夏の甲子園100回大会を控え、大きな盛り上がりをみせる高校野球。そんな高校野球界では今年も有望な1年生が甲子園を目…

 夏の甲子園100回大会を控え、大きな盛り上がりをみせる高校野球。そんな高校野球界では今年も有望な1年生が甲子園を目指し、全国の強豪校、新鋭校に入学した。そのなかで、中学時代に確かな実績を残した将来性豊かな逸材たちを紹介したい。

 毎年のように有望選手が入学する横浜(神奈川)は、今年も中学球界で名の知られた精鋭たちが名門の扉を叩いた。

 平田徹監督が「英才教育というか、レギュラーと一緒にプレーさせて雰囲気を経験させたい」と話すように、4月8日の春季神奈川大会初戦では7人の1年生がベンチ入りを果たしている。



名門・横浜高校に進学した元ヤクルトの度会博文氏の息子・隆輝(写真中央)

 そのなかでも随一の実績を誇るのが、ヤクルトで活躍した度会(わたらい)博文氏(現・球団職員)を父に持つ、内野手の度会隆輝(りゅうき/佐倉シニア出身)だ。昨年11月に愛媛県の松山坊ちゃんスタジアムで行なわれたU-15アジアチャレンジマッチに出場し、侍ジャパンU-15代表の3番打者として11打数7安打6打点の活躍で優勝に貢献。大会最優秀選手にも選ばれた。

 走攻守三拍子揃い、バットコントロールの巧さは群を抜いていた。両親譲りの明るい性格もウリのひとつで、高校初の公式戦でも臆することなくシートノックから大きな声を出す姿が印象的だ。

 また初戦はベンチを外れたが、世田谷西シニアでエース兼中軸打者だった木下幹也(もとや)も楽しみな存在。184センチ83キロという堂々とした体躯に加え、シニア時代にはチームメイトの誰もが認める野球への真摯な姿勢でチームを引っ張った。昨年夏のシニア日本選手権では度会らを擁する佐倉シニアを破って日本一に輝いている。

 さらに、中学時代に神奈川ナンバーワン左腕との呼び声が高かった松本隆之介(戸塚シニア出身)も入学するなど、多くの逸材が加わった。

 その横浜と長年のライバルである東海大相模も負けていない。佐倉シニアで度会のチームメイトだった諸隈惟大(もろくま・いっと)と西川僚祐(りょうすけ)が入学。

 諸隈は左腕からキレのいいストレート、スライダーを武器に打ち取る総合力の高い投手で、昨年夏のジャイアンツカップでチームを優勝に導いた。打撃センスも抜群で、力強さを身につけたときにどんなプレーをするのか、非常に楽しみな選手だ。

 チームの4番だった西川は185センチの右打者で、神宮球場の右中間、東京ドームのライトポール際に本塁打をぶち込んだ長距離砲。高校でも持ち前の長打力を発揮できるかどうか、これからの成長が期待される。

 ほかに中学球界の名門・武蔵府中シニア出身で、侍ジャパンU-15でも完成度の高いピッチングと力強い打撃を見せた山村崇嘉(たかよし)も入学するなど、横浜に負けずとも劣らない1年生の陣容だ。

 昨年の11月上旬に静岡県・志太スタジアムで軟式球を用いて行なわれたBFA U-15アジア選手権。この大会を全勝で制した軟式の侍ジャパンU-15のメンバーにも好素材の選手が多数いた。

 筆頭は、あの松井秀喜氏と同じ石川・根上(ねあがり)中から星稜に進む186センチの右腕・寺西成騎(なるき)。軟式球で驚異の最速141キロをマークし、スライダーのキレも抜群。アジア選手権では抑えを任され、韓国や台湾打線を完璧に抑えた。同代表で、全国制覇も経験している星稜中の右腕・萩原吟哉と捕手の内山壮真バッテリーとともに甲子園を目指す。

 一方、左腕のエース格だった根本悠楓(はるか/北海道・白翔中出身)は苫小牧中央、中継ぎとしてチームを支えた右腕・清水惇(じゅん/群馬・長野郷中出身)は安中総合と、いずれも甲子園未出場の高校に進学。彼らの投球でチームを全国レベルに引き上げることができるのかに注目したい。

 打者では、打率.588でアジア選手権の首位打者を獲得し、大会MVPに選ばれた功刀史也(くぬぎ・ふみや/山梨・白根巨摩中出身)。進学した山梨学院でも、高い打撃術と俊足を生かした外野守備を発揮できるよう、さらにレベルを上げていきたい。

 アジア選手権での登板機会は多くなかったが、視察に訪れていたMLB球団のスカウトから「球の回転量が多くて、初速と終速が変わらない」と高評価を受けた右腕・山城航太郎(福岡・高宮中出身)は福岡大大濠に進学。

 同校には、硬式の侍ジャパンU-15で臨時コーチを務めていた高橋尚成氏から「球のキレに加えて、安定感もある。杉内俊哉(巨人)のような投手」と評された左腕の深浦幹也(福岡フェニックス出身)、軟式出身で日本代表歴はないが185センチの大型右腕・山下舜平太(しゅんぺいた/福岡・三宅中出身)も入学。将来性の高い投手たちで熾烈なエース争いが繰り広げられそうだ。

 もうひとり、どうしても紹介したいのが捕手の谷川唯人(ゆいと/島根・安来二中出身)。島根県選抜の一員として出場したU-15全国KWB野球秋季大会で見せた、強肩と俊敏な動きは将来性を感じさせた。打力を強化して、進学した立正大淞南を1学年上の兄・愛斗(まなと)とともに甲子園出場に導きたい。

 中学時代の実績や実力がそのまま通用するほど高校野球は甘い世界ではないが、彼らの中からひとりでも多くの球児が、高校野球の新時代をさらに明るく照らす存在になることを願う。