな戦術を使いますね。基本この質問はトップ選手は答えないのですが、僕らのレベルなら答えてもまったく問題ないでしょう(笑)。水上さんは?
水上:僕はサーブで崩そうとしちゃいますね。打ち合いは基本的に耐えられないので。
——卓球の魅力ってどんなところに感じていますか?
中川:おじいちゃんになってもできることだと思ってますね。最近だと「ハイ80」という括りもできて、そこまで生きていたら全日本取れるんじゃないのかなって本気で思っています。そういう意味で僕に生きていく上で目標を与えてくれる。そんなスポーツですね。
水上:あんまり体に負担が少なくて持続可能性が高いスポーツだと思いますね。サッカーとかラグビーみたいに一旦やるとものすごく疲れるスポーツでもないので、気軽に続けやすいスポーツかなと思っています。本当に趣味として続けやすいスポーツですね。僕もあまり体力がある方ではないのですが、卓球は楽しくできるなあと感じています。
——ちなみに今後も卓球を続けていこうと考えいますか?
水上:大学を卒業した後にどこでやろうかな、という感じなので、続けるかは迷っています。ですが、病院に行っても、鉄門卓球部(東京大学医学部卓球部のこと)のOBが寄ってくることもあるので、卓球と関わる機会は今後もあると思いますね。
中川:僕は50の時に全日本マスターズのタイトルが取れるように頑張りたいですね。
水上:スパンが長い話ですね。
中川:後は子供と一緒にできたら嬉しいなと思います。
水上:いいですね
中川:強制しようとは思わないのですが、もし子供がやると決めたら全力で教えたいなと。
——子供がやるとどんないいことがあると思いますか?
中川:卓球は他のスポーツと比べて、考えてやらなきゃどれだけ運動神経が良くてもできないスポーツだから、考える力とかは身につきやすいスポーツなのかなと思いますね。
後は日焼けしない・怪我しにくいことがいい笑
東大王の母も卓球部出身
水上:あ!それありますね笑
二人でできるから子供とやるにはいいですよね。大人と子供でそこまで差が開くスポーツではないので、そこも魅力です。しかも家に卓球台を置くことも広いお家なら可能ですしね。実は僕の家にも卓球台があって。実は母親が中学高校で卓球をやっていたと聞いていて。気持ち的には卓球が始めやすかったのもあると思いますね。
中川:僕の両親は卓球をしていなかったのですが、家にラケットがあって、それがペンホルダーだったので、最初はペンでプレーしてたんですよ。後はやっぱり日焼けしない運動部というのが魅力で始めました。
——それだけ日焼けしたくなかったんですか笑
中川:そうですね。実は僕の中学がソフトテニス部が人気で皆んなソフトテニス部に入って黒くなってたから自分は嫌だなあと思っていました。
——ちなみに先ほど水上さんが「鉄門卓球部OBの方が病院に尋ねに来ることもある」とおっしゃられていたのですが、卓球を通しての繋がりを感じたりすることはありますか?
水上:中学の卓球部の部員とは試合会場で会って久しぶり〜!見たいのはあるけど、そこは「よっ友」といった感じですね。大学の卓球部は今は感じることは少ないのですが、年配の医者の先生が言うには各都道府県の病院に散らばっていくと、他校の顧問がいたり、昔戦った人がいたりと意外なところで繋がりがあったりして面白いと聞きますね。
中川:大学はかなり仲はいいですね。それに毎回県大会の上位に食い込む人のコミュニティもあったりしてそこも仲は良かったかな。
後は、このラリーズに入ったきっかけも卓球で培ったネットワークが役に立ってて、普段自分が練習しているコミュニティの人にラリーズを運営している人知ってる?って聞いたらすぐに繋がることができたということもあります。相手との距離がすごく近いスポーツということもあるのかな、結構仲良くなりやすい気はしますね。
——ちなみに卓球をやっている人に悪い人はいない説はある?笑
水上:逆に僕は性格がひねくれた人が多いんじゃない?と思います笑お互い卓球やっているから気があうっていうだけかもしれませんね。僕の部活では結構ひねくれた人が多かった気がする笑
開成から東京大学医学部、さらには東大王の称号と輝かしいキャリアを積み重ねる水上だが、謙虚な姿勢が印象的だった。時に面白おかしく、時に自虐的に、話を切り返す。話の端々に「頭の回転の良さ」をにじませる22歳はこれからどこへ進むのか。「水上颯のその先」はわれわれの想像の及びもつかないところにあるのかもしれない。
企画・インタビュー:ラリーズ編集部
写真:伊藤圭
撮影地:中目卓球ラウンジ