データ班の二人(左・野津風太君、右・高見遥香さん)

 

★甲子園に導いたデータ班の素顔

 21世紀枠で第90回記念選抜高校野球大会の59年ぶりの出場を決めた滋賀県立膳所(ぜぜ)高校で話題となっているのがデータ班の存在だ。データ班として活躍している野津風太君(1年)と高見遥香さん(1年)の二人。石川唯斗主将(2年)も「データなしでは甲子園は決まらなかった」と信頼を寄せている。

 実はこの二人、マネージャーを採用しない上品充朗(うえしな・みつお)監督の方針から外野手として高野連に登録されている。ユニフォームを持っていないため可能性は皆無に等しいが、野津君は公式戦にも出場することができるのだ。

 そんな野津君は入部当初、野球に興味がなかったことで知られている。中学時代は科学部に所属していて、パソコンを扱うことに興味を持ったことからデータ班に加入。これまで野球に触れることのない人生を歩んできたが、「思ったよりも頭を使うスポーツで、要所で戦略が重要になってくるスポーツだと気づきました。以前よりも面白いと思えるようになった」と野球の魅力に少しずつ気づき始めてきたようだ。

 一方の高見さんは広島東洋カープをこよなく愛するカープ女子。2015年にMazda Zoom-Zoom スタジアム広島で黒田博樹さんの投げている姿を見てカープの魅力にハマった。現在の好きな選手は田中広輔で、その理由が「カープの走塁が好きでそれを一番体現している選手だからです」だと言う。
 センバツに向けて現在は出場校の映像を参考にデータ収集に励んでいるが、一つ問題を抱えている。高見さんは書道部と兼部していてパフォーマンス書道の本番が3月に控えているため、センバツに帯同できるか微妙なのだ。「友達とアルプススタンドで応援したい」と話しているが、果たしてその希望は叶うだろうか。

★勝つために選んだデータ野球

 3年前から「個々の能力は劣っているが、チーム力では互角に持って行かないといけない」という理由からセイバーメトリクスを活用した野球を行っていた上品監督。それをさらに発展させる形で今年度からデータ専門の部員を募集した結果、先述の二人が入部した。
 今回のセンバツに選出された意義を聞かれると上品監督は「勝つためのベターな選択肢をチョイスしているだけです。どんなチームでも真剣に考えれば勝っていける方策はどんどん色んな所から出てくるんじゃないかという点には意義を感じています。個々の特性をチームに活かすという考えでやってくれると、すごく可能性が広がってくると思います」と答えてくれた。

 データを活用した野球は県内一の進学校である膳所だからできたという声もあるかもしれない。しかし、その声に対して上品監督は「どの学校でもやれると思うんですよ。他の学校で無理だと言ってしまうと話の発展性がなくなってくるので、膳所だからできるとは言ってほしくないです」ときっぱり否定する。
 データ班の導入を決めたのは純粋に勝ちたいから。試合に勝ちたい、甲子園に行きたいという気持ちは強豪私学も公立進学校も変わらない。だからこそ「方法論の一つとしてデータを取り入れていますが、これから変わってくる可能性はあります。2、3年経ったら『セイバーメトリクスなんて大したことないやんけ』って言っているかもしれません」と上品監督は笑うように、データにこだわるつもりはない。実際に今後は新たな班を作ることも検討している。

 膳所のようにスポーツ推薦で選手を集められない学校でも工夫次第で勝利を掴むことができる。勝利に向けて貪欲に創意工夫を重ねる膳所がセンバツで悲願の甲子園初勝利を目指す。

創意工夫を重ねてデータ野球を武器にした上品監督

 

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文・写真=馬場遼