東京六大学春季リーグ戦 6月3日 神宮球場

 試合開始前のオーダー発表。早大が誇る絶対的エースの名がコールされると、神宮球場にどよめきが起こった。前日の1回戦で136球を投じた小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)がまさかの連投。敗戦後、髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)に自ら志願して上がった、決死のマウンドだった。負ければ5位に転落、そして宿敵の完全優勝が決まる大一番。のしかかる重圧にも屈さず、小島はただひたすらチームの勝利のために、その左腕を振り続けた。7回まで毎回安打を浴びながらも要所でギアを上げ、見事に零封。打線も、3回に吉澤一翔(スポ2=大阪桐蔭)の左越えソロ本塁打で先制したのを皮切りに大量9得点を挙げ、全早慶戦を含めて7連敗中だった宿敵から、待望の白星をつかんだ。

 小島は初回から我慢の投球が続いた。打率4割を超える2番・河合大樹主将(4年)に中前打で出塁を許すと4番・郡司裕也(3年)には右前打を浴び、2死一、三塁のピンチを背負う。この場面を、フルカウントからの変化球で見逃し三振に切って取り、先制点を許さなかったが、その裏の自軍の攻撃がわずか7球で終了。2回も無死一、二塁のピンチを無失点で切り抜けたが、慶大先発・菊地恭志郎(4年)のフォークに手を焼いた自軍の攻撃は8球で終了となり、体力的、精神的に厳しい状況下に。粘投を続ける小島を見殺しにすることとなった1回戦の戦いを想起させる序盤の攻防となった。

連日の好投を見せたエース小島
 その重苦しい雰囲気を一変させたのが、若き大砲の一振りだった。3回、小島がまたも得点圏に走者を背負うピンチをしのぎ、その裏先頭で打席に立ったのは不振が続く吉澤。フォーク2球で簡単に追い込まれたが、3球目の甘く入った143キロの直球を完璧に捉え、左翼席にたたき込んでみせた。「チームメートに打たせてもらったホームラン」と語ったこの一打が流れを引き寄せ、その後さらに2度の暴投で加点に成功した。以降も、小島がアウトカウントを重ねるにつれて流れは早大へ傾く。5回裏、2死から檜村が四球で出塁すると、続く3番・福岡高輝(スポ3=埼玉・川越東)が放った打球は中堅への平凡な飛球に。しかしこれを慶大の中堅手・柳町達(3年)が目測を誤り二塁打とすると、2死のためスタートを切っていた一塁走者の檜村が長躯ホームイン。さらに5番・岸本朋也副将(スポ4=大阪・関大北陽)に左前適時打が飛び出し、リードを5点に広げた。
適時打を放ち、塁上で喜びをあらわにする岸本
 打線の援護を受けた小島。6、7回も共に先頭打者に安打で出塁を許し、依然厳しいマウンドは続いたが、後続を断ちいずれも無失点。7回には右翼手・加藤が三塁へのピンポイント送球で走者を刺殺する好プレーも見られた。そして迎えた7回裏、早大打線が再び猛威を振るう。先頭の1番・池田賢将(スポ4=富山・高岡南)が左前打で出塁すると、犠打と死球で確実に好機を広げ、打席には前打席で適時打を放った岸本。5球目を捉えた打球はしぶとく中前へと抜けていき、確実に2点を加える。さらに、きょうここまで無安打の6番・小太刀緒飛(スポ4=新潟・日本文理)にリーグ戦初本塁打が飛び出し、試合を決定づけた。「試合に出れない時期もありましたけど、諦めずにやってきてよかった」と、小太刀にとって思い出深い一打となった。そして8、9回を今西拓弥(スポ2=広島・広陵)、徳山壮磨(スポ1=大阪桐蔭)が無失点で締め、大差を保ったまま試合終了。特に9回に登板を直訴してマウンドに上がった徳山は、初の早慶戦で、2三振を含む圧巻の投球を披露した。
勝利を決め、ガッツポーズをする徳山
 打線も奮起した今試合だったが、やはり全ては小島の意地の粘投がもたらしたものだった。小島のために打ちたかった--。試合後の選手たちからはそんな思いが口々に聞かれた。慶大の10安打に対し、早大の安打は8本。安打数では下回りながらも、投手が要所を締めて失点を許さず、打線が少ない好機をものにする、まさに理想的な試合を展開して勝利をもぎ取った。だが、戦いはまだ終わらない。「あした取らないときょうの勝ちが水の泡になる」(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)。宿敵の完全優勝を阻止せずして、春の陣を終わるわけにはいかない。総力戦で、運命の3回戦に臨む。 (記事:皆川真仁 写真:松澤勇人、中澤紅里