5月に行なわれた『マイナビ・ジャパンビーチバレーボールツアー2018』第2戦の東京大会で、悲願の初優勝を果たした坂口佳穂(22歳/マイナビ)と鈴木悠佳子(30歳)ペア。シーズン早々に目標を達成したふたりは、ツアー連勝を目指して第3戦の…

 5月に行なわれた『マイナビ・ジャパンビーチバレーボールツアー2018』第2戦の東京大会で、悲願の初優勝を果たした坂口佳穂(22歳/マイナビ)と鈴木悠佳子(30歳)ペア。シーズン早々に目標を達成したふたりは、ツアー連勝を目指して第3戦の平塚大会(6月9日~10日/神奈川県平塚市・湘南ひらつかビーチパーク)に挑んだ。

 東京大会ではホステスプロとしての重圧をはねのけ、価値ある優勝を飾った坂口と鈴木のペア。ただ、国内ランキング上位チームの多くが参加していなかったため、手放しで喜んでいるわけにはいかない。この平塚大会でも結果を残して、優勝が”フロック”でなかったことはもちろん、自分たちが確実に力をつけていることを、改めて示しておきたかった。

 1日目の予選プール戦はセットを落とすことなく、2戦2勝で難なく決勝トーナメントに進出。磐石の結果を残して、その成長ぶりをきっちりと見せつけると、2日目の準決勝でも、石坪聖野(さとの/22歳)&柴麻美(22歳)ペアを相手に、セットカウント2-1(21-13、15-21、15-13)で勝利を収めた。

 この試合は第1セットを簡単に取っておきながら、第2戦では一転して劣勢に追い込まれた。そのままあっさりとセットを奪われると、最終セットも終盤まで一進一退の攻防が続く厳しい戦いを強いられた。それでも、「焦りはなかった。ミスしても、切り替えがしっかりできていた」と坂口。最後は、これまでに培ってきた経験と勝負強さで上回り、同い年のチームを振り切った。

 迎えた決勝戦。ツアー2連勝へ打ち破らなければいけない相手は、石井美樹(28歳)&村上めぐみ(32歳)ペアだった。強力なサーブと粘りのディフェンスを武器に、ワールドツアーを転戦している日本のトップチームである。4月の試合で対戦した際には、0-2(8-21、14-21)と「何もできず、あっけなく……」(鈴木)完敗を喫している。

 そこで、「絶対に(強い)サーブがくるので、それで相手を乗せないように。いかにサイドアウトを切っていくか」(坂口)と、第1セットから相手の戦略をきちんと意識して臨んだ。その結果、坂口&鈴木ペアはディフェンスからゲームを組み立てることに成功。ミスも目立ち、なかなかリズムをつかめない石井&村上ペアを尻目に、ゲームの主導権を握って得点を積み重ねていった。

 そして、坂口がサイドアウトを確実に切り、ネット際に落としてくるボールにも反応よく対応して拾っていくなど、14-7と大量リードを奪う。さすがに終盤、地力に勝る石井&村上ペアの反撃にあって1点差まで詰め寄られたが、21-19で逃げ切り。およそ1カ月前には歯が立たなかった強豪から、第1セットを奪って先手を取った。

 しかし、国内最強チームが簡単に優勝トロフィーを譲ってくれるはずもなかった。第2セットは序盤こそ先行したものの、ゲーム中盤からは石井&村上ペアの仕掛けに翻弄されはじめる。

 まずは、身長172cmの石井より7cmも低い、身長165cmの村上がブロッカーとしてネットに張りつく形にかく乱された。加えて、強度と精度を上げてきた石井のドライブ回転のかかったサーブが、坂口、鈴木のふたりを強襲。石井のサービスエース4本を含めて7連続失点するなど、一気に点差をつけられて、14-21の大差で第2セットを落とした。

 第3セットになると、石井&村上ペアの攻撃がさらにテンポアップ。坂口&鈴木ペアとしては、準決勝のように切り替えを素早くして、流れを取り戻したいところだったが、要所で相手の強いサーブが前後、左右の厳しいコースに飛んできて失点を重ねた。結局9-15でセットを失って、2大会連続の優勝は叶わなかった。

 鈴木が「(石井&村上ペアとの対戦では)1点の重みが違った」と言って肩を落とせば、坂口も「簡単に点を取らせてくれないし、決めるべきボールは必ず決めてくる」と語ってチャンピオンチームの強さに脱帽した。ゲームのポイントとなった相手のサーブについても、坂口は「準備はしていたが、足りなかった。結果として、準備不足だった」と唇をかんだ。



ツアー第3戦の平塚大会でも準優勝という結果を残した坂口佳穂

 とはいえ、東京大会に続いて決勝まで駒を進めたこと、2年連続ツアー女王の石井&村上ペアから1セットでも奪ったことは、大きな収穫である。決勝で感じたトップチームとの実力的な”距離感”も、ちょっと前までは感じることさえできなかっただろう。

 坂口が改めて振り返る。

「いつもは(石井&村上ペアの)サーブに押されて、サイドアウトを切れないまま終わってしまうが、今日はそれほど悪くなかった。レシーブも基本に立ち返った練習の成果が出た部分もある。まだまだだが、一つひとつのプレー精度を上げて、一歩一歩進んでいけば、通用するようになると思う」

 一度頂点に立ったことで、その経験が実となり、自信となっていることがプレーの随所にも表れていた。準決勝では流れを失う時間が長かったものの、落ち着いて対処して、最終的に勝利をものにしている。

 決勝でも、連続失点はあったものの、焦って自滅したわけではない。精神的な成長は、技術的な向上と相乗効果を生んで、結果へとつながっている。

 惜しくも準優勝に終わった坂口&鈴木ペア。だが、前回大会の優勝が”フロック”ではなかったことを証明し、優勝にも劣らない収穫を得たことは間違いない。2度目の栄冠を手にする日も、そう遠くはないだろう。