16年ぶりに、あんなにも長く、日吉の慶大グランドにいました。一方、初めて早稲田野球部の安部球場に足を踏み入れました。明日、両校が神宮で激突する。 恐れ多くも、今回、OBとして実況席に座らせて頂く僕は、今週水曜日に慶應、木曜日に早稲田に取材に…
16年ぶりに、あんなにも長く、日吉の慶大グランドにいました。
一方、初めて早稲田野球部の安部球場に足を踏み入れました。
明日、両校が神宮で激突する。
恐れ多くも、今回、OBとして実況席に座らせて頂く僕は、今週水曜日に慶應、木曜日に早稲田に取材に行かせて頂きました。
ともに8時台からの気温が上がる前の朝に主力の練習はスタートしました。
両校のグランドに足を踏み入れ、ほっと安心し、胸をなでおろしました。
それと同時に何か嬉しさも込み上げてきました。
慶應のティーバッティング用ボールは美しく規則正しく並べられ、早稲田のノックバットも整然と綺麗に並べられていたからです。
「今も変わりなくレガシーは受け継がれている」
そう感じました。
野球部である前に、一人の人間であり、一人の学生であり、一人の大人である。そして次に野球部の部員である。
規律正しく並ぶ両校のボールとバットがそれを示していました。
大学スポーツ界が良くも悪くも、歴史的に大きな注目を浴びる今、僕自身、東京六大学の卒業生としてどこか誇らしさも感じた水曜、木曜の朝の風景でした。
日本を代表する大学野球リーグ、アマチュア野球リーグであることへの証明は野球のプレー以外の部分で示されると僕は考えています。
「日本一の野球部にする」
「日本一の練習をする」
「日本一の野球をやる」
と、大きな声をあげながら練習に取り組む今の慶應義塾。
グランド内、
練習の合間、
次への移動、
これらは全てダッシュで迅速さと効率化を図る早稲田。
今年の慶應が「情熱」的と表現するならば、早稲田は「冷静」さが自慢。
ある種、対照的な両チーム。
全ての大学から勝ち点を奪い、優勝へ、勢いに乗る「熱き」慶應。
苦しみながらも自主性の高さで虎視眈々と隙を狙う「凛々しき」早稲田。
2018年、春の早慶戦はこういった構図でしょうか。
思い返せば17年前、僕が3年生の時でした。
下馬評が高くない中、慶應義塾は明治、法政、東大、立教を連勝で撃破。
早慶戦を待たずに優勝を早々と決めるのです。
そして、破竹の8連勝で迎えた早慶戦。
初戦を2-1で勝利し、9連勝。
次、勝てば、明日、勝てば正真正銘の完全優勝。
ストッキングに新たなラインが一つ増える。それが10連勝を成し遂げた証拠になる。
あとひとつのところまで来ていました。
しかし、そこから江尻、和田擁する早稲田に連敗を喫するのです。
結果、勝ち点4。
今、思えば、あの時、「あとひとつ」死に物狂いで取っていれば…後悔でしょうか、何でしょうかこの思いは…残念で仕方ありません。だいたいが卒業してから大きな感情は訪れたりするものなんだと、つくづく感じます。
気持ちが切れた瞬間、流れが変わる…そんな早慶戦でした。
今回も優勝を決めている慶應と、チーム再建を図る意地の早稲田。
あの時と同じような状況です。
集中力が切れた瞬間、どちらに転ぶかわからない。情熱的な慶應と、冷静な早稲田。
さあ、どうなるでしょうか。
慶應は、プロ野球・近鉄でプレーし、JX-ENEOSで都市対抗を制してきた社会人野球界の名将・大久保秀昭監督。
早稲田は、鳴門工業高監督として甲子園準優勝、高校日本代表の監督も務めた、高校野球界の名将・高橋広監督。
お互い持っていないものがあると話す両校指揮官。野球のスタイルもやはり違うと話す早慶の両監督。
チームの性格と、監督のカラーが如何に出るのか?
そこに早慶戦という伝統と歴史と誇りが加わる神宮決戦。
私はゲスト解説という立場で16年ぶりに早慶戦に出場することができます。
様々な思いが込み上げ、放送席から涙を流さないよう気を付けるばかりです。
様々な選手が、全国様々な高校から、両親の思いも背負い、学校の看板も背負い、学生の期待を受け、自分たちの人間力を披露する舞台。
彼らがどんなルーツで、どんな未来を描き、今を生きているのか。
微力ではありますが、私の取り組みが彼らの魅力をより良く引き出すことになればと考えています。
皆さん、日本野球、リーグ戦のルーツを是非、感じてみて下さい。