これまで世界ランキングでアジア人1位だった錦織圭(日本/日清食品)。錦織が右手首の怪我で故障している間に、その座を奪った選手がいる。それがチョン・ヒョン(韓国)だ。錦織は完全復帰を目指す上で、チョンを乗り越えていく必要がある。今回はそのチョ…

これまで世界ランキングでアジア人1位だった錦織圭(日本/日清食品)。錦織が右手首の怪我で故障している間に、その座を奪った選手がいる。それがチョン・ヒョン(韓国)だ。錦織は完全復帰を目指す上で、チョンを乗り越えていく必要がある。今回はそのチョンを紹介する。

■韓国期待の若手

チョンはまだ21歳ながら、2018年4月23日付けの世界ランキングで19位。身長188cm、体重87kgと錦織よりも体格が大きい。強靭な足腰を土台に驚異的なコートカバーを誇る防御型のグランドストローカーで、チャンスがあればカウンターを打ち返すこともよくある。ジュニア時代には、錦織と同様にフロリダのIMGアカデミーで教育を受けていた。

■錦織が追い詰められた「全仏オープン」3回戦

錦織は現在チョンに対して1勝0敗。2017年の「全仏オープン」3回戦での戦いで、錦織は窮地に立たされることになる。7-5、6-4と順調に2セットを先取したものの、第3セットから流れが変わり始める。6(4)-7とタイブレークで1セットを返されると第4セットは序盤では0-3とされ、錦織は苛立ちを隠せずラケットを地面に叩きつける場面も。ここで雨が強くなり、試合は翌日に持ち越された。

翌日再開された試合では第4セットを0-6で落とすも第5セットを6-4で取り、辛くも勝利。試合後錦織が「雨に助けられた。あのまま続けていたら100%負けていた」と話した通り、スコアでもメンタル面でも窮地に立たされた一戦だった。

■「Next Gen ATP ファイナルズ」で初代王者に輝く

昨年初めて開催された「Next Gen ATP ファイナルズ」。21歳以下の次世代を担う8人によるこの大会で、チョンは初代王者に輝いた。

当時すでに世界ランキング3位だったアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)が不在であり、4ゲーム先取制の5セットマッチなどの試験的なルールではあったが、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)やデニス・シャポバロフ(カナダ)といったチョン同様勢いのある若手たちを軒並み破り、全勝優勝を果たしている。

■ランキングで錦織より上へ

これまで錦織はアジア人として様々な記録を打ち立てており、世界ランキングでもアジア人1位だった。しかし2018年3月19日付けの世界ランキングで錦織が33位、チョンが23位となり、その座を失った。

錦織不在の今年の「全豪オープン」で、チョンはBIG4のノバク・ジョコビッチ(セルビア)をストレートで破り、グランドスラムでは韓国人初となるベスト4へ進出。「全豪オープン」明けの世界ランキングで58位から29位へ上昇すると、好調を維持して錦織を抜いた。

■終わりに

「全仏オープン」での試合の後、錦織がチョンについて「まだまだ強くなる。トップ10にも近づける」とコメントしてから約1年。チョンは、トップ10も現実的になってきた。錦織が次に対戦するときのチョンは、当時より強くなっているだろう。錦織は3月は風邪の影響もあり結果が出なかったものの、4月は「男子テニスATPワールドツアー マスターズ1000 モンテカルロ」で見事準優勝を果たし、完全復活に向けてまた歩みだした。もし今年の「全仏オープン」で錦織とチョンの再戦が実現すれば、昨年よりも高いレベルでのアジア頂点対決が楽しめるだろう。(テニスデイリー編集部)※写真は「全豪オープン」のときのチョン・ヒョン

(Photo by Vince Caligiuri/Getty Images)