チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦。パリ・サンジェルマン戦後の記者会見で、レアル・マドリード監督ジ…

 チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦。パリ・サンジェルマン戦後の記者会見で、レアル・マドリード監督ジネディーヌ・ジダンの顔には自然と笑みがこぼれていた。

 すでに国王杯ではレガネスの前に敗退。リーガでも首位バルセロナとは(1試合少ないものの)勝ち点差17の4位と、可能性は残っているとはいえ、2連覇は厳しい状況に追い込まれている。そんなレアル・マドリードにとってCLは今シーズン唯一の残された希望だった。

 だが、対戦相手はネイマール、キリアン・ムバッペ、エディソン・カバーニの3トップでフランスリーグを席巻中のパリSG。CLでもグループリーグで25点を記録するなど、圧倒的な攻撃力を誇る。これにはスペインメディアでさえ、波に乗り切ることのできないレアル・マドリードの劣勢を予想していた。

 3対1。それはレアル・マドリードにとって、第2戦に向けて大きなアドバンテージを手にする結果だ。それだけではない。ジダン率いるチームが、今シーズン失っていたものが、戻ってきた試合だった。



パリSG戦で2ゴールを決め、勝利に貢献したクリスティアーノ・ロナウド

 この日はリーガで決定力不足に悩んでいるクリスティアーノ・ロナウドが、得意とするCLで爆発した。

 その2得点は、PKによる同点弾と、GKが弾いたボールがヒザに当たってゴールラインを越えた勝ち越しの2点目。決して美しいゴールではなかったが、クリスティアーノ・ロナウドはこの1点目でレアル・マドリードでのCL通算100得点を達成。エースがゴールでチームの力となった。

 3点目を決めたのはマルセロ。そのマルセロのコンディションが上がってきたこともチームにとって朗報だ。

 今シーズンのマルセロはここまで、相手チームにカウンターのきっかけを与えるボールロストが多かっただけでなく、攻撃ではクロスをまともに上げることさえできずにいた。だが、この日は左サイドを駆け上がり多くのチャンスを演出。中でも29分にクリスティアーノ・ロナウドへ送ったピッチを横断するパスは圧巻だった。

 また、手腕を疑問視されていたジダンの采配も的中した。先発メンバーには中盤の強化のためガレス・ベイルを外してイスコを入れた。また、後半の選手交代では、守備の要であるカゼミーロを下げ、ルーカス・バスケス、マルコ・アセンシオを投入。攻撃的なカードの切り方もこの試合では効果をあげていた。

 そして、途中出場のアセンシオが2アシストと結果を残した。次代のレアル・マドリードを牽引すると言われているスペイン代表のMFだが、クラブではこれまで”プランB”の位置づけだった。

 昨シーズン、レアルにはアルバロ・モラタ(現チェルシー)やハメス・ロドリゲス(現バイエルン)といった主力を脅(おびや)かすだけの力を持つサブメンバーがおり、「AチームもBチームもない」と、賞賛とやっかみの声が飛んでいた。だが今シーズン、その選手たちはチームを去り、代わりの即戦力が補強されることはなかった。

 レアル・マドリードはむしろこのところ、将来性を考えてスペインの若手の獲得に熱心だった。アセンシオもそのひとりだ。だが、国王杯でつまずいたことから、「Bチームは機能しない」と、選手層の薄さが批判されるようになっていた。

 そんな批判を吹き飛ばすように、アセンシオはわずか11分の出場で2アシストを決めてチームを勝利へと導き、力のある選手がベンチにいることを証明してみせたのだ。

 パリSGに勝利したことで、何よりもチームに笑顔が戻ってきた。ミックスゾーンに向かうOBのロベルト・カルロスまでもが笑顔を見せて、警備員たちの記念撮影の求めにも快く応じていた。

 ジダンも笑顔だった。ここ最近の記者会見で見せていた、取り繕ったような笑顔ではなく、心からの笑顔がこの日はあった。この試合がまだホームアンドアウェーの第1戦にすぎないことを十分に承知していながらも、何度となく「今日の試合に満足している」とフランス人監督は顔をほころばせた。

「このチームに疑いを抱くことは、自分たち記者の過ちなのか?」

 記者会見の最後に、地元記者からジダンに向けて、そんな反省とも賞賛ともとれる質問が飛んだ。

 この試合に関していえば、レアル・マドリードに疑いを抱くことは過ちだろう。だが、今シーズンのレアルが疑いを抱かれてもおかしくない結果を残してきたのは確かだ。だからこそ、人々の疑いを晴らすような偉大なチームであることを証明しなければならない。

 それは唯一残されたチャンピオンズリーグで、王者にふさわしい戦いを見せていくことにほかならない。