張本智和 Photo:Itaru Chiba


 中国男女優勝で今年も幕を閉じた世界卓球団体戦(4月29日~5月6日/スウェーデン・ハルムスタッド)。日本は女子が銀メダルを獲得。準決勝では、突如実現した南北合同チーム コリアを退け、中国との決勝では伊藤美誠(スターツSC)が劉詩ブンから勝利をあげるなど、目覚ましい活躍を見せた。


 その一方で、男子は準々決勝で韓国に敗れてベスト8。惜しくもメダルは逃したが、初出場の張本智和(JOCエリートアカデミー)の活躍など様々な収穫も得られた。そんな男子チームを中心に、2020年東京五輪に向けた展望も交えつつ、大会を振り返る。


初の世界卓球団体戦で強靱なメンタルを見せた14歳・張本智和

 今大会、日本男子チーム最大の注目ポイントと言えば、張本智和の戦いぶりと言えるだろう。今年1月の全日本選手権の決勝で絶対的王者の水谷隼(木下グループ)を破って最年少優勝を果たした怪物が、初の世界卓球団体戦でどんなプレーを見せるのか。これは2年後の2020年東京五輪に向けて、キーパーソンとなる張本へのテストを兼ねた大会と言っても過言ではなかった。

 大会時の張本の世界ランクは13位(大会後の世界ランクは10位にランクアップしている)ではあるが、その数字から想像する以上に世界の壁は厚い。特に団体戦ともなれば、選手のパフォーマンスの波は激しくなり、勝負の行方がわからないのが常。経験の少ない張本には厳しい結果も予想されたが、元世界ランク1位のサムソノフ(ベラルーシ)、台湾のエース・荘智淵、2月のチームワールドカップでストレート負けを喫している世界ランク7位の日本人キラー・コウ鎮廷(香港)ら、世界の強豪を下したのはさすがと言える。


 今大会は2敗を喫したとはいえ、団体戦には滅法強いのが日本のエース・水谷。その水谷と張本は何が違うのかと言えば、プレースタイル、戦術の幅などがあげられる。水谷はプレーの引き出しが多く、攻めの展開、守りの展開、様々なパターンで攻略法を持つオールラウンダー。相手の得意戦術をつぶすのに長け、「負けない」卓球ができ、それゆえに絶対的な信頼感がある。

 一方で、「超攻撃的」だがリスキーな面があるのが張本。勢いに乗っている時は中国選手を凌ぐほどのプレーを見せるが、弱気の虫が出た時に失速しやすい。負けられないプレッシャーがのしかかる団体戦ならなおさらのことで、今大会でもナーバスになる場面が何度か見られた。苦境を打開していくための戦術の選択肢も多くはないので、勝敗は張本自身の「メンタル頼み」というところがある。

 だからこそ、改めてメンタルの強さ、そして地力が備わってきたことが確認できたという点で、今大会の張本の戦いぶりは大きな収穫と言えるだろう。イングランド戦、韓国戦の敗戦は、本人としては納得のいく結果ではなかったはずだが、この経験が糧になることは間違いない。


まだまだ読めない日本男子、3人目の切符

 初の世界卓球団体戦で実力を示した張本。そしてコンディションが万全ではない中で韓国のエースから勝利をあげるなど今大会もチームを牽引した水谷。現時点の世界ランクを別にするならば、2020年東京五輪に向けた代表権争いでリードしているのは、この2人と言って良いだろう。そして、団体戦3番手に関してはまだまだ読めないのが、今の日本男子チームだ。


 張本、水谷以外の今大会の戦いぶりを見ると、世界ランクでは日本最上位で五輪に最も近いポジションの丹羽孝希(スヴェンソン)は、イングランド戦の3番で格下に敗れ、大一番の韓国戦では起用されず。その韓国戦に出場した松平健太(木下グループ)は3番で若手の張禹珍に敗れ、チャンスを物にできなかった。大島祐哉(木下グループ)はシンガポール戦だけに起用され1勝のみ。3番手に名乗りをあげるには、3選手ともにアピール不足に終わった大会となった。

 順当にいけば、石川佳純(全農)、伊藤美誠、平野美宇(日本生命)という現段階の最強トリオが濃厚なうえ、4番手に早田ひな(日本生命/希望が丘高校)というこれまた逸材が控える女子に比べると、男子の3番手には若干の不安が残る。逆に言えば、多くの選手にチャンスがあるとも言えるので、ここからの1年で大きく飛躍する選手が現れることを期待したい。


地元スウェーデンの活躍に見る、2020東京への期待

 他国に目を向けると、今大会いくつか健闘が光ったチームがあった。近年ジリジリと実力を上げ、今大会でも日本を下した男子の韓国。強豪シンガポールを下しベスト8入りを果たした女子のウクライナは、ここのところ勢いに欠けるヨーロッパ女子卓球界を賑わす新たな風となるだろう。

 そして、大会を大いに盛り上げてくれたのが、地元スウェーデン男子チームだ。決勝トーナメントで大接戦の末に台湾を下すと、日本を破ったイングランドにストレートで勝利し、17年ぶりのメダル獲得を果たした。地元開催の特に団体戦は、観客の応援が未知なるパワーとなって選手を後押しする。改めてチーム戦の面白さ、醍醐味をスウェーデン男子が味わわせてくれた今大会だった。


 ここで話を戻すと、2年後の日本チームの活躍に期待が膨らむわけである。地元の大声援を背に受け躍動する日本の選手たち。「中国を下し、悲願の金!」。こんな見出しが新聞の一面を飾るのも決して夢ではない。中国の背中は確かに見えている。2020年、東京の追い風はどんなドラマを生み出してくれるのだろうか。