リーガエスパニョーラ第32節、バルセロナはホームで3位バレンシアを2-1で下した。チャンピオンズリーグではローマに敗れたものの、リーガでは新記録となる39試合連続無敗を達成。2位アトレティコ・マドリードに勝ち点11差をつけ、首位を独走…
リーガエスパニョーラ第32節、バルセロナはホームで3位バレンシアを2-1で下した。チャンピオンズリーグではローマに敗れたものの、リーガでは新記録となる39試合連続無敗を達成。2位アトレティコ・マドリードに勝ち点11差をつけ、首位を独走している。
「かつてないほど、メッシをジムで見かけるようになったよ」
リオネル・メッシのチームメイトであるイバン・ラキティッチ(バルセロナ)の言葉である。メッシの30歳という年齢は、トップアスリートにとってひとつのヤマとなる。フィジカルコンディションを維持するのは簡単ではない。厳しく鍛えることで失いかけた肉体の力は戻せるが、いつしか神がかった力は戻ってこなくなる。世界最高の選手であるメッシも、そのタイムリミットは近づいている。
自身もバルセロナでのプレー希望を隠さないユスティン・クライファート(アヤックス)
現場は日々の勝利が主眼になるが、フロントは次の準備に備えなければならない。バルサは「メッシを継ぐ者」を探す必要があるのだ。
「ひとりでも、集団でも、守備陣を切り崩し、決定機を作れる」
バルサの下部組織であるラ・マシアは、そういう選手を追い求め、鍛え上げてきた。メッシはそのフィロソフィーの中で生まれた最高傑作である。今や「メッシ二世」と言われる選手は各カテゴリーにいる。しかしながらそんなラ・マシアでさえ、メッシ以降、現実にはそのような選手を生み出せていない。
一方でバルセロナは過去にも、ミカエル・ラウドルップ、ルイス・フィーゴ、リュドビク・ジュリ、ロナウジーニョ、ネイマールといった外国人選手に頼ってきた。今シーズンも、ウスマン・デンベレ、コウチーニョと、成熟したアタッカーを獲得している。
だが、移籍してきた選手がバルサのカラーに馴染むにはどうしても時間がかかる。リカルド・クアレスマやアレクサンドル・フレブなど、失敗例のほうが多いのが実状だろう。加入した選手の多くが、バルサ特有のオートマチズムに戸惑ってしまうのだ。
そこで、バルサユースとバルサBのテクニカルディレクターを務めるホセ・マリア・バケーロが挑んでいるのは、「20歳前後の若く有望な選手をバルサBに入れて色を染め、トップチームに上げる」という試みだ。
去年の夏には、昨シーズン2部バジャドリードで頭角を現したFWホセ・アルナイス(22歳)を340万ユーロ(約4億5000万円)で獲得。アルナイスはバルサBで活躍を見せ、スペイン国王杯で鮮烈なトップデビューを飾っている。相手を置き去りにする脚力と高い精度のシュートを持つ。現在はケガで戦列を離れているが、期待は高まる。
続いて2018年1月には、ベティスのFWマティアス・ナウエル(21歳)を貸し出しで手に入れている。ナウエルはアルナイスの不在を埋めるようにゴールを連発。アルゼンチン・ロサリオ生まれの左利きのアタッカーだけに、「メッシの再来」の呼び声も高い。ビジャレアル、ベティスでは不遇をかこったが、バルサの水が合っているようだ。
そして、なかでもバケーロがいま「ご執心」と言われるのが、アヤックスのユスティン・クライファート(18歳)だ。
ユスティンは、かつてアヤックス、バルサで活躍したオランダ代表FWパトリック・クライファートの息子。ポジションは華麗なポストワークを武器にした父と違い、アヤックス伝統のウィングプレーヤーだ。
スピードがあるだけでなく、緩急をうまく用い、スキルも優れており、左右どちらからもゴールに迫れる。昨シーズン、頭角を現してヨーロッパリーグ決勝を戦い、今シーズンはすでに主力としてプレー。ゴールも着実に増え、プレーの幅は広がっている。
オランダ、特にアヤックスの選手は、バルサとの親和性が高い。今のバルサの原型を作ったのが、アヤックスの歴史に名を刻むヨハン・クライフだったことが大きいだろう。ポゼッションを重視し、ウィングを好む土壌があるのだ。
97年からバルサを率いてリーグ連覇を達成したオランダ人監督ルイス・ファンハールは、欧州王者アヤックスからデ・ブール兄弟、ヤリ・リトマネンなど主力を根こそぎ奪ったものだ。その後、監督が代わっても、バルサはマルク・オーフェルマルス、エドガー・ダービッツ、ズラタン・イブラヒモビッチなど、アヤックス出身者を次々に獲得している。
チームフィロソフィが似ているだけに、選手は違和感なくプレーできるのだろう。例えばルイス・スアレスが素早くフィットできたのも、アヤックスでのプレー経験がアドバンテージになった。
バケーロは熱心にユスティンの試合を視察しているが、マンチェスター・ユナイテッドなどプレミアリーグの有力クラブも食指を動かしているという。
はたして、メッシを継ぐ者が誰になるのか? それはサッカー界全体の関心とも言えるだろう。