走ったら止まらない。 走られても止める。 福岡堅樹が好調だ。 6月9日、日本代表はイタリア代表に34-17と勝った。その試合で背番号11は、自らトライを奪うだけでなく、攻守に幅広い動きを見せて勝利に貢献した。 まず前半18分。先制トライに…
走ったら止まらない。
走られても止める。
福岡堅樹が好調だ。
6月9日、日本代表はイタリア代表に34-17と勝った。その試合で背番号11は、自らトライを奪うだけでなく、攻守に幅広い動きを見せて勝利に貢献した。
まず前半18分。先制トライに絡んだ。
タッチに出たボールをクイックで入れた後のアタック。福岡は大外でボールをもらうと、相手のタックルを受けながら内につなぐ。NO8アマナキ・レレィ・マフィのトライを呼んだ。
「オフロード(パス)でボールを残すのは、サンウルブズでもやってきたことなので」
相手がキツそうな表情をしていた。仲間がカウンターアタックを仕掛けることを予想していた。
チーム2つめのトライ時(前半28分)には、高い個人技を見せた。ディフェンダーの動きをよく見て抜いた。
自信が視野の広さを呼んでいる。
「外に抜ける、と思いました。相手は少し内側を気にしていたので」
自陣10メートルラインの手前でパスを受けてから60メートル以上を走り切る間、タッチラインと5メートルラインの幅の中から出ることはなかった。
チェンジオブペースで抜いた。
「(外には5メートルもなかったが)いけるスペースだな、と。気持ち良かった。このクラス相手に、ああいうトライはなかなか取れないので」
置き去りにした相手はFBマッテオ・ミノッツィ。
世界トップクラスを翻弄してみせた。
多くの人が充実を感じるのは、アタックだけの選手ではないからだ。
思い切って前に出るディフェンスシステム。ハマれば相手に大きなプレッシャーを与えるが、ウラを取られることも少なくない。
そんな場面で何度もピンチを救った。
前半14分、CTBミケーレ・カンパニアーロに自陣へ入り込まれたときも、この人が戻って止めた。
「走られたのは自分の責任でもあったので。リスクを覚悟して前に出ています。スピードを期待されているので、あそこは戻らないと」
SHの位置から自分で持ち出し、前へ出るスペシャルプレーもあった。サンウルブズでも試していたプレーだ。そのオプションでパスアウトし、仲間を走らせることも。
いたるところに背番号11がいた。
何本でもトップスピードで走る。得点機を作り、失点を減らす。
ワークレートの高さでチームへの貢献度はトップクラスだ。
「自分がワークレートが高い選手と言われるようになるなんて」
以前は、「1本全力で走れば終わり」だったと笑う。
「セブンズ(7人制日本代表)での経験などで変わっていったと思います」と言う。
GPSでの測定値が進化を示す。
走行中のハイスピードの割合が大学時代は7パーセント。それが、いまは10数パーセントに増え、練習時は20パーセントを超える。
「チームでのトレーニングの成果もあるしし、そこに自分なりにやっていることも加わって変わってきました」
求められる役割、期待に100パーセント応えようと思ったら、それくらいの運動量は必要だった。
チームの進化を感じている。
用意していたプレーが設計通りにいかなくても良い結果を出せるのは、コミュニケーションが充実しているからだ。一つひとつのプレーの精度も増した。
そんな中にいるから自身が輝けていると自覚する。
多くのシーンで自分が絡むプランをチームが持っていることに、「期待されているのは嬉しい」と語る。
現在イングランド代表を率いるエディー・ジョーンズ監督はジャパンの指揮を執っていたとき、「ケンキはブライアン・ハバナになれる(元南アフリカ代表WTB/テストマッチ通算67トライ)」と言った。
現在テストマッチ通算トライは17。
ハバナがピッチを去ったいま、世界が注目するスピードスターへの道を突き進む。