J1第10節、首位を走るサンフレッチェ広島が、2位で追走するFC東京に1-3で敗れた。 広島は、10試合目にして今季リーグ戦初黒星。開幕戦から3連勝のあと、1分けを挟んで5連勝と、前節まで8勝1分けの”スーパーロケットスタ…
J1第10節、首位を走るサンフレッチェ広島が、2位で追走するFC東京に1-3で敗れた。
広島は、10試合目にして今季リーグ戦初黒星。開幕戦から3連勝のあと、1分けを挟んで5連勝と、前節まで8勝1分けの”スーパーロケットスタート”を決めたが、ついに連続無敗試合がストップした。
それでも、2位のFC東京との勝ち点差は6。まだ10節しか終わっていないのに、これだけの勝ち点差があるのだから、広島がどれほど驚異的なペースで勝ち点を積み上げてきたかがよくわかる。まるでバルセロナか、マンチェスター・シティ、あるいはバイエルン・ミュンヘンのようである。
第10節のFC東京戦で、今季初の黒星を喫したサンフレッチェ広島
とはいえ、かのヨーロッパの強豪クラブさながら、広島が圧倒的な強さで相手をねじ伏せてきたわけではない。それどころか、常に危うさと背中合わせの戦いぶりは、これほどの好成績が不思議なほどだった。
おそらく、ピッチに立っている選手もそれをよく理解していたはずだ。自分たちの力を過信するどころか、むしろ半信半疑で戦っていたのではないだろうか。
例えば、第8節の湘南ベルマーレ戦。広島は、前半こそ湘南に主導権を握られたものの、次第に試合の流れを引き寄せた。後半早々に先制点、終盤に追加点と、効果的なゴールを要所で決め、終わってみれば2-0の完勝である。
耐えるべきところはしっかりと耐え、試合のペースをつかんだところでチャンスを確実に仕留める。そんなしたたかな戦いぶりは、”見方によっては”盤石の強さと表現してもいいものだった。
しかしながら、どんなに酷い内容でもワンチャンスを生かして勝ってしまえば、「勝負強い大人のサッカー」などと評されてしまうように、試合内容の評価は、得てして結果に左右されがちだ。
キャプテンのMF青山敏弘は湘南戦後、「前半に失点しなかったが、紙一重。やられてもおかしくないシーンがあった」と振り返り、首位独走にも「自分たちは厳しさを持ってやっている。そんな(独走しているような)雰囲気はない」と話していた。
だとしても、これだけ勝利が続けば、手ごたえが少しは大きくなっているのではないか。そう尋ねてみても、青山は「う~ん……」と唸り、「そういう感じはない」。さらに、強い勝ち方にも見えたが、と重ねて尋ねても、「それも結果論なので……」。驚異的な好成績とは裏腹に、試合内容に絶対的な自信を感じている様子はうかがえなかった。
ただ、言い方を変えれば、今季リーグ戦初黒星を喫したと言っても、FC東京戦だけが特別に出来が悪かったわけではない。
MF柏好文が「試合の入りが悪くて、そこでゲームが決まってしまった」と話したように、試合序盤がすべてだった。
広島は試合開始直後の3分に与えたPKで先制を許すと、9分にも自陣からパスをつなごうとしたところでボールを奪われ、あっという間に2点を失った。
両チームが1点ずつを奪い合った後半は、テンポよくボールを前へ運んでいく今季の広島らしい攻撃が見られたものの、結局、序盤に献上した2点が重くのしかかった。GK林卓人が「自分が(2失点目につながったビルドアップの)スタートだったので悔いが残る。0-1で(後半の)攻勢の時間を迎えられれば試合はわからなかったのに……」と、立ち上がりの”自滅”を悔しがった通りだ。
試合の入り方を除けば、よくも悪くも、今までの内容と大きく変わるものではなかった。
だからこそ、「連敗しないことだけをしっかり考えてやりたい。気持ちの修正をして、(敗戦を)引きずらないことが大事」(柏)ということに尽きる。
これまでの試合内容を考えれば、10試合目にしてようやく喫した初黒星も、ついに来るべきときが来たにすぎない。ここまでの間に十分な貯金を蓄えているのだから、重要なことは、ひとつやふたつ負けても慌てないこと。「10試合でひとつしか負けていないのだから、焦る必要はない」(FWパトリック)。怖いのは、この敗戦をきっかけに半信半疑の”疑”ばかりが大きくなってしまうことである。
青山は、「見ている人たちは、ここから広島は落ちていくと思っているだろうが……」と自虐的な言葉をつけ加えて、こう語る。
「ここまでの10試合を自信にすべき。ここからが大事だとみんなわかっている。(初黒星をきっかけに崩れて)ガタガタッといってしまうと、去年(の残留争いで)学んだことが無意味になる」
開幕10試合を8勝1敗1分けは、文句をつけようがない好成績だ。しかし、これを今季の快進撃の序章とするのか、春の椿事(ちんじ)で終わらせるのかは、キャプテンの言うようにこれからの戦い次第である。
長く続いた連勝のストップをきっかけに、一転不振に陥るケースは決して珍しくない。ここまでの試合内容がそれほどよくないとなれば、なおさらだ。率直に言って、スタートダッシュは出来過ぎだった。城福浩監督は言う。
「今季初めての負け。今求められているのは(気持ちの)切り替えだ」
とにもかくにも、すべてはそこにかかっている。