今年初めての5セットを戦った錦織圭(左)。ペールを破って、全仏オープン3回戦進出 ローランギャロス(全仏オープンテニス)の2回戦で、錦織圭(ATPランキング21位、5月28 日付、以下同)がブノワ・ペール(50位、フランス)を6-3、2…



今年初めての5セットを戦った錦織圭(左)。ペールを破って、全仏オープン3回戦進出

 ローランギャロス(全仏オープンテニス)の2回戦で、錦織圭(ATPランキング21位、5月28 日付、以下同)がブノワ・ペール(50位、フランス)を6-3、2-6、4-6、6-2、6-3で破り、4年連続の3回戦進出を決めた。

 ペールとの対戦成績は錦織の3勝2敗だが、負けた時の印象が悪く、錦織にとっては「天敵」のようになっていた。2015年USオープン1回戦では、錦織が2度のマッチポイントを握りながら5セットの末敗れているし、同年のジャパンオープン準決勝では、錦織が第1セットを6-1で先取しながら、逆転負けを喫したのだった。

 また、錦織がローランギャロスのセンターコートであるフィリップ・シャトリエコートでプレーするのは今回で7回目となるが、地元フランス選手のジョーウィルフリード・ツォンガやリシャール・ガスケと対戦した時には、地元パリっ子から”アウェーの洗礼”を受けて、苦い敗戦を味わったこともあり、右手首のケガから再びトップを目指す復帰過程にある錦織が、それを克服できるかもポイントのひとつだった。

 今回の試合では、錦織のスタートダッシュがよく、第1セットでは2回のサービスブレークに成功してセットを先取した。

「錦織はとてもいいスタートを切った。(ベース)ラインの近くでプレーして、とても早くボールを返球してきた」とペールが振り返ったように、錦織が早めの展開で深いストロークを打って、ペールのミスを誘った。

 しかし、第2セットの第1ゲームで錦織がサービスブレークを許すと、ペールが息を吹き返して試合の行方はわからなくなる。錦織は自分の悪い癖が出てしまった、と試合後に反省した。

「第2、第3セットでは、(ペールの)バックにボールを集めすぎた。自分のボールが浅くなったり、自分から打たなくなったり、悪いスパイラルになっていた」

 試合の流れをつかんだペールは、錦織のセカンドサーブに対して果敢に攻撃し、ダウンザラインへ積極的にリターンを打ってポイントにつなげた。

 ペールのバックハンドストロークのうまさはツアーの中でも指折りの選手だと、錦織は以前から語っていたが、この日はバックハンドだけでなく、絶妙なタッチのドロップショットを含めた予想の難しいトリッキーなプレーに苦しめられた。

 だが、第4セットから錦織はテニスのレベルを上げるプレーにアップダウンはあったものの、再び攻撃的なボールを打って、試合終盤に自分へ流れを引き寄せ、勝利をたぐり寄せた。

「第4セットも、ファイナルセットも、自分から重いボールを彼のフォアに集めたり、なるべく左右に動かしたりするようにした。最後まで危なかったですけど、ちょっとアグレッシブにプレーできたことで、チャンスが広がって、悪い流れを変えられた」

 苦戦はしたものの、センターコートの観客からの”圧力”に屈することなく、曲者であるペールから勝利をもぎ取った錦織は、これで”パリの呪縛”から解き放たれたのではないだろうか。

 また、錦織は大会前に久しぶりとなるグランドスラムでの5セットマッチに、体力的な部分で一抹の不安を覚えていたが、実際に2時間59分におよぶ5セットを戦い終えることができたことも、今後に向けてプラス材料となるはずだ。

「(試合後)今は特に問題ないです。試合中はやっぱり、久しぶりの5セットだったので、長いなと感じる時もありました。でも、5セットにしては早い展開だったので、そんなに体のダメージはなく、疲れもそこまで残らないと思う。体は大丈夫だと思います」

  3回戦で錦織は、第12シードのサム・クエリー(13位、アメリカ)を2回戦で破ったジル・シモン(65位、フランス)と初対戦する。

 「圭と一度も対戦したことがないなんて、かなり驚きだね。どうなるかわからないけど、落ち着いて準備するつもりだよ」

 33歳のベテランであるシモンはカウンターショットがうまく、錦織とのラリーは長くなるだろう。

「(シモンは)ミスをさせる頭を使うプレーをしてくる。長い展開になると思います。クレーではタフな相手で、すごく重いボールを打つわけではないですけど、ボールを拾うしつこい相手。初めてやる選手なので、試合中に学ぶことも多いだろうし、しっかり作戦をもって臨みたい」

 3戦連続で地元フランス人選手との対決になるが、”呪縛”から解き放たれた今の錦織なら、もう恐れることは何もないはずだ。

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