サプライズがない、新鮮さがない、ハリルホジッチ時代と代わり映えしない……。それが西野ジャパンのもっぱらの評判だ。そんななかで数少ないフレッシュな存在といえるのが武藤嘉紀だろう。ハリルホジッチが監督であれば呼ばれ…
サプライズがない、新鮮さがない、ハリルホジッチ時代と代わり映えしない……。それが西野ジャパンのもっぱらの評判だ。そんななかで数少ないフレッシュな存在といえるのが武藤嘉紀だろう。ハリルホジッチが監督であれば呼ばれていなかったかもしれないからだ。
ガーナ戦を前に日本代表合宿で汗を流す武藤嘉紀
武藤が最後に代表に招集されたのは、昨年10月に国内で行なわれたニュージーランド戦、ハイチ戦だった。W杯切符をつかんだ予選終盤のオーストラリア戦は、招集されたもののベンチ外。予選最終戦のサウジアラビア戦でも出番はなかった。そして昨年11月と今年3月に行なわれた欧州遠征には招集されていない。つまり、比較的重要と見られる試合や合宿にはことごとく呼ばれていないのだ。
「もう、どうしたらいいのかわからないよね……」と、頭を抱えることもあった。
タイプ的な難しさもあったのかもしれない。ハリル時代のシステムでは、1トップは大迫勇也が不動の存在。右の攻撃的MFとして考えてもベテランの本田圭佑、岡崎慎司、若手の久保裕也、浅野拓磨がおり、武藤は視野に入ってこなかったようなところがある。
ただ、それでもドイツで取材をしている者の感覚としては、ブンデスリーガの1部でそれなりの結果を出している選手がなぜ招集されないのか、不思議に思わずにはいられなかった。
2017~18シーズンの武藤は、マインツで自身最多の8得点を挙げる活躍を見せている。しかも、2016~17シーズンもそうだったのだが、チームのブンデス1部残留を決める重要な試合でゴールを決めており、精神的なプレッシャーがかかるなかで仕事のできる選手だということを証明した。
「決めるのは監督だから」と言いながら、W杯ロシア大会を目指してやってきたこの3年間、その目標を見失うことはなかった。どれだけ呼ばれなくても「目標はW杯」と言い続けた。だからこそ、今回は念願かなっての代表招集だった。
「やっぱりつらい思いもしました。そこで耐えて、最後、すべてをぶつけられた(8得点を挙げた)のが、こういう結果につながったと思います。でも、まだ何も成し遂げていないし、メンバーに選ばれてもない。最後まで集中してW杯行きのチケットを獲って、それでも満足しないでW杯で結果を残すことがすべて。大舞台で結果を出したいと思います」
西野朗監督になったことで、チームの変化も感じている。
「前とは違いますよね。すごく楽しんで、かつ真剣に取り組めている。ムダに力も入らないし、集中して高い出力でプレーもできている。そういうのってすごく重要で、合宿は10日間あるから、ずっとピリピリしていても……。試合ですべてを出さないといけないので、だからこそ練習の雰囲気は重要で、いまはいい雰囲気だと思う」
サッカーそのものも変わりそうだ。ミニゲームを行なっても、カウンター的なプレーに終始するのではなく、コーチの「間で受けろ」という指示が聞こえてくる。できるだけコンタクトを避けて、短くてもパスを繋いでいくという意図が感じられる。
「まだ戦術はどうこう言えないけど、フォワードはドリブルよりも、簡単にはたいて、もう一度入っていくほうが得点を意識できるし、フォワードらしい。(守備の負担もあるが)まずはチームのために走らないと。チームのために、自分の力を出し切ってワンチャンスをものにする集中力が大事だと思う」
1トップでも2トップでも、どちらでもいけると思っている。
「メンバー的に見ても、サイドでなくてフォワードなのかなと思っています。フォワードはサイドと違って、得点だけに集中できるポジション。チーム(マインツ)でも1トップをやっていますし。でも、もし2トップならコンビネーション(が重要になる)。トップクラスの相手だと強さもある。2トップには、マークが1人に集中しないという長所もある。どっちでも準備はできています」
まずは23人枠に入るための戦いを勝ち抜くことが、目下の武藤のテーマだ。「楽しみ」というガーナ戦で結果を残す必要があるだろう。